ユーロ2024ドイツ大会決勝、スペインvsイングランドはスペインが優勝。見事なポゼッションプレーは2010年頃の無敵のスペインを彷彿とさせるものだった。ブラボー。

 そのユーロ決勝戦の前、同日昼間にイギリスでもう一つの決勝戦が行われた。テニスのウィンブルドン選手権、男子シングル決勝戦だ。

 

 結果は、アルカラスがジョコビッチに3-0のストレートで勝利。昨年と同カードの決勝戦に勝利したアルカラスは、2年連続で優勝トロフィーを掲げることとなった。

 オープン化以降、ウィンブルドンの連覇達成は史上6人目。同シーズンに全仏オープンとウィンブルドンを連続優勝したのも史上6人目。ちなみに、クレーコートの全仏と芝コートのウィンブルドンを連続で優勝するのはとても難しいこと。

 アルカラスは現在21歳。2022年には、19歳でグランドスラムの一つである全米オープンに優勝するなどの活躍を見せ、史上最年少で世界ランキング1位を獲得。テニスの歴史に、現在進行形で数々の名を刻み続けている若者だ。

 

 サッカーのヤマル君17歳(決勝戦の前日が誕生日だったのよ)にしても、テニスのアルカラス君21歳にしても、才能溢れる若者たちが大活躍。そして、2人ともスペイン人。スペインは今、年少者のスポーツの才能を開花させるのに長けているなぁ、と思う。クラブの下部組織やナショナルトレーニングセンターなど、若者の育成を国民みんなで支える仕組みがあり、その成長を国民みんなが喜ぶマインドがある。「自宅の隣に保育園が出来てうるさいから何とかしろ」やら「電車で赤ん坊を泣かせるな。黙らせろ」やら言うやつが横行している某国が嘆かわしい。

 

 

 ウィンブルドンは、テニスの白熱した試合が見られるのはもちろんだけれど、大会自体の雰囲気が見るに値すると、僕は思っている。

 ウィンブルドンは紛れもなく、イギリスの王室文化が主であり、それに準じる貴族文化や騎士道精神がベースになっている。そう言うと、身分社会、差別社会、格差社会の肯定のように聞こえてしまったりするけれど、それらが持つ魅力や美しさまでも闇雲に否定することがリベラルであるとは、僕は思わない。僕は「貴族だろうが一般市民だろうが、良いやつは良い、悪いやつは悪い」と思っている。

 

 彼らが築いてきた文化の美徳には「規範と礼節」があると思う。役割として人の上に立つ者は、強く、逞しくあるのはもちろん、清く、正しくなければならない。そのためには規範と礼節を遵守することが重要となるからだ。

 この美徳と近代スポーツにおけるスポーツマンシップが素晴らしく融合した大会だなぁと、毎年ウィンブルドンを見て思う。それが最も感じられるのは表彰式。トッププレーヤーたちの熱戦はもちろんだけれど、表彰式を見なければと思うのはウィンブルドンくらい。

 お互いを尊重し、健闘を称え合い、所感を述べて、皆に感謝し、栄誉を喜ぶ。準優勝者と優勝者、両者のスピーチとインタビューが試合直後のコート上で行われる。この時間がしっかりと取られることによって、例えどんな結末であったにしても、充足感に満ちた幸せな終幕を感じることができる。試合をすること、競い合うことが、ただ優劣を決め、立場や権利を奪い合ったり、相手を憎んだり恨んだりすることではなく、お互いを成長させるために必要な切磋琢磨なのだと、見ている者にも思わせてくれる。素晴らしかった、ブラボーと心から拍手したくなる表彰式。今年のジョコビッチの言葉もアルカラスの言葉も素晴らしかった。

 

 そして思う。インタビュアーが上手って大事。本人が話し出せるきっかけを作り、本人が思いを十分に話せる間を取る。緊張していたり、口下手だったりするようならばユーモアを含んだ問いかけをする。これが毎年、ウィンブルドンは上手。下手なインタビュアーだと「お前がストーリーを作るな」とか「選手よりお前がしゃべってどうする」とか「テンパって何回も同じこと聞いてんじゃねぇよ」とか、良い試合を台無しにしちゃったりするもの。

 今年のインタビューのベストユーモアは、少し緊張気味のアルカラスに「サッカーの話をしてもいいでしょうか?あなたはどこで誰と見ますか?」と。ユーロ決勝はスペインvsイングランドだから。観客からもどっと笑いが起き、アルカラスにも笑みが生まれ、「チームの皆と見ます。もう僕の仕事は終えたので」とユーモアで返し、再び観客は笑いと拍手で若者を迎え入れる。ブラボー。

 ついでに、実況と解説もインタビュアーと同じなのよね。台無しにしたり、イライラさせる時があって。僕の好き嫌いなんだけれども。これが、ここ数年のウィンブルドン決勝は心地良いんだよね。実況は酒井アナウンサー、解説は坂井さん。いい仕事されてます。

 

昨日、今日と月がとても明るくて美しかったね。

21日の甲子園球場、大山選手のホームランの際、背景に月が綺麗に映ってた。

あれはドーム球場じゃ写せない映えホームラン。