その男はロンドンの副社長から本部に帰って来て俺の上司になった
俺の新人時代だ
どこで何をしていようと彼は俺のボスだ
俺は彼の鉄砲玉だと自負していた、いや今でもいる

彼の命を受けて1年準備をし(俺新人だから雑用担当。要するに全部俺)チーム4人のニューヨーク転勤、ニューヨークで支店の2人と現地人2人と合流して合計8人のチームを立ち上げた

俺がニューヨークを後にするときには30人の会社になっていた

30年後の今、吸収合併を経てその会社は世界で5本の指に入る会社になった

俺がニューヨークにいたころ彼はロンドンの社長になった
その後何年か互いに海外を渡り歩き(というか渡ったのは俺だけだ。親分はロンドンの帝王になった)
俺が東京に戻る少し前にボスは東京の社長になった

「おい、ニューヨーク出張だ」
ボスは東京の現場の社長
俺は監督する本部の末席役付とはいえ、現場の社長の権限は及ばないところにいた はずなのに

「そんなのカンケーねー、お前んとこの頭と話つけとくから一緒に来い。大体これはオメーの仕事だろうが?あぁあ?」

「は、はい喜んで行きます!」

ボスからしたら俺はいつでもニューヨークの小僧なのだ
俺だってニューヨークを離れて7、8年なんだけど

タイトルの言葉はボスの口癖だ
ギリギリの選択を迫られることが多いからなのだろうが、居酒屋で酔っ払って注文するときにも言うので当てにはならない

「おい、オメーの行きつけ店に連れてけ」

行きつけっつったってもう大昔だから知ってる子なんていない

「なんだオメーはいつもこんなとこに来てるのか?もっといい店連れてけ」

つったって俺は知らないっつの
でもボスはニューヨークの小僧と思ってるから俺はニューヨークの小僧

ニューヨークのヤツに買ったばかりの携帯で電話して今ニューヨークで一番高級な店を教えてもらう

ニューヨーク支店のヤツが知ってるってことは当然そこにはウチのニューヨークの偉い人もよく行く

嫌な予感


もちろん的中


まぁしかし偉い人同士で話してくれるから小僧的にはあり

なんでもそこのママにニューヨークの偉い人は入れ込んでるらしい


ふむふむなるほどきれいだ



ん?あれ?久美子ちゃん?

いやだお客さん、ママの名前は久美子じゃありません
人違いですよ
ママは偉い人達の接客担当だから俺んとこには来ない

VIPルームの一番広いお部屋

取り巻きいっぱい

俺はほぼ末席で俺には若いパー子ちゃんがつく

ママは俺なんか見向きもしないのだが


そう?いや久美子ちゃんだよ絶対

ママもやっと気づく

あぁぁぁ!!!


偉い人達の見ている前で立ち上がり俺に抱きついてくるママ

 

ひさしぶり〜

会いに来てくれたの?私のことまだ覚えてくれてたのね!はーと

嬉しい!はーと
この人は私の20代を知る唯一の男よ はーと


お、おい
嬉しいけど偉い人達の前でその言い方やめろ

誤解される

その後久美子ちゃんは偉い人達の接客はおろか業務を全て放棄してずっと俺につきっきり
俺もついつい親分のことは忘れ....

偉い人いっぱいいる中で一番人気の女の人と2人の世界できゃっきゃきゃっきゃ

俺がニューヨークにいたころ、日本から来たばかりだった久美子ちゃんはグリーンカードも取りニューヨークの一番高いお店のママんなってた

あっという間に明け方になり

「おい帰るぞ」

ニューヨークの偉い人さえ聞き出せない個人の電話番号を渡されて絶対連絡ちょーだい!
おい、偉い人達の前でやめて....

俺にはANAのCA(成田-ワシントン)独り占め事件の前科があるのに


帰ってしばらくボスの機嫌悪かったんだから...

東京に帰ってしばらくは赤坂の店に連荘で付き合うはめになったんだから


俺もてるのよ
ごめんね

 

意外でしょ


って話を思い出した
どういう経緯かは長くなるから省略