「驚くのも無理はない。」
そう言いながら所長は手元のパネルを操作して、画面を切り替えた。
「熱量を関知するカメラに切り替えた。エネルギーの大きさを色で表している。
画面の左側に黒く映っている場所があるだろ?そこに彼がいる。
黒は計測不能。あまりに大き過ぎるエネルギーの証だ。
多分、彼はベッドに座っているか、うずくまっているのだろう。」
ここにカズが居る、居るはず。
でも目に見えない
確かにカズは俺の側に居た。
確かにカズの小さな身体に触れた。
重み、体温、匂い、声、全てがカズの存在を裏付けていたはずだ。
あれはいったい何だと言うのか。
「このエネルギー体は・・・分かりやすくカズと呼ぶが、人の思考に敏感に反応する。
つまり人の思考を読み取って相手の思う姿を見せる…。
正確には見えているかのような、触れているかのような、
聞こえるかのような感覚を与えるパルス(信号)を相手の脳に直接送っているにすぎない。
言い換えれば、カズなる人物は、リアルな幻だ。」
幻?
「じゃあ、カズの姿は見るものによって違うと言うのか?」
だから俺にはニノそっくりに見えたのか?
「いや、そうではない。」
所長はモニターを切り、また俺と対峙した。
「カズの姿は見る者全てに一致していた。君の弟とそっくりな姿さ。
つまり、カズは君の思考だけに反応していると思われる。」
「・・・カズに会わせろ。
あんたの言うことが正しいとするなら、カズはカメラを通しては見えないが、
直接見ればカズの姿をしているって理屈だろ?
今すぐカズのもとへ案内しろ。」
俺は所長の眼を正面から睨み付けた。
静かに俺を見つめるヤツの眼からはその感情は読み取れない。
俺からすれば、あんたの方がよっぽど喰えない奴だよ。
「それが状況が変わってね。
君と離れて君の思考が届かなくなったせいか、カズの姿は徐々に不鮮明になり、
今では誰の眼にも写らなくなったのだよ。」
・・・!?
「今の彼は、本来のエネルギー体に戻ったというところだろうか?」
言葉が出ない・・・。
「彼をどう扱っていいのか、我々も思案にくれていてね。
カズが居る部屋には必ず案内しよう。
その前に、私の話を聞いてくれないか?BIG-NO。
この星の再生の為に。」
つづく
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
何時の間にか30話・・・∑ヾ( ̄0 ̄;ノ
こんなに長くなってしまって、飽きられるのではないかと心配です。(弱気)
書いている本人は、かなり楽しんでますけどね:*:・( ̄∀ ̄)・:*: