アンドロイドに恋して- HatsuneMiku "MikuFes09" | Fairy Sounds

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  あのVOCALOID2「 初音ミク 」ですが、発売後2年以上経過しているのに、最近でも、更なる社会現象として拡大を続けているようです。
  先頃、歌声データベースの拡張版も発表されて、ますます強化されていく、ミクの世界…。
  その未来を展望するかのような、開発者のインタビュー記事が掲載されました。

  「VOCALOIDは人間の代用以上を目指す」 開発者語る (ITmedia)

  これによると、開発者はVOCALOIDを、歌声・音声の単なる代用物ではなく、あたかも仮想的に実在感のある、アイドル・キャラクターのようなものとすることを、目指しているのが分ります。
  ここで述べられている、例えばライブ・コンサートについてですが、これは少なくともリアルタイム処理でないことを除けば、部分的にはすでに実現されています。

  今回は実際に行われた、そのようなコンサート映像をご覧いただきましょう。3D映像により、視覚的に実体化された初音ミクのシーケンスに同期して、人間のバンドがそれに合わせる形で伴奏しています。
  いつか観た Perfumeのコンサート映像 と、同様の熱狂が感じられますね。

  このようなものを見せられると、昨年、老舗のV社が音楽事業をゲームメーカーに売却することを、真剣に検討していた事実があったことに、納得させられるものがあると思います。

HatsuneMiku " MikuFes09 " (2009)
 Hatsune Miku's 2nd Anniversary Live.




  さて、私個人としては、初音ミクは良くできていると思います。
  昨今のヴォーカル・エフェクトによる加工が施された歌声であれば、かなり似ていると感じます。
  しかしすこし聴いてみると、やはり人間であればこういう音程感覚では表現しない、と思える部分が結構あって、なかなか音楽的に感動できるところまでは行きません。
  それは私自身、幼い時からこれまでに、歌手が素晴らしい肉声で歌っているものを、これまでにたくさん聞いているという、音楽経験があるためなのでしょう。

  こうした歌声を含めた音声合成の未来についてですが、近い将来には社会的要請によって、介護や育児の分野にロボットが導入されるようになる、と私は考えています。そこでは、この歌声音声合成技術が必ず応用されるはずです。
  結果として、これから育つ世代は、誕生してから思春期に至るまで、ミクのような合成された歌声やゲーム音楽に親しんで成長するようになります。
  そこまでいかなくても、現在子育て中の方に、子守唄代わりとして常時、テレビをつけておく人がいるそうですが、そのような子供たちは、テクノロジー加工された商業音楽の歌声を、自身の音楽経験として無意識に重ねているともいえるでしょう。

  やがて、これから15年ほど経過すると、人間の生の歌声より、歌声合成に親和性を持つ世代が大量生産されるだろうというのが、私の抱いている暗い側の、近未来の姿です。
  極端に考えるなら、現在の中堅世代と、この新・新人類の間には音楽経験の断絶が生じるかもしれません。ちょうど現在の私が、演歌・歌謡曲世代に断絶のようなものを感じているのと同様に…。

  もちろん、そのような子供たちも成人して、いつかは音楽表現が本来、その背後にある深い、人の心の在り方にもとづいて行われていることに気づくときがくるでしょう。
  しかし機械で合成されたものに、もともと心は存在しません。そのとき彼らは、空虚な心的空間の中に、いったい何を見るのでしょうね…。
  さらに、そうした時期になるまでには、商業分野に、はたしてどれくらいの人間が、歌手として生き残れるのでしょうか。

  歌声合成技術の開発者は優秀な方たちだと思いますが、芸術表現としての音楽を深く理解していないことは、先の記事を読んでいても、明らかなように思います。
  しかし彼らは有能なので、今度は脳科学の応援を受けて、脳内の心的プロセスと歌声合成技術を、直接接続することを考えるようになるかもしれませんが…。
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  さて、そのようなことを考えていると、あの中島美嘉さんの「Always」を、同じVOCALOID2の「鏡音リン」でプログラムした作品が発表されましたので、合わせてご紹介しましょう。

  鏡音リンは、初音ミクの次に制作されたVOCALOIDですが、ミクに比べるとやや音声合成の欠点が目立つので、より自然な作品作りは、少し難しくなっています。
  しかもバラードなので、一般的にアップテンポの曲よりも、丁寧に仕上げる必要があります。
  それらをあわせ考えると、なかなかよくできた作品であるとは言えると思います。

  しかしさすがに、私はこれを聴いて、感動して泣くことは出来ません。皆さんはいかがでしょう。
  歌手の方なら、もちろん一笑に付してしまうかもしれませんが、中学生以下の子供ならどうでしょうか。
  小学生以下では、これほど上手に歌える子供はいないし、彼らの世代であれば、鏡音リンと 中島美嘉さんのヴァージョン のどちらの歌を、より好ましいものとして選ぶでしょうか。

  しかも、単なる猫には限らず、自由に仮想キャラクターを3Dデザインして、同時提供が可能なのです。
  人間であれば、年とともに成長・変化していき、歌手の世代交代が自然に進みますが、機械に構成されたキャラクターは永遠の変わらない命を与えられています。
  あなたがもし商業分野の歌手だとしたら、これからはこのような存在以上の、経済的評価を得られるだけの品質を提供できなければならないのです。

  私がこうした音楽のテクノジー分野の状況に、暗い未来を思い描いている気持ちが、少しは理解していただけたでしょうか。
  とりあえず現在の結論としては、人間がその生を賭している音楽芸術分野のパフォーマンスに対して、いたずらに、こうした代替テクノロジー技術に置き換えてみるというような、人の尊厳をないがしろにする不遜な試みが行われないことを、強く希望したいと思います。

鏡音リン(VOCALOID) 「 Always 」 (2010)
 (作詞・作曲:百田留衣/編曲:rumta821)


(2010-03-13 14:12:28)