3月11日(月)千葉県下で「とりの権助」や「焼肉権助」など居酒屋7店舗を運営する有限会社ライト・ライズさんの
アルバイト卒業式があり、私もゲストで見学させていただいた。
まず第1部は「白井コミュニティーセンター」での卒業式、
第2部は全ての店舗休業して従業員全員参加して「焼肉権助 牧の原モア店」での懇親会という2部構成であった。

千葉県白井市にある、北総鉄道北総線の「白井駅」から徒歩30分くらい歩いて第一部の会場「白井コミュニティーセンター」に着く。
真夏や雨の日なら歩くのには辛い時間だが、空気はひんやりしていたが時折薄日も射し、最後はうっすら汗ばんでいたほどで心地よい疲労感を感じた。
道中、田んぼや畑は荒れ気味だが、梨畑が何か所かありそこはきれいに整備されている。
さすが産地だけあって、いいお金になって農家さんも力が入るのだろうな、などと思った。

早くにつきすぎたため、所在投げに立っていると寺本社長の奥さんが相手をしてくれてしばらく歓談、
しばらくするとシェアードバリューコーポレーション株式会社 小林先生やリクルートの山田さんも、到着、
卒業式会場のゲスト席にて本番を待つ。

ご存じない方のために、有限会社ライト・ライズの説明を少ししておこう。
こちらの会社の寺本社長は、小林先生が開いている人本経営実践講座の第一期生でもある。
この会社は従業員を大切にするからか、とにかく離職者がいない。
だから採用にかかる経費がゼロ、学生は卒業するまでに仲間を呼ぶのでこれも途切れない。
ここで働くと人間力が磨かれるから、就職も引く手あまたなのだから。
毎年何人かはアルバイトから社員になることを希望する者がいる。
あるいは大手企業に就職しながら、また戻ってここの社員になりたいと言う人もいる。
詳しくは私が令和4年の6月にこちらをベンチマークした時の模様をレポートした下記の文章をどうぞ。
https://ameblo.jp/sken3939/entry-12749532699.html

最初にあいさつに立った寺本社長の言葉に私は、「さすが」とうなされた。
通常、こうゆう時卒業生に送る言葉は、
今まで働いてくれたことに対するねぎらいと、
若さゆえの無限の可能性に対する称賛と社会の厳しさを諭す、
といったところだろうが、寺本社長は
「卒業した後も店に顔を出してほしい、
人生がうまくいっている時は顔を出しやすいだろう、
しかし、うまくいってない時、むしろ人生はそんなときの方が多い、
そうゆう時こそ顔を出してほしい、
そしてかつての仲間に仲間に悩みを打ち明け、
解決策を相談して欲しいんだ」と。
寺本社長は卒業した後も彼ら彼女らを、ずっと愛おしく思っているのだ。
疑似家族、いや下手をすれば家族以上に大事に思っているかもしれない。
結果として、卒業した後も彼ら彼女らは地元に帰ってきた時はお店に寄り、リピーターであり続ける。
権助のファンとなって支え続けてくれる。
しかし、それが可能なのは、社内ミーティング一つとっても、自分がどんな意見を言っても絶対に否定されない、
各社員の自由闊達な意見の表明が社内文化として定着しているからこそなのだ。
仕事がうまくいってない、理不尽な目に合っている、
そんなときに他人の成功を妬み、足を引っ張り、同調圧力で変わり者を排除するような社内風土だと、
とても店に寄って、心を休めるきにはならないだろう。

卒業式の来賓の中に寺本社長の中学時代の恩師の方も招かれていて、
中学時代寺本社長が呼び出されて
「お前なあ、何事も本気でやらないとつまらないぞ」
と言われて開眼したエピソードを話していたが、
冷笑主義が蔓延する昨今だけに、大変興味深く聞いた。
この卒業式で送る側、送られる側どちらも涙涙で答辞や送辞を読み上げるのだが、
その中で「『本気で取り組め』と言ってくれた」というコメントが多々見られた。
寺本社長の言葉が従業員にしっかりと伝わっていることは素晴らしいことだが、
逆に言えば今の世の中で『本気で取り組む』ことが、いかに稀少になっているかということではないか。
立身出世と自己承認欲求に駆られた上司に到達目標を示されても、
それが最終的に自分のスキルの向上や自信の構築に繋がるとしても、
素直に『本気で取り組む』気持ちになれるだろうか。
彼らがこの場で涙を流せているのは、
 「食を通じて人の幸せを追求する経営理念を2015年に掲げ今日まで挑戦を続けて参りました。
人の幸せとはいつも支えてくださっている地元のお客様にお腹いっぱい幸せになっていただく事はもちろんですが
私は働いているスタッフの幸せも同じくらい大切だと考えています」
という寺本社長の思いに強く共感しているからであり、
会社が嘘偽りなく経営理念に忠実に進んでいるという確信が持てているからだろう。

一次会の卒業式が終わり、2次会会場の「焼肉権助 牧の原モア店」まで、
寺本社長と奥さんに自動車で送っていただき、車中会話を交わすというありがたい機会に恵まれた。
「うちの店で働いて卒業して就職しても、世間一般の会社は厳しいし理不尽なものです。
そういったことを学ばせるためにも、今より少し厳しくしてもいいかなとも思ってるんですけどね。」
寺本社長はそのようなことを言われたが、私は常々、人本経営のような人を大切にする会社に就職した大人はいい、
そのような会社は長く永続する可能性が高いので、一生を幸せに過ごせる確率は高いだろう。
しかし、ライトライズさんで働くアルバイト生たちは、社会に出るまでの助走期間だ。
社会の多くの会社は、まだまだ人本経営とは真逆の経営をしているところは多い、
そのような社会の実像に触れた時、彼らがせっかく学んできたことが無駄になるかもと思っていた。
当然、寺本社長もそのような場面に何度も遭遇してきたのだろう、
「まあ、就職活動では人を大切にする社風の会社を選んで入社すべきですよね」
などと別に回答を求められている訳ではないが、私は口にした。
「そんなこんなで結局社会人になって就職した会社に失望してまた働かせてくれと戻ってくる者もいる。
それはそれで、こっちは全然OKですけどね。」
と寺本社長は話した、そんな会話を交わしているうちに2次会会場に到着した。

2次会はかつては各店の店長として実績をあげ、今は会社組織の中心で働いている幹部たちの如才ない進行で進んでいく
海上のあちこちで歓声と咆哮があがり、雰囲気はいやが上にも盛り上がる。
これを見てもしかすると、カルト的な異様さを感じる人がいるかもしれない。
しかし、ビジネス書の名著「ビジョナリーカンパニー」の中にある
【ビジョナリー・カンパニーの8つの生存の法則】にも5番目に「カルトのような文化」とあるので、
そのこと自体は必ずしも否定的に感じることはないだろう。
何より、カルト的な「インチキ宗教」や「マルチ商法」は、
幸せになれるのは、