脚本におけるPDCA | 交心空間

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◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇

 企業の事業評価では「計画(Plan)→実施(Do)→検証(Check)→改善(Action)」
をサイクル的に行い、次の計画や事業に生かす『PDCA』の考え方がありますが、ドラ
マの創作過程でもこれを実践してこそ、より早い上達法になります。計画と実施が『構成
(含む検討)と脚本執筆』に相当します。検証となる『チェック』は「構成 → チェック
 → 構成改善 → 脚本執筆 → チェック → 脚本改善」となるように、構成と執筆それぞ
れの段階で行う『PCA・DCA』の考え方が望ましいものです。


 主なチェック項目をあげましょう。
  (1)テーマを含め、ドラマの概略を把握しているか。
  (2)テーマに沿ったエピソードで組み立てられているか。
  (3)テーマにまつわる伏線が構築されているか。
  (4)クライマックスへの助走路は惹き付け要素があるか。
  (5)クライマックスは物足りているか。
  (6)テーマを理解してもらえる作品か。
  (7)人物、背景、エピソードは魅力的か。
  (8)不要なシーン、追加すべきシーンはないか。
  (9)台詞は行き届いているか。


 ドラマの概略は「○○な人が◇◇で△△するうちに☆☆となっていく姿を描く」といっ
たように、文章形式に書き出すことで、より明確に捉えられます。「○○な人」は、人物
の個性や境遇に当たり、「◇◇で」は背景(状況)になります。「△△するうちに」がエ
ピソードやストーリーで、「☆☆となっていく」がテーマにつながるものです。


 把握したテーマと実際の構成内容が違うものは、脚本を書き上げてもどこかしっくりし
ないものです。ひとつひとつのエピソードが、まとめた概略のどれに相当するか確認しま
す。チェックしたとき概略のどれにも該当しないなら、そのエピソードは不要です。


 ドラマが展開してクライマックスやラストで、「テーマ」をそのまま台詞でしゃべらせ
たり、突然引っ張りだされるのも、ドラマの雰囲気が一転してしまい味気ないものです。
助走もつけずハードルを跳び越すのと同じです。ドラマはテーマを語るために展開してい
るのですから、当然その過程でテーマを匂わせる必要があります。伏線で構築しておいて、
クライマックスに向かうためのシーンも十分に見せます。ドラマに『タメはあるか』『タ
メたものは発散できたか』をチェックしてください。


 いくらテーマがあっても、それが『共感を呼ぶ』ものでないと、そのドラマは失敗です。
何が共感を呼ぶかは、時代や世相の中で自分の主張がどれだけ受け入れられるかになりま
す。発信者として『主張の観点』を磨くことに努めてください。


 何本か作品を書いているのに、毎回同じような個性や境遇の「人物」、似たような「背
景」、以前にも見た「エピソード」を使い回して(組み替えて)いるのでは、結局『この
作者が描くドラマは本質的に同じ』になります。「十人十色」というように、百本のドラ
マを書くのなら「百人の人物像」に出逢いたいものです。


 シーンや台詞の『要否』を判定してください。これを行うひとつの目安として、そのシ
ーンや台詞を「削除」してみます。そのうえで、辻褄が合わないなら「必要」と言え、ド
ラマが展開するなら「不要」と言えます。人の作品を読むときはよく見えているのに、自
分の作品になると全く見えないようでは、チェックの意味がありません。『作者の目』だ
けではなく『登場人物の目』『視聴者の目』『審査員の目』も持ち備えてください。



 作品創作で「様々な観点」を持って欲しいと述べたように、作品チェックでも「様々な
観点」を持つことが、秀作に近づく道です。そして脚本成立は当然とし、『ドラマの魅力
を追求する高い意識』を維持してこそ、脚本家への道につながると考えてください。