朝、いつも通りに携帯のアラームで目覚め、

いつも通りの眠気の中で、いつも通りに「ああ出勤がダルいな」と起き上がる。

そして、顔を洗うかと洗面所に向かって気付く。

今日は休みだった、と。

 

僕の職場には、一ヶ月の勤務日数の調整のため、定休日以外に平日休みがあったりする。

有休ではなく、希望公休という形で各々が用事に合わせて休みを取るのだけれど、

特に所用もなく、子供の行事もなく、妻の御機嫌取りもなく、

どちらかと言えば「ここは休めない」という業務都合による消去法で、

僕は休む日を決めることがしばしば。

で、今日がそういう日だった訳だ。

 

どうするかなと考えながら、いつもの3倍のろのろと朝のルーティンを行い、

とりあえずは銀行で出入金をするかと、出かける支度をする。

じゃ、せっかくの晴れ模様だし、バイクにしようと装備を持って外に出た。

 

 

晴れ時々曇り。気温は10度くらい。

寒いけど、厳しくはない。

ヘルメットのバイザー&眼鏡が信号の度に吐息で曇るのには閉口するけど。

走り出せば、視界の曇りは瞬く間に消え、

同時に、運転操作に集中するために雑念も消える。

これがモーターサイクルの快楽の一つだと、僕は思っている。

 

銀行に着く。

グローブを脱ぎ、眼鏡を外し、ヘルメットを脱ぎ、ヘルメットをバイクにロックして。

もちろん、用が済み、再び走り出すには同じことを逆回しにしなきゃならない。

ちょっとコンビニに寄ろっかなという場合も同じ手間がかかる。

改めて、クルマであれば必要ないのにと閉口する。

ま、この不便さもモーターサイクルの愉しみの一つだと、僕は言い聞かせる。

 

せっかくバイクを引っ張り出したし、もう少し走ろうと思い、

せっかく大型免許を取ったし、バイクショップでも覗いてみようと思う。

 

欲しいと思うもの。

用途に合ったもの。

手に入れられるもの。

所持し続けられるもの。

並んだたくさんのバイクやウェアなどを眺めながら、ぼんやり思う。

僕は何が欲しいのか。

 

友人との話や雑誌やネットを見ながら、

あれもいいな、これもいいなと思うのだけれど、

迷い始めると、自分が欲しかったものが見えなくなる場合がある。

見栄や欲が邪魔をしたり、臆病や堅実さが邪魔をしたり。

この本末転倒に僕は陥りやすいと思うから、

自分が何が欲しいのかを、何度もリセットを繰り返して考える。

で、なかなか決定しないという優柔不断を露呈するのだけれど。

 

1時間あまりブラブラと見て回り、結局何も買わずに店を出る。

駐車場には、ちょこんと僕のバイクが待っている。

メカの寿命としては、もう随分お婆ちゃんになったからね。

そろそろ暇を出してやってもいい頃なのだけれど。

とりあえず、家まで無事に乗せてってね。

 

再び、面倒くさい準備をして、寒い思いをして、家に帰る。

乗り換えもまた、モーターサイクルの愉しみでもあるよなと、

車庫の片隅に停めたバイクの背中を見ながら、シャッターを降ろした。