小学1年生の時、クラスのお楽しみ会で手品を披露したことがある。金属の輪に、もう一つの金属の輪を通すという簡単な手品である。片一方の輪は、一ヶ所だけ途切れた部分があり、そこが見えないように手で隠し、あたかも金属の輪を通り抜けたかのように見せる手品だった。
やって見せると、同級生たちは金属の輪よりも目を丸くして僕を見つめた。「すごーい!」「どうやってやったのー!!」と皆に褒められ有頂天になった。
「もう一回やって!!」というアンコールに、調子に乗って応えることになった。これがいけなかった。
手を滑らせ輪が教室の床に落ちた。それも運悪く、切れ目のある方の輪が…。
無情にも、教室を転がる手品のタネをみた同級生たちは、口々に「なんだー」「こんなの誰でもできるよー」「いんちきだー」と言う。
子どもとは時に残酷な生き物である。先程までの羨望の眼差しはどこ吹く風、冷ややかな眼差しを僕に浴びせた。
いたたまれなくなった僕は涙をこらえるだけで精一杯だったに違いない。
そんな中、I君が「タネがあったとしても、上手くやるのは難しいよ。やっぱり今の手品はすごかったよ。俺、もう一回見たいな。」と言った。
I君の言葉を聞いた同級生たちは、一転して、確かにそうかも知れないという雰囲気になり、「もう一回やって」とせがんできた。3回目の挑戦を無事にやり遂げた僕は、拍手喝采の中、出番を終えた。
I君の一言に僕は救われた。
今日は、そんなI君の誕生日。高校卒業以来、彼には会っていない。今はどこで何をしてるのか全く知らないが、彼の誕生日だけは毎年忘れたことはない。この日が来ると、あのお楽しみ会を思い出し、I君の勇気と優しさに感謝せずにはいられない。I君ありがとう。そして、誕生日おめでとう。