❷①白露は?
白露の頃は,だんだんと秋の気配が深まっていく頃で,白露の訪れを感じさせてくれる植物を紹介させていただきます。
■「秋桜(コスモス)」…キク科の一年草で,開花時期は6月~11月。主に9~10月に見頃を迎えます。
秋になると,各地のコスモス畑が花盛りを迎え,薄いピンク・濃いピンク・白色・濃赤色・黄色・オレンジ色等のカラフルな花が見る人を楽しませてくれます。
「秋の桜」と書くコスモスは,花弁が桜に似ていることから名付けられました。
原産地はメキシコで,日本に入ってきたのは,比較的最近の幕末から明治初期のことですが,短期間で日本人の心をとらえてきました。

■「芙蓉(ふよう)」…8~10月にかけて,大輪の大きな花を咲かせるアオイ科の落葉低木です。
伊豆半島や紀伊半島などの山野に芙蓉が咲いていることがありますが,いずれも原産地:中国から伝わった花が野生化したものと考えられています。
室町時代には観賞用の庭木として栽培されてきた記録が残されています。
花の美しさから、美人を「芙蓉の顔(かんばせ)」と例えることもあるほどでした。

■「彼岸花(ヒガンバナ)」…開花時期:9月に田畑の畦道で咲く赤い花が一際目を引くヒガンバナ科の多年草。
彼岸花は根っこに毒があるため,モグラやねずみ,虫よけのために,田畑の畦道や墓地に多く植えられてきました。
有史以前に原産地の中国から渡来し,日本に根付いた帰化植物です。」
仏教で天上に咲くという伝説の花の名前である曼殊沙華(マンジュシャゲ)とも呼ばれることがあります。
曼殊沙華は白くて柔らかい花とされますので,どうして赤い彼岸花の別名になったのか不思議な話です。

■「菊(キク)」…仏花のイメージが強く,切り花としては一年中出回っていますが,重陽の節句にもある通り,日本の秋を代表する花のひとつ。
菊が仏花として定着した理由は…その高貴な香りが邪気を払うと考えられたことに加えて,長持ちする点が挙げられます。
天皇家の御紋も「十六八重表菊」
□開花時期…8月~10月
□花言葉…「高貴」「高潔」「高尚」

 

■「鶏頭ケイトウ」

学名:Celosia cristata,英名:Cockscomb,科名:ヒユ科,属名:ケイトウ属,原産地:アジア・アフリカ・アメリカの熱帯域

・熱帯地域では多年草ですが,日本では寒さで枯れてしまいますので,一年草となっています。
・赤い穂状の花が鶏のトサカのような所から,この名前がつきました。

・トサカ系,久留米系,キルドシー系,プルモサ系と4つの系統に分かれており,草丈や花の形や色は様々で,カラフルで鮮やかな色は暑い夏でも長持ちし,ドライにもなります。

 

■「ミズヒキ」…花弁がない独特な花で,開花時期は8月上旬~10月上旬頃です。
のし袋や贈答用の箱に掛ける紅白の紐(帯)のことを水引(みずひき)と言いますが,ミズヒキは花の部分が紅白で水引に似ていることから名付けられました。

■「ホウセンカ」…6月~9月までが開花時期で,最盛期は7月~8月です。
秋になると,実がはじけることで有名です。
■千日紅(センニチコウ)…百日紅(サルスベリ)よりも開花時期が長いことから千日紅と名付けられました。
秋のお彼岸の供え物として重宝されています。
□花言葉…「変わらぬ愛」
□開花時期…7月~9月
■紅葉葵(モミジアオイ)…別名:紅蜀葵(こうしょくき)…北アメリカ原産の鮮やかな赤色が美しい花。
□開花時期…8月~9月
□花言葉…「温和」「優しさ」
■「山辣韮(ヤマラッキョウ)」…ユリ科の植物で,茎の先に小さな花をたくさん咲かせるユニークな形をしています。
□開花時期…9月~11月
□花言葉…「つつましいあなた」

