これは当農園の大きなテーマの一つです。
私自身野菜は苦手でした。食卓に出される野菜を食べても美味しいと感じたことはあまりありませんでした。
何を食べても野菜の味はせず、香りも無く、いつまでも口の中に残る筋の食感は最悪でした。
健康のためと自らに言い聞かせて半ば義務的に食べていたに過ぎませんでした。
読者の中にも共感していただける方は多いと思います。
農園を開く前、銀行員時代、45歳でしたが、50坪ほどの農地を借り先ずは有機栽培に取り組んでみました。
ところが、様々な有機肥料を施ればやるほど、野菜は味香りを無くしていきました。
まだ小学生の頃、スイカが好きで畑に出て野菜作りを手伝っておりましたが、畑でもいだトマトや胡瓜の鼻に
抜けるような甘い味香りやカリッとした食感が私の野菜の美味しさの原点でした。
江戸時代の農業本や野菜の生理・微生物などの本を読み漁り、思い切って有機肥料(畜糞・米糠・油粕等)
栽培を止め、林から葉っぱや腐葉土を集め、草を刈り、草木堆肥を使った土作りからやり直しました。
3年ほど経った頃から、野菜に甘くて味香りや歯切れの良いむかし懐かしい味が蘇ってきました。
人参葉は軸だけ外して、他の野菜達と掻揚にします。スーパーなどでは流通の都合で葉っぱは付いていません。
この葉もビタミン類が多く貴重な葉物野菜です。
(美味しさの定義とは?)
美味しいということは多分に観念的・感覚的なことであり、育った環境によって異なるとは思われますが、
どうやら「この野菜は有機野菜だから美味しいのだ」「最高のプロが作った高級料理だから美味しいのだ」と
脳の先入観念に左右され食べている方も実際には多いようです。
一般(流通)マーケットでは、味香りや美味しさは評価の対象にはならず、見え形・規格サイズ・新鮮さなどが
評価のすべてと言っても過言ではありませんし、虫食いの痕などあろうものならだれも手を出しません。
野菜ソムリエなどが形の悪い野菜、例えば曲がった胡瓜や先が細い胡瓜などは選ばないようにと伝えておりますが、野菜の美味しさや健全性などには一切関わりはありません。私などはむしろまっすぐな胡瓜のほうがよほど
危なく美味しくないのにと思ってしまいます。胡瓜は太陽に当たると当然に曲がり、むしろそれが自然なのです。
野菜ソムリエの言う品質の良い野菜とは流通側の価値観なのです。
美味しく栄養価に富んだ健全な野菜を追求し続けている自然栽培の生産者側の考えとは真逆ですね。
コールラビ(蕪キャベツ);キャベツの芯だと思って調理してください。欧州では一般的な野菜です。
薄く皮は剥ぎ、1センチ弱の厚さに短冊切りにし、炒め物・スープ・パスタなどに便利です。
加熱時間は短めに!あまり熱を加え過ぎないようにするには丸ごと一旦レンチンしてからの調理を
お勧めします。
野菜には「基本味」である5味があり、甘味・酸味・塩味・苦味・旨味と言われております。
美味しさとは味香り・甘さ・食感(歯切れ)・旨味の四つの要素に細分化されます。
味香りは野菜の持つ個性です。その個性は実は害虫から自分を守る自己防衛から生まれたものです。
甘さは野菜の中に蓄積されたデンプンや炭水化物が糖分やビタミンに変換されたものです。
歯切れの良い食感は低窒素栽培によってゆっくりと成長し肉厚で筋の少ない野菜ができたからです。
肥料栽培で急成長させた野菜は倒れまいとしっかりと筋を張り繊維が強く出てきます。
旨味は細胞を再生し続ける上で最も必要な元素であるバランスの良いミネラル分から生まれている。
ここで読者の方から「旨味はグルタミンなどのアミノ酸ではないか?」と反論が来そうですね。
それでは料理の得意な方のご意見から旨味を考えてみましょう。
料理の世界では、旨味をどの食材で、どうした調理料を加えていくのかが常に問われます。
一番知られている旨味はたんぱく質の中に含まれるアミノ酸の一種であるグルタミン酸です。トマトやセロリなどの野菜や昆布などに含まれております。他には魚介類のイノシン酸やキノコ類のグアニル酸が知られております。
西欧では旨味を野菜・トマトやチーズ・ハム類から取り、日本では昆布や鰹節などから取っております。
野菜からグルタミンなどの旨味が出ます。塩コショウと出汁を加えるとよろしいでしょう。
この旨味と対照的な「えぐみ」・「苦み」が料理を台無しにし、「灰汁取りをしなさい」と言われます。
窒素過多となりやすい肥料栽培では野菜の「えぐみ」や「苦味」が出易くなるのです。
それは肥料栽培を基本とした近代農業になってから顕著に言われるようになったのではないかと考えております。人間の舌の先では甘味や塩味を感じ取り、舌の付け根辺りで苦味やえぐみを強く感じます。
自然栽培の野菜では苦みやえぐみではなく旨味を感じるのです。
つまり、私は絶え間ない土作りを行う自然栽培の野菜を食べてえぐみを感じず様々な複雑な雑味=旨味を感じるのは、グルタミン酸だけでは説明できず、ミネラル分が多い野菜だからではないかと考えるようになりました。精製塩(純粋な塩化ナトリューム)と岩塩(ミネラル分を含有している)の味の違いに似ております。



