先日、たまたまBSを見ていたら、

映画『グラン・ブルー』が始まった。


リュック・ベッソン監督の名が、世に知れ渡った作品。

ジャン・レノが一躍有名になった作品。


88年、公開時は世界中で大変な人気だったらしい。

僕は、92年に友人に教えてもらって、はまった。



シニカルな言い方をすれば、

海やイルカを、スタイリッシュなトレンドにしたのも、

この映画じゃないかと思う。


「森林って癒されるよね~」とか、

「海って心が洗われるし~」とか、

「私の前世は、イルカなの~」とか、

そういう人が増えたのが、この頃からのような気がする。


「虫という虫は大嫌い!」とか、

「魚をサバくなんて気持ち悪い!」とか、

「泥砂や汗で汚れるのは、不潔!」とか、

「動物園はクサいから嫌い!」とか、

「日焼けなんて、もってのほか!」とかとか、

そういう人が増えたのも、この頃からのような気がする。

・・・人口はそんなに変わってないのに。


快や不快は、人ぞれぞれ。

ただ僕は、体感こそが本質に迫る近道だと思うから、

バーチャルな美しさだけでトキメくのは、いまいち好きじゃない。



グラン・ブルーの映像の美しさは、抜きん出ている。

海もイルカも人も、美しさのエッセンスの塊だ。

ベッソンの抽出力と凝縮力は、本当に素晴らしい。


もちろん、ストーリーも素晴らしい。

友情。愛情。挑戦。葛藤。

出会いと別れの喜びや悲しみを、見事に描いている。



外に出れば、肌を焦がす日差しと滲む汗を感じる。

海に入れば、潮の匂いやベタつきを感じる。

水族館でイルカを観察すれば、鋭い牙を見ることができる。

生活していれば、人の愚かさや醜さを目の当たりにする。


僕が感じる不快と不安に満ちた世界。


にも関わらず、ベッソンは美しさを抽出し、

喜びを凝縮して、世界の素晴らしさを伝えようとしている。


かなわないなぁ、と思う。


理解したいじゃないか。

彼に見えている、素晴らしい世界を。

ただ不快というだけで、

簡単に素敵なものを捨ててしまう人になりたくないじゃないか。

だって、僕にも少しは、その美しさが見えているんだもの。

と思う。



しかしながら、本当にかなわないのが、

主人公ジャック・マイヨール役の

ジャン=マルク・バールの瞳の美しさだ。


僕が女性なら、あんな瞳の持ち主に出会ったら、

失神どころか、どんな犯罪をも犯すね(笑)。


演技じゃないもの。そのものが美しいんだもの。

それに演技と役がミックスされるんだよ。

かなわないなぁ。



カタチではなく、生き方の現われとして、

ジャック・マイヨールの瞳を手に入れたいと願いつつ、

恋人役のロザンナ・アークエットの

スリムなのにグラマーな肢体に、やっぱり釘付けになりました・・・


音楽同様、映画も懐かしむものを見てしまう。

いかんな。未来へ進もう。