■秋七草
白露の頃には,秋の風情を感じさせる「秋の七草」が咲き始める季節になります。

秋の七草は,山野に自生するものが多く,ススキと桔梗以外は普段はなかなか目にする機会が少ないです。
なので,植物園や公園などで秋の七草を一度に見られる展示をチェックしてみましょう♪
そして,秋の七草に親しみ,秋の風情を感じましょう♪


㈠由来は…歌人:山上憶良(やまのうえのおくら)が『万葉集』(巻八)で詠んだ2首の歌に由来するといわれています。
□「秋の野に 咲きたる花を 指折(およびお)り かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
□「萩の花 尾花 葛花 なでしこが 花をみなへし また藤袴 朝顔(あさがお)の花」

㈡整理するとは「ハギ」、尾花は「ススキ(薄)」、花は「クズ」、撫子は「ナデシコ」、女郎花は「オミナエシ」、藤袴は「フジバカマ」,朝顔は諸説(,「ムクゲ」「ヒルガオ」)ありますが「桔梗(キキョウ)」を指すとされます。
春の七草のように食べられるわけでもなく,華やかな草も花も入っていませんが,日本の秋らしいシミジミとした良さを感じさせるものばかりで,風流を感じます。

㊀地味な花に美を見出した昔の日本人の細やかな感性
秋の七草はどれをとっても,華やかな花ではなく,道端に生えていても,見過ごしてしまうような地味な花達です。
昔からよく和歌に歌われている「㊀萩」の花はとても小さくて目立ちませんし,「㊃撫子」の花も可憐ですが,地味であまり目立つことがありません。
しかし,これらの草花は万葉集の時代から歌われ,私達の祖先に愛されてきました。
撫子は漢字で「子をなでる」と書きますが,子供らを優しくなで,地味で,控え目で,目立たないけど,よく見ると,清楚で可愛らしい日本人の祖先達はこうした姿に女性美を求めたのかもしれません。
昔の日本人達はこの花を日本の乙女にたとえて「大和撫子」と呼び,乙女達もまたそう呼ばれることを誇りとしてきました。
牡丹やバラのような艶やかで大ぶりで目立つ花を好む外国人の方々は,こうした地味な草花を愛でる日本人の感性が理解できないと言います。
このような地味な花に美を見出した昔の昔の日本人の感性の細やかさ,優しさを思わずにいられません。

 

㊁七草は春だけではなく秋にもあり,春の七草のように七草粥にするのではなく,観賞用として親しまれています。
また,和歌や日本の美術品等にもよく登場します。


㈢秋七草
㊀「萩(ハギ))…古くより日本人に馴染みのある植物で,秋の七草の筆頭をつとめます。
秋の彼岸にお供えする和菓子「おはぎ」のモチーフになった植物です。
一般的に秋の七草のハギといえば,「ヤマハギ(山萩)」を指すことが多いですが,「ミヤギノハギ」や「イヌハギ」等の種類もあります。
山野に自生する他,庭木(ミヤギノハギ)としても好まれます。
夏から秋にかけて蝶のような,愛らしく,かわいい姿の鮮やかな紅紫色の花を咲かせます。(花の色は紅紫色が多いですが,白等もあります。)

㊁尾花(おばな:ススキ)…秋らしい寂しげな情緒を感じさせる多年草で,日本各地の山野や河原等,至る所に自生しています。
童謡に歌われたり、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」といった諺に登場したりと,日本人に馴染みのある植物です。
茅葺屋根の材料や中秋の名月のお月見の飾り物等としても欠かせない植物です。
ススキの花穂はフワフワしており,種子に生えている白い毛のため,全体的に白く見えます。
花期は7~8月ですが,花を観賞するのではなく,秋に花穂を眺めることがほとんどです。
イネ科の植物なので、イネ科の花粉症を持つ方は注意しましょう♪

㊂「葛(クズ)」…ツル性の多年草で,荒れ地に植生します。
8月末から9月にかけて,落ち着いた赤紫色をした可憐で,美しい房状の花を咲かせます。
葛の根から取ったデンプンで作るクズ粉は,食用に使われ,応用範囲が広く,くず餅やくず切り,くず湯などに利用されます。
[薬用]…葛の根は「葛根(かっこん)」と呼ばれ,風邪を引いた時に処方されるお馴染みの「葛根湯(かっこんとう)」の原料となります。

㊃「撫子(ナデシコ)」…夏の花で,6月7月が最盛期ですが,8月も9月もしっかりと開花しています。

秋の七草は「カワラナデシコ」という品種を指しますが、撫子の仲間は世界に300種も分布しているとされています。
カワラナデシコは先端に深い切り込みがある5枚の花びらを持ち,ピンクや紫,白,赤色等の花を咲かせることが特徴です。
日本女性ならではの美しさを例える「大和撫子」という言葉があるように,可憐で上品な撫子の佇まいから,古くから好まれてきた花です。
撫子の仲間である「セキチク(石竹)」という中国原産の品種も人気があります。
[薬用]…茎や葉、根等の部位が生薬として用いられます。

㊄「女郎花(オミナエシ)」…開花時期:6~9月と長期間で,さらにつぼみや花付近の茎まで黄色く,花が枯れても,色が保たれますので,長く鑑賞できるオミナエシ科の多年草。
□1mほどの背丈に,黄色い小花をいっぱい咲かせて,秋の風になびく様子が素朴ながらも風情のあり,全体的に優しげな印象で,日本の秋にピッタリの植物です。
□かつては各地の山野や草むらで咲く姿を楽しめる花でしたが、近年はすっかり見かけなくなってしまいました。
□十五夜に飾る秋の七草でもあり,万葉集や源氏物語にも登場するほど古くから愛されてきました。
□漢字で「女郎花」と書きますが、「女(おみな)を圧(へ)す=きれいな女性を圧倒する」が語源といわれていて,名前の通り,小さくて黄色い花が多数集まった様子は存在感があります。
□原産地は…日本・東アジア
□[薬用]…根や花枝が生薬として使われます。

㊅「藤袴(フジバカマ)」…夏の終わりから秋の初めにかけて、小さな藤色(淡い青紫色)の花を房状に咲かせる植物です。
花びらが袴のような形をしていることから,フジバカマの名づけられました。
河原や林に自生していますが,近年は環境の変化(土地開発)によりり減少して,絶滅危惧種とされています。
生の状態だとほぼ無臭ですが,乾燥するにつれて,桜餅のような甘い香りを放ちますので,古くから香料として使われています。
□[薬用]…生薬としても利用されます。

㊆「桔梗(キキョウ)」6月と7月が最盛期ですが,秋の花でもあり,9月までしっかりと開花しています。

真っすぐに伸びた茎の先端に,星型の落ち着いた青紫色の花を咲かせる植物です。
日本全土の野山に生息し,古くから日本文化に根ざしている花の一つですが,現在,絶滅危惧種の一つになっています。
□[薬用]…根が生薬の「桔梗湯(キキョウトウ)」(喘息,咳止め,喉の炎症を鎮め,痰(たん)を抑える作用有り)等に使われます。

 

※秋の花や植物
秋といえば紅葉のイメージですが、開花する花も多く、たくさんの美しい植物が見頃を迎えます。
(花の開花期間は種類や地域によっても幅があります)
⑴立秋…朝顔,百日紅(サルスベリ),向日葵,木槿(ムクゲ)
⑵処暑…芙蓉,酸漿(ホオズキ),白粉花(オシロイバナ)
⑶白露秋海棠(シュウカイドウ),山牛蒡(ヤマゴボウ)
⑷秋分…彼岸花,薄(ススキ),撫子
⑸寒露…金木犀,秋桜(コスモス)
⑹霜降…竜胆,野紺菊(のこんぎく)