シーンの入口と出口 | 交心空間

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◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇

 ドラマがひとつひとつのシーンの連なりからできているのはいうまでもない
でしょう。そして、どのシーンにも「入口と出口」があります。人物のどんな
心境や周囲のどんな状況でエピソードが発生し、どう感じどう対処し、どこに
着地してそのシーンを終えるかです。さらには次の、あるいは後続でそのエピ
ソードを受けて発生するエピソード(シーン)のために「何を構築しておくか」
が大事です。また、当然これらの構築が、あとのシーンの入口で必要とされる
心境や状況になるのも心得ておくことです。


 シーンの中でエピソードを展開させるときの注意点を紹介しましょう。


これだけは書く(シーンの目的を把握する)
 まず第一に、そのシーンで伝えるべく内容を把握します。「誰の」「何を」
 伝えるかです。簡潔であるにこしたことはありませんが、伝えたい内容が多
 くなる場合は「何からどう伝えるか」といったシーン内の構成を整理すると
 いいでしょう。


これで十分(これ以上は不要)
 ひとつのシーンの書きすぎに気をつけましょう。書きすぎの原因となるのが、
 ト書きや台詞の長さにあります。「いかに簡潔に書くか」を心がけるべきで
 す。特に台詞は勢いに任せて書いているとどんどん長くなります。ひとつの
 台詞を書くたびに、不要(ムダ)な語句を排除、修正(もっと簡潔に)する
 よう心がけることです。
 私は、ひとつの台詞を短くし(20字~50字)人物のやりとりを優先させます。
 長くても 100字程度で、極力長台詞を続けないようにしています。また、ひ
 とつのシーンにしても1200字位内を目安にしています。それ以上になるとき
 は、シーン内でも動きや心境に変化が見られるようメリハリを持たすことに
 しています。
 映像系のドラマであれば、台詞に代えて人物の動作や表情で伝えるのも有効
 です。たとえば、挫折して落ち込んだ人物に、百の優しい言葉をかけるより、
 ひとつの印象深い台詞と熱い抱擁のほうがドラマチックに表現できるという
 わけです。


ここまで書いておく(残りはあとで)
 入口は前の流れ(展開)を受けているので、割とスムーズに書き始められる
 でしょう。逆に問題なのは出口です。シーンの着地点として「すぐあとのシ
 ーンに続くのか」「いくつか先のシーンに続くのか」「その事柄はこのシー
 ンで結末なのか」によって、“どういった形でシーンを終えるか”決める必
 要があります。つまり事柄が後続のシーンに繋がるなら“誰のどんな心境や
 行動で終えるか”“何を投げかけて終えるか”で、視聴者がドラマを観続け
 るよう駆使するのです。



 ト書きと台詞の連なりがひとつのシーンを形成するように、数々のシーンの
出来映えがドラマ自体の善し悪し、おもしろ味を決めます。つまり「ドラマを
考える」とは、フルコースのディナーでどの順にどんな料理を味わってもらう
かのように、「どの順にどんなシーンを見せるか」によります。
 どのシーンとも関係なく、それだけが単独で存在するシーンはあってはなら
ないのです。そんなシーンは即カットの対象といえます。
 これらの点を念頭におき、それぞれのシーンがドラマ全体にとって有効かつ
不可欠となるよう……知恵を絞りましょう!