転生ローマ帝国 ~現代人、帝国を変える~第五章、第六章 | スキル向上委員会のブログ

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skill:スキル(熟練、技)をテーマに日常の出来事、ニュース、情報を主観的、客観的に考え話にしています。作家:愛崎好生・1億人のスキルー人生の参考書を執筆。人生のお役に立てば幸いです。

第五章 皇帝ハドリアヌスとの謁見

西暦124年。

マルクスはついにローマへ到着した。

ティベリス川を渡った瞬間、その壮大な光景に思わず息を呑む。

無数の神殿。

大理石の公共建築。

水道橋。

広場を埋め尽くす市民。

世界最大の都市が目の前に広がっていた。

「これがローマか……。」

しかし感動に浸る時間は長くなかった。

翌朝、皇帝直属の近衛兵によってパラティーノの丘にある皇帝宮殿へ案内された。

巨大な青銅製の扉が開く。

大広間には帝国各地の総督や将軍、元老院議員が並んでいた。

そして最奥の玉座。

そこに一人の男が座っていた。

皇帝ハドリアヌス。

広大なローマ帝国を統治する絶対的支配者である。

鋭い眼差しは獲物を見据える鷲のようだった。

「マルクス・アウレリウス。」

低く威厳のある声が響く。

「前へ。」

マルクスは跪いた。

広間は静まり返る。

「顔を上げよ。」

皇帝の命令に従う。

ハドリアヌスはしばらく彼を見つめた。

「属州の農業改革を行ったのは本当にお前か。」

「はい、陛下。」

「報告書は読んだ。穀物生産量の増加、灌漑設備の整備、種子改良、倉庫網の構築。並の行政官では思いつかぬ。」

皇帝は立ち上がった。

「なぜそれほどの知識を持つ?」

一瞬だけ緊張が走る。

転生者であることなど説明できない。

「私は常に自然と人々の生活を観察してまいりました。」

ハドリアヌスは小さく笑った。

「賢い答えだ。」

周囲の貴族たちは驚いていた。

皇帝が一介の青年に興味を示している。

それ自体が異例だった。

やがて皇帝は地図を広げた。

そこにはローマ帝国全土が描かれていた。

ブリタニア。

ガリア。

ヒスパニア。

アフリカ。

シリア。

エジプト。

世界最大の版図である。

「マルクス。」

「はい。」

「農業以外に帝国を豊かにする方法はあるか。」

待っていた質問だった。

マルクスは深く息を吸った。

「ございます。」

広間がざわめく。

「道路網の改良。」

「上下水道の整備。」

「公衆衛生制度の導入。」

「学校の設立。」

「技術者育成。」

「物流管理の標準化。」

次々と提案が飛び出す。

元老院議員たちは半信半疑だった。

しかしハドリアヌスだけは真剣に耳を傾けていた。

話が終わると皇帝は静かに言った。

「面白い。」

その一言で広間は再び静まり返る。

「帝国は今、最盛期にある。」

「だが私は知っている。繁栄は永遠ではない。」

ハドリアヌスはマルクスを見据えた。

「お前には他者とは違う視点がある。」

そして高らかに宣言した。

「本日よりマルクス・アウレリウスを帝国改革顧問に任命する。」

貴族たちは騒然となった。

二十歳そこそこの青年が皇帝直属の顧問になるなど前例がない。

だが皇帝は意に介さない。

「ローマの未来を共に築け。」

マルクスは深く頭を下げた。

「謹んでお受けいたします。」

こうして農村の青年だったマルクスは、ローマ帝国の中枢へ足を踏み入れた。

しかし彼はまだ知らない。

帝国の内側には腐敗した官僚、権力争いを続ける貴族、辺境で勢力を強める異民族たちが存在することを。

そして未来では、それらが帝国衰退の原因となることを。

マルクスは決意した。

――ローマを千年続く帝国に変えてみせる。

帝国改革の本当の戦いが、今始まったのである。

 

 

第六章 帝国大土木計画

皇帝ハドリアヌスとの謁見から数日後。

マルクスは元老院議員、技術者、軍団工兵隊の指揮官たちを集めた。

会議の議題はただ一つ。

「ローマ帝国の基盤を強化すること」

広間の中央には帝国全土の地図が広げられていた。

マルクスは地図の上に木の棒を置いた。

「帝国が繁栄するために必要なのは軍隊だけではありません。」

「人、物、情報が素早く移動できる仕組みです。」

技術者たちは顔を見合わせた。

情報という言葉は理解できなかったが、物流の重要性は理解できた。

まず着手したのは道路整備だった。

ローマ街道はすでに世界最高水準だったが、多くの地方では補修不足が目立っていた。

マルクスは帝国を結ぶ主要幹線を選定した。

ローマからガリア。

ローマからヒスパニア。

ローマからゲルマニア国境。

ローマからギリシア、そしてシリア。

主要道路沿いには一定間隔で宿駅を設置した。

馬の交換所、宿泊施設、食糧倉庫を整備する。

これにより伝令の移動速度は大幅に向上した。

軍団の移動日数も短縮される。

商人たちはより遠くまで安全に商品を運べるようになった。

さらに道路標識も設置した。

都市までの距離を刻んだ石柱を各地に配置する。

旅人たちは迷うことなく移動できるようになった。

続いて上下水道改革が始まった。

ローマ市内には巨大な水道橋が存在したが、多くの地方都市では十分な給水設備がなかった。

マルクスは帝国各地へ技術者を派遣した。

新しい水道橋。

貯水池。

配水施設。

公衆浴場。

飲料水を安定供給する仕組みが整えられていく。

しかし彼が最も重視したのは下水設備だった。

「汚水を街から遠ざけなければ病は減らない。」

多くの役人は首をかしげた。

病気は神々の怒りによるものだと考えられていたからだ。

それでもマルクスは工事を進めた。

排水路を整備し、雨水と生活排水を分離する。

市場周辺には定期清掃制度を導入した。

ごみ捨て場も都市の外へ移設する。

数年後。

その成果は明らかだった。

疫病の発生件数が減少したのである。

子どもの死亡率も下がった。

市民たちは気付いていなかったが、帝国は確実に変わり始めていた。

ある日。

皇帝ハドリアヌスは完成した新水道橋を視察した。

透き通った水が都市へ流れ込んでいる。

「見事だ。」

皇帝は満足そうに言った。

「道路は帝国の血管。」

「水道は帝国の生命。」

マルクスは答えた。

「そして教育は帝国の未来です。」

皇帝は微笑んだ。

「次の計画があるようだな。」

マルクスの視線は広場で働く若い職人たちへ向けられていた。

優秀な技術者が足りない。

帝国がさらに発展するには、知識を体系的に伝える仕組みが必要だった。

こうして彼は次なる改革、

『ローマ帝国技術学院設立計画』

に着手するのである。

後に歴史家たちはこの一連の改革を、

「第二ローマ建設時代」

と呼ぶことになる。