荷物を引き取りに行く当日。


私は死んだ魚の目をしながら兄と、以前夫と住んでいたアパートへ向かいました。4、5時間はかかる道中、時間が長く感じ、戦場に近づくにつれて動悸と息苦しさとめまいがしました。


メンタル崩壊寸前の私。

まもなく到着するという時、

兄は口数少ないながら、


「猛子、いよいよ行くか。1人じゃないんだから。何も悪い事してないんだから。淡々と作業して帰ろう。」


もう涙腺が崩壊しました。

そうだ、私は何も悪い事してない!悪者にされているけど悪い事なんてしてないのだ!


自分を奮い立たせました。


そして玄関前でチャイムを鳴らし、夫が出てきました。


睨みつけるような無表情で、まるで殺人鬼のような顔をして出てきました。


「あ、どうぞ。」


遠くから来た久しぶりに会う私の兄に労う言葉をかけるでもなく。


部屋に通された先に、夫の弁護士が立っていました。弁護士さんも夫に頼まれてお金を払われているとはいえ、休日に汚れ仕事をさせられるなんてかわいそうだなと敵ながら思ってしまいました。


夫は無言の圧力で突っ立ているだけ。


みかねた弁護士さんが、

「あ、どうぞ。お部屋を確認してください。」


と声をかけてくれた。


夫よ、結婚前はあんなに私の家族に良い人ぶって多弁だったのに、声の出し方忘れたんか!


私と兄が作業する間、後ろ1メートルのところに仁王立ちで睨みつけている夫。


まるで受刑者が作業するのを看守が見張っているかのようだ。


お互い無言で異様な空気が流れた。


年賀状を回収する途中、衝撃的なものが目に入った。おそらく、サイコ夫が1人で作ったであろう今年の年賀状が出てきた。

もう1年半以上会っていない子供の1年半前の写真をデカデカと使って、年賀状を作成していた。しかも連名で。2歳になりました。とか書いてあるけど、その写真はどうみても2歳の子供ではなく赤ちゃんの写真…


この年賀状を見た人は違和感を感じないのだろうか。


まだ離婚してないから連名で送るのは仕方ないとしても、もうずっと会ってない子供の写真を使って年賀状をばら撒いているとは…さすがである。


体裁を保ちたいのであろう。


その後も看守の見張りは続き、張り詰めた冷たい空気に、私は耐えられなくなり、涙が抑えられなかった。兄が黙って背中をさすってくれた。涙を拭き、パッと夫を見ると、何も変わらず殺人鬼の目つきをして私を睨みつけている。

まるで、泣いてないで早く片付けろとでも言いたげに。


この人に人間の心はあるのだろうか。

私が結婚して毎日暮らしていた人はこんな恐ろしい人間だったのだ。


結婚生活で感じた夫の優しさは全てパフォーマンスだったことに気付いた。


自分にとってメリットのある人間には優しい人柄を演じ、デメリットしかなくなった人間にはもう用はない。


この人は心から感謝や懺悔をしたことがあるのだろうか。



私と兄が思い荷物を持っていても、指一本触れず手伝おうともしない。


みかねた弁護士が、

「重いですよね?下まで運びましょうか?」と手伝ってくれた。


その時も夫は無言を貫いていた。


ようやく片付け終わった部屋。

家族で住んでいた頃より物がなくなって冷たく感じた。手入れをされなくなった観葉植物は伸び放題で異様な感じになっている。


洗面所を確認した時に、おしゃれなバスソルトが置かれていた。

絶対に夫はそんな無駄なものは買わないはずだ。そもそも湯船に入らない人なのに。

女の影を感じた瞬間だった。

柔軟剤も外国製のきつい匂いのものに変わっていた。


そこで私が感じたことは…








きっしょっっ!

ゲローゲローゲローゲローゲローゲローゲローゲローゲローゲローゲローゲローゲロー


という感情のみでした。

感情を揺さぶられることもなく、悲しくなるもなく、ただただ気持ち悪いなと思っただけでした。


夫への気持ちは無くなったことをバスソルトとどぎつい柔軟剤で再確認しました。



片付けが終わり、玄関の外に出ると、周りに住んでいるのは小さい子を持つファミリーばかり。チビ猛子と同じくらいの子達がお散歩をしたり。


これを毎日見ていてサイコはどう思っているのだろう。そう思ったが、次の瞬間どうでも良くなった。


きっとこの先サイコは、反省することもなければ、私たちと過ごした日々を懐かしくいい思い出に変えていくこともしないだろう。


朝起きたら体重が20キロ増えてればいいのに。パンツだけで出勤して辱めにあえばいいのに。仕事中う○こ漏らしてくすくす周りに笑われればいいのに…ニヒヒ


性格が悪いなー私。


ひとまず、私の大切な物たちを回収できて一安心でした。