僕は子供たちに、

「父への旅行のお土産は不要だからね」と常々言ってきた。「お土産を選ぶ時間や買うお金があるのなら、それは自分のために使いなさい。そして、その旅行の話を聞かせておくれ。それが一番嬉しいお土産だから」と。記念日のプレゼントも同様で、要らぬ気づかいはしなくて良いと伝えてきた。

 僕の教えを忠実に守っていたのか、それとも離れて暮らす父親の誕生日などは端からどうでも良いのか、とにかく彼らはお土産やプレゼントを僕に贈ることはなかった。

 

 先週、まずもって通知のない娘からのLINEが届いた。何かあったのかしらと確認すると、「Happy Father's Day」とLINEギフトが送られていた。メッセージは無し。うーん、男前。

 兄妹で相談し、じゃんけんで負けた妹が送ることになったくらいなんじゃね?と思いながら「ありがたく頂戴しますよ」と返信したら、よく分からん動くスタンプが返ってきた。「どういたしまして」の解釈で良いとは思うのだが。

 

 今時だなぁと思いながら、受け取りのための住所等を入力する。教えに背いた上、こちらの入力の手間がかかる贈り物をするとは、何とも小憎たらしいじゃないかと、ニヤニヤしながら入力する。そう、ニヤニヤしながら。 

 

上記、確かに受け取りました。

 

 ありがたいことに彼らは健やかに成長し、長男次男は社会人、長女は高校2年生になった。この春、長男が就職するタイミングで、今まで続けてきた月1回の面会を終了とした。

 長男が高校生になったくらいから「学校や友だちや恋人との約束があるのならば、そちらを優先しなさい。「その日は親父と会う日だから」と断るのは超ダサいから」と言ってきたのだが、気を遣ってか、ほぼ毎月都合をつけて面会に来てくれていた。

 

 それぞれオトナになった。そして、僕はニヤニヤしながら珈琲を淹れる。