ピーチアビエイション インシデント雑感 | PTD ~ Pilot To Dispatch ~

PTD ~ Pilot To Dispatch ~

ヒコーキオヤジのひとりごと
 空の話、ときどきタイのネタ…

 すいません、ちょっと長いです。

 昨日の午後にはこの一件は耳に
入っていたのだが、その時点では
ウインドシアやダウンバーストのような、
突風系の乱流に巻き込まれたのでは
ないかと思っていた。
 
 というのも、昨日の沖縄は荒れていて、
米空軍の嘉手納基地でも90度の
真横から25ノットもの横風が吹いて、
着陸できずに他の基地へダイバートした
機体があったぐらいだったからだ。
 
 那覇空港に北側から進入する場合
(あるいは北側に向けて離陸する場合)、
飛行経路が嘉手納基地の進入経路と
重なるため、民間機は嘉手納のコースの
下をくぐる低空飛行を強いられる。その
高度が1,000フィート(約300m)だから、
最低で250フィート(約75m)は、相当低く
降りたことになる。機長は、この降下
開始点を間違えたのか?
 
 那覇の進入コース
 
 管制官の誘導による「PAR」と呼ばれる
精測進入だったのか、「ヴィジュアル・
アップローチ」と呼ばれる目視による
進入だったのかはわからないが、
管制官から指示があった場合には
高度を復唱することになっているから、
その時点で間違いに気づくことが大半
である。さらに、自動操縦の高度つまみで
高度を設定すればそれ以下には高度は
下がらないはずなので、機長は手動で
操縦していたか、もし自動操縦だったら
インプット操作も間違えたことになる。
 
 そもそも、何のための副操縦士だ?
最近のコックピットは機長Vs副操縦士と
いう格付けではなく、「PF (Pilot Flying)」と
「PM (Pilot Monitoring)」という考え方で、
操縦を担当していない操縦士は相手の
行動をモニターし、チェックリストなどを
行いながら適切な運航に対して助言を
与えるという運用になってきている。
滑走路の遥か彼方から異常に低い
高度まで降下を始めた機体に、副操縦士は
何の疑問も抱かなかったのだろうか?
 
 事故というものは、このように幾重にも
張られた防御線が突破されたときに
起こる。今回は3つのバリアが破られたと
(勘違い・自動操縦・副操縦士)思われ、
最後の砦の対地接近警報装置の作動で
事なきを得た。安全に対する何重もの
バリアが作動して事故を防げたと思えば
それはそれで航空機の安全を証明する
ことにもなろうが、私の拙い推測通り
だったとしたら、いかんせんそこまでの
防御線の突破のされ方が情けない。
 
 私の一番の懸念は、コックピットの
中で十分なコミュニケーションが取れて
いたのだろうかということ。機長が
アルゼンチン人という。英語圏以外の
人間と、もし日本人の副操縦士が乗務
していたのなら、コックピットで十分な
意思疎通は出来ていたのだろうか?
 
 格安航空の普及はいい。しかし、
整備に手を抜いたり、安い給料で外国人
機長を引っ張ってきても、墜ちたらそれで
会社は終わりだ。安全を削って安く飛ばす
航空会社にだけはなってほしくないと思う。