僕の住む辺りは長閑なもので、
人口密集率と感染者率は見事に比例し、
緊急事態宣言期間でも近隣市町に感染者は出ていなかった。
それが7月中旬以降になって、徐々に増え始めている。
田舎の長所は、
「人々が温厚で温かい」「繋がりや絆を大切にしている」「近隣みんなが家族のよう」
などと形容されたりする。
確かに、旅行で訪れた先でそう感じたことがある人も少なくないはず。
僕も田舎の良さを知っているから、田舎に住み続けられているのだし。
けれど、長所の裏返しは短所。
小さなコミュニティーでは、
ウィルス感染の速報と感染者特定の噂の口伝速度は見事に比例し、
即日で「アレはドコドコのダレダレらしいな」という話が伝播する。
家族のように密接な関わりがあり、隣人知人の生活に詳しく、
「変わらない」という安全が確保されている場合に限って、温厚な人々だから。
ニュースで流れるような残酷な話が、身近で聞こえてくる。
「アノ人らしいから近づかない方がいい」
「アノ人の家に投石があったんだって」
「アノ人、結局引っ越したらしいよ」
「ああ怖い怖い」
『八つ墓村』のミステリーは、大都市では成立しない。
ウィルス感染者及び医療などの高確率接触関係者への差別や、SNSの誹謗中傷問題。
オトナがこんななのに、コドモに「イジメはダメ」ってよく言えたものだ。
説得力の欠片もないのに伝わる訳がないじゃないか。
いつになく、人間性が問われている。と想う。
くさくさする日々を少しでも払拭するため、走る。
ずいぶんご無沙汰の登場。
「俺もずっと乗れてなかったから付き合おうかな」と、
AMだけのランチツーリングにラヂオ屋参戦。
例のピザ屋へ。
今回はマルゲリータとクアトロフォルマッジを注文し、シェア。
ネット情報で評判が良いのはクアトロらしく、前回食べた報告をしたら、
「なぜクアトロを食べんのだ。愚か者め」とラヂオ屋が言う。
「しかも俺が教えてやった店に先に行くとはけしからん」と。
「この前一人で来たら閉まってたし」とも。
知らんがな。
クアトロは評判通りの美味しさだった。
口に合わないブルーチーズは、ただカビ臭いだけで苦手なのだけれど、
このピザに乗っていたのは、ちゃんと風味になってるというか、
「ああ美味しいんだ」ってちょっとした感動みたいなのを感じられるものだった。
「ハチミツをかけるのか?」
「それがフォルマッジという食べ物だろ」
「俺は甘すぎるのはちょっと…」
こんなやつがいることを想定してか、ハチミツは小さい容器で別に出てくる親切対応。
なので、半分はそのまま味わい、残り半分にハチミツを使用することに。
いよいよハチミツを垂らし、実食すると、
「うぅむ。歯が痛くなりそうだ…」
「うぅむ。バランスの妙、絶品なり」
と分かりやすく明暗を分けたので、
「じゃお前はマルゲリータの方を食え」
「そうさせてもらう」
「こんなに美味くなるのに」
「炭水化物に脂肪をたっぷり乗せてあるのに、さらに糖を追加するとは」
「追いハチミツをかけよっと」
「…1枚分のハチミツを半分にかけるだけでも倍量なのに…」
「うむ。美味い」
「見てるだけで歯が痛くなる…」
「美味いものは脂肪と糖で出来てるってのは本当だな」
「…やっぱりお前の体と頭はどうかしてる」
ちょっと待て。食いたがってたのはお前だっちゅーの。
腹も満たされ、後は気持ち良さそうな道で帰るかとなった際、
いつも適当に走る僕に比して、たくさんの情報を持って走っているラヂオ屋に、
「この辺に来た時に美味いラーメン屋はないのか」と聞くと、
「なら帰り道がてら、気に入ってる店を教えてやろう」となった。
加えて、「近くに『日本最大のとび太くん』があるが知ってるか?」と言う。
「知らねぇ。なんだそりゃ?」と答えると、じゃあ行くのが早いと相成った。
青空に舞う「とび太くん」。
…この植木を飛び越えられたら、はねちゃうこと必至だから止めて。
しかもデカいし。こっちがやられちゃうし。
「飛び出し坊や」。
運転者に子供の飛び出しの注意喚起を促すための看板。
全国の通学路などに多種多様の看板が設置されているが、
この始まりが滋賀県東近江市らしく、その元祖デザインは「飛出とび太」と命名されている。
この「とび太くん」、今や町おこしキャラみたいになってて、色んなグッズを売ってたり。
で、この子が「日本最大」なんだとか。
くだらなさ過ぎて、面白い。
やりすぎ感満載。
どんだけ飛び出すんだ。しかも顔出しパネルってどうよ。
もちろん顔出ししたけれどもさ。
暑かったけれど、気が晴れて気持ち良かった。
癒しって、論理じゃない。
くだらないことの中にある。