どうせ端折るなら、ちょっと面白そうな寺を目指すべき。
不信心極まりないチョイスから、腹を満たした我々は21番「太龍寺」を目指す。
四国は、天気予報などの日本地図で見る限り、
周りを海に囲まれた、主要四島の中で一番小さい島。
くらいが、四国地方以外に住まう人の認識だと思う。
4つの県がぎゅっと一つになっていて、
東京周りの関東圏のように、隣県の往来も盛んなんだろうな、と。
四国は、山の島だ。
西日本最高峰の石鎚山を望む四国山地が、島の中央に高く連なってそびえ、
香川と徳島の境には讃岐山脈がそびえる。
凹凸の分かる地図で見れば、8割近くが険しい山々に覆われているのが分かる。
ゆえに、四方へ流れる河川河口にできた町から町へは、
直線距離で移動するのは困難であり、四国四県はまるで4つの国のように分断されている。
だからこそ、空海は修行の場に選んだのだろう。
山、川、海。険しい自然が容易く移動させてくれない。
江戸時代まで土佐藩などが海運に長けていたのも、これが故だ。
「おい。本当にこっちでいいのか?」
「ナビゲーションが示した近道だ」
「かなり険しい峠道になってきたが」
「太龍寺はこっちだと言うんだ。従うしかあるまい」
「…。」
「…。」
「目的地付近って何もねぇじゃねぇか!」
「知るか!迷いたくって迷った訳じゃねぇ!」
「そこ止めろ。なんか案内板がある」
「遊歩道みたいだ」
「ん?ちょっと待て。これは…」
「どした?」
例の番組で「太龍寺に辿り着けず、この場所で誤魔化した」という聖地。
狙った訳ではなく、間違えて辿り着くという奇跡。
もしも、ここから遊歩道を歩くと、10kmほどの登山になるそうです。
文明の利器、ロープウェイ。
遊歩道と山の反対側に乗り場が。
太龍寺は険しい山の山頂にあり、今はこれでスイッと。
子供か。
だって超高くて、絶景だったんですもの。
これに乗れるから太龍寺を選ぶっていうね。
ほら。めっちゃ急上昇。
21番「太龍寺」。山城のようなお寺だった。
本堂。南無。
ロープウェイに乗り遅れると貴重な時間を消費してしまうため、
急ぎ足で参拝し、乗って来た車両ですぐさま山を下りる。
「迷った上にロープウェイで、結構時間がかかったな」
「随時端折るとして、次は24番最御崎寺か」
「が、この川沿いの山道を抜けなきゃどうしようもないんだな」
「だって無いもん。他の道が」
「ちょっとナビ見せろ。…マジだな」
「この先はダムみたいだ」
「ダムだと!寄れ!」
「…出たよ。ダムカード・コレクター」
これね。
こんなん。
で、これ。
「うむ。思いがけず、四国のダムカードが手に入るとは」
「満足しましたか」
「否、この上流すぐに、もう一つあると情報を得た」
「…まじか」
「ダメなんだぞ、寄り道は。我々には時間がないんだから」
「分かってるじゃないか」
「ダメなんだが、すぐそこなんだ」
「…。」
「今工事中らしくてな。工事中のダムカードはかなりのレアだ」
「…ダメなんだよな」
「ああダメだ。ダメだが、レアだ」
「…。」
「もらったら、すぐに次の目的地に向かう」
「お前…ダメだな」
はい。
はいはい。
ロープウェイで、はしゃぐ奴。
ダムカードで、はしゃぐ奴。
悟りは遠いなぁ。
南無。