




60代なかばでは早くはないか
社会復帰し社会貢献を
出来る筈ではあるが
更生し咎人として出所し
衆人環視の中で
殺人者としての経験を語る勇気があるのならば
㌨である
無期懲役であっても30年ほど悔いの中で
みずからのあやめた尊い命の重さを
悼み祈り
守られるべきだ
入所中に過去をまとめ
75歳の後期高齢者として出所し
手記を出版し
家族の狂気の被害者として
宗教ではなく
狂った母親のおかげで
人生を失ったと
嘆き
おなじく家族の凶行に苦しむものを
救う側としての余生を見つめるべきである
情状酌量は不要である
彼にとって現世はしあわせなものでは無い
安心して眠れる部屋
食べるものにも困らず
じぶんと向き合う時間を初めて得る
母親を説得できなかったこと
父や兄を喪ったこと
静かに向き合い祈れば良い
運悪く成功してしまった八つ当たりが
彼を安全な箱に閉じ込める
其処で
こころを拓き
もっと世界は広かったと知れば良い
そして
悔いは終わった
だれかに託したいと
考えられるようになったときに
プロフェッショナルに委ねることである
獄中であっても
できることはあるのではないか
願い祈り
どうぞだれかを殺めずとも
家族を恨まずに
生きられますようにと
こころを律してほしいものである
母親は別個の生物である
棄てれば良かったのだ
彼には自由な世界があった
妹を連れて
母親を
棄ててしまえば良かったのだ
無期懲役のほうが
彼は
安全である
此れは確定的な予見である
ちやほやされても浮ついてはいけない
誰もが傍観者であり
無責任な無記名の観客でしかないからだ
ヒトゴロシの枷を外すことは出来ない
ただ終わりまで祈るしかなきたましいに堕ちてしまったのだから
ただ生きる
其れが贖罪に成るように生きるのみ