先月6月27~28日にかけて「壺中100年の会in新潟」に参加、
「あてま高原リゾート ベルナティオ」と「株式会社きものブレイン」を訪問した。
私は新潟は全くの来たことのない未踏の地だったので楽しみしていたが、新たな発見があった意義深いベンチマークツアーであった。
まずは、「あてま高原リゾート ベルナティオ」の歴史・概要について紹介してみよう。

ここは1996年10月に第3セクターとして設立、主要な株主は「東京電力」や「鹿島建設」で、社長は主にこの2社から何年かの期間やってきて就任する。
よくあるパターンだが第3セクター下の体制では、経営に本腰が入らず、ホテルの客室稼働率は2013年は43パーセントほどであったが、翌年佐野智之総支配人が着任し、
2018年には77パーセントにまで上昇、売り上げもV字回復、
高い評価を受ける宿泊施設に授与される「楽天トラベルアワード」を2017年から7年連続受賞、
「朝ごはんフェスティバル2019」では日本一を獲得と素晴らしい実績をあげているホテルなのだ。
また離職率5.1パーセントとホテル業界では非常に低いことから分かるように(ホテル業界の離職率は平均26パーセントである)、人を大切にしていることが見て取れる。
佐野さんは現在は上席執行役員 統括総支配人 兼 事業統括室室長という肩書なのだが、ホテル業界を渡り歩き、行った先々で業績を改善してきた。
まさにプロ中のプロとった方がどのような考えでマネージメントしてきたのか、まずは佐野さんの講話からベンチマークはスタートした。
以下は、佐野さんの講話から抜き出してみる。                     ☆「私たちはお客様を作らない、関係者を作るようにしている。
今日は皆さんにベルナティオの営業マンになって帰って欲しい。」
この佐野さんの第一声に驚かされた。
「我々は自分たちはサービス業だとは思っていない。
ホスピタリティー産業と定義している。
サービスの語源は、サーバント(召使)やスレーブ(奴隷)で、
これは主従の一方的な関係なのに対し、ホスピスというのは「歓待する」という意味で、やっているほうも楽しくウキウキするというものだ。」
初めてきいた見解だが、さらに違うたとえ話で
「自己肯定感の低いスタッフは作業をしている。
お客様をさばくとういう感覚だ。
これでは、お客様の欲求にこたえ続けなければならなくなり、
お客様がモンスター化する。スタッフも疲弊する。
自己肯定感の高いスタッフは仕事をしていて、お客様との関係性の構築を考えている。
その関係性とは仲間や友人のようなもので、褒められ共感しあうという一方的ではないもので、仕事をしていて楽しくなるというものだ。

私は以前ネッツトヨタ南国の横田さんの講話で
「顧客満足度と追求してはならない。顧客幸福度を追求しなければならない」
というお話をされていて共感はしたが、具体的にお客様の幸福度をあげるとはどうゆう風にすればいいのだろうと、
そこの疑問が解決されていなかった。
(あるいは横田さんはその時話されていたのかもしれないが、
私自身は分かっていなかった)
今回の佐野さんの話でここがすっきりクリアになった。
要するに、友人や仲のいい家族や相思相愛の恋人のような気持ちでお客様に接するというわけだ。
そのような仲だとお客様に興味が湧き、いかにお客様を喜ばせてあげようという気持ちが自然と相手に伝わり、
感謝もされる、そのような関係だとお客様も無茶を言わないので、働いていて気持ちがいいのである。                     ☆採用は基本的に新卒採用だが、それは入社時に企業理念を徹底的に叩き込むことが容易なため
、採用後一年間は、ホテルの全ての仕事を体験してもらう。
マルチタスクに対応してもらわなければならないので。
一年間これを行って正社員になる。
ものすごく丁寧に手間暇かけて若い子を育てている。
まあ、仕事を進める上で大切な「あり方」を身につけてもらう。
人柄がすぐれないと人がついてこない、組織が作れない。
仕事は見て覚えろだの現場任せにはしない、
所属長以下現場の先輩が丁寧に教える。
無論、能力の劣っている子はいるのだが、その子の視点でできたらほめてあげる。
新人には『同期は仲間であり、ライバルではない』と伝えてある。                     










☆佐野さんの講話の後は、「バックヤードツアー」と称する
ホテルの厨房やフロントの裏、設備、事務など大半の場所に入り、社員の方々と語り合った。
佐野さんは「バックヤードでの社員の表情が笑顔にあふれ、やる気に満ち溢れていたら、顧客に対しても社員はやさしい気持ちで接することができる」という持論を持つ。
多くの箇所で用具器具はきれいに整理され、社員さんは生き生きと働いていた。
佐野さんは「おもてなしとはバックヤードにこそ真実がある。
おもたても裏もない、だから『おもてなし』」なのだと。
翌日の比較的入社年次が最近の若手社員も交えてのクロストークでも、「忙しい時期で疲労がたまっていて、『今日は仕事に行きたくない』と思う時もあるが、
みんなと一緒に仕事をしていると楽しくなる」だの、
「ダメ出しされる時も、先輩は『○○だったら、きっとやれるよ』と言った言葉を添えてくれる。
次はうまくやろうという気になる」とか、」
明るく生きいきと仕事に取り組んでいる様子がうかがわれた。
                             目の前に広がる美しいゴルフコースの芝生を前に(冬は豪雪地帯ゆえにスノーランドとなる)、
1日目の研修が終わった後の懇親会、二日目の朝食の料理やホスピタリティーの内容の素晴らしさは、
とても書ききれる分量がので割愛するが、さすがであった。
多くの学びにあったホテルベルナティオの滞在であったが、一つだけ書き記しておくと、
このホテルは地元の小学生に「郷土の誇り」として描いてくれた絵があり、これは館内に飾ってあったが、
この絵を見た社員がどれだけ励みになり明日への活力となっただろう。
こんなことをしてもらえる企業が日本中にどれだけあるだろうか。

「業績をあげる」ことを目指すのではなく「すべてのステークホルダーと幸せな関係を作る」
ことを主眼に活動してきた企業が結果的に好業績をあげている現実を見ることが出来た、
素晴らしいベルナティオでのひと時だった。