肝心のコックピットクルーが死亡してしまって
いるので真相の解明にはまだ時間がかかる
だろうが、台湾当局の迅速な情報公開で
いくつかの背景が明らかになってきている。
・故障したエンジンは第2エンジン
・正常な第1エンジンを停止した可能性
・異常報告を、懲罰が怖くて無視した整備員
・当該機が去年の8月から少なくとも2回
第1エンジンを交換する不調を起こしていた
これらの情報を元に推測すると、離陸直後に
起きたと思われる第2エンジンのトラブルは、
地上で成されるべき整備を忌避したための
人災である可能性がある。

しかし、その後の操作でパイロットのミスが
介在した可能性も否定できない。上の図は、
当該事故機のデジタル・フライト・データ・
レコーダーの解析図で、離陸直後に第2
エンジン(濃紺の点線)の警報が発動している
ことが記録されている。
これに対して乗員の取ったと思われる
対応が、第1エンジンの停止措置であった
(緑の実線)。最初の警報が発動してから
約1分後、第1エンジンの燃料供給が止まり、
プロペラのピッチが90度、すなわちフェザーの
状態になっている。
プロペラ機がエンジン故障を起こした際、
羽根の角度が飛行状態のままだと出力を
発していないエンジンに対して風車のように
回転してしまい、巨大な抵抗を生み出す
ばかりか、痛めたエンジンを余計に悪化
させかねない。そこでプロペラのピッチを
回転面に対して直角まで上げてしまい、
風に対して平行な位置に入れることによって
抵抗を最小限にする措置を取る。これを
「フェザー」状態という。
上の写真をご覧いただくと、第1エンジンが
完全にフェザーに入り、回転がほぼ停止
しているのがお分かりいただけると思う。
このことから、何らかの事情で乗員が
正常なほうの第1エンジンを切ってしまった
可能性が高くなっているのだが、では何故
第1エンジンを切ってしまったのだろうか?
昨日の記事のように、双発機の故障では、
「idle foot idle engine」が初期対応の鉄則で
ある。突っ張っているほうの第1エンジンを
切ってしまう理由がほかにあったのだろうか?
(私は大型ターボプロップ機を飛ばした
経験がないので、もしかするとこういった
片肺飛行状態になった時に自動的に偏向を
制御してくれる機構がついていたのかも
しれない)
そこに出てくるのが、当該機の「過去の
故障歴」である。新品のフェリーフライトの
時点で既にエンジン交換のトラブルを抱えて
いたこの機体、機長の頭の中には(何か
あったら第1エンジン)という思い込みが
あったのかもしれない。
今日は「ミス」から第1エンジンを切って
しまった可能性を考察してみた。次回は
「意図的に」第1エンジンを停止した可能性に
ついても考えてみたい。