・物語

普通だなぁ。令和ライダーの中ではまともな作品だけど、一般的なドラマと比較したらまだ全然。ある程度先の展開が読めてしまうし、設定を上手く使いこなしていない感じがする。でもまあ、湊P初の担当作品にしては上出来かも知れないしある程度は良しとしてるんですけどね。
 
前半は敵側の方で動きがありましたとさ。と言ってもこれまでの話を考えてみれば分かる話だし、そこまで面白さの深みはない。ラケシスがグリオンを恐れていたのは予定調和だったし、それをミナトに伝えて何とかしてグリオンを消そうとしたのも大体把握してた。まあ、なぜ彼女があそこまでグリオンを恐れていたのは後で深掘りするんだろうな。
 
その彼女の動きを察知していたグリオンも消そうとしたのも分かるし、その手下で文句も言うことなく動くアトロポスとクロトーの二人がラケシスとミナトを処分しようとしたのも分かる。何だか全てが予定調和で動かされているし、ある程度先が読めてしまう展開になっているからあまり面白くないんだよね。登場人物たちや視聴者が感じてしまう「想定外」が見たいというか、そんな展開が見たいです。
 
話が逸れてしまうけど、何だか直近の仮面ライダー作品って展開がある程度先が読めてしまうものばかりだよね。それに多人数ライダーに味を占めたバンダイが挙って催促を入れたがるところを見る限り、東映側とテレ朝側は苦労していると思う。一般的なドラマは「シナリオ」だけ構成すれば良いけど、こういう特撮作品は「シナリオ+催促」で考えないといけないから尚更難しいって感じ。しかも特撮は老若男女が見る、主に子どもを対象とした作品であるから尚更。
 
そんな子どもは難しいことを考えず、ただ目の前のことに興味を示して感情を出していくから、あんまり難しい構図だったり難しいシナリオを見せると子どもが飽き飽きしてしまうのよね。その前例を作ってしまったのが「仮面ライダーセイバー」だし、その例を受けて「仮面ライダーリバイス」が誕生した。誰が味方で誰が敵なのか、メインターゲットが分からないような作品はダメですよ、無論。ただ大人でも見せようとした気概は分かったし、メインターゲットを拡大しようとしたのも分かる。けど催促要素がいつまでもこびりついているとメインターゲットなんて拡大できないんだ、これが。
 
そこに多人数ライダーを入れるとどうなるかと云えば……無論シナリオを大幅に変更しないといけないし、場合によっては話の着地点を変えざるを得なくなる。その影響を被ったのがミナト先生だし、演じてらっしゃる御本人もきっと責任感を感じているはず。
 
だからあまりシナリオ変更はおすすめしないのです。できる限りは当初のプロット通りに動かすのが創作だし、少しずつズレ始めた箇所を後の展開で継ぎ足しておくのも創作。創作って無限大なのです。
 
話が大幅に逸れてしまいましたが、私が言いたいのは「シナリオを大幅に変更するな。催促要素をシナリオに組み込むな」だけです。催促要素を入れてしまっては「あぁ、まだ『仮面ライダー』作品は子ども向けなんだな」とか、「まだ日本人は玩具をカチャカチャ云わせたいだけなんだな」って批判されるだけなんですよ。いい加減、バンダイさんは変わってくれませんか?
 
で、物語後半はその催促要素が思い切り込められた戦い。結局りんねの父親はライダーに変身しているし、これじゃあまるで「仮面ライダーは誰もがなれる存在」だと思われがちなんですよね。どの年代でも「仮面ライダー」はなれる、「ヒーロー」になれる。古いでしょ。
 
その描写をするんだったら、アメコミの『スパイダーマン』で出てくる「大いなる力には大いなる責任が伴う」的な描写を入れて欲しいです。それと、ヒーローないし「仮面ライダー」になる主人公には欠点が存在しており、主人公もまた視聴者のような人間の一人なんだってことを描写して欲しいです。例えを言うなら、『仮面ライダーゼロワン』の飛電或人や『仮面ライダーセイバー』の神山飛斗真、『仮面ライダーリバイス』の五十風一輝とか。彼らのような主人公の感じが寧ろ有るべきヒーロー像として相応しい。
 
あ、でもラストのりんねが涙するところは良かったです。松本氏って結構演技が上手いし、憑依シーンなんてその最たる者となってる感じ、彼女この作品を出世作として色々なドラマに出る可能性が高いかも知れない。
 

・まとめ

普通です。次回は新フォームが出るらしいですね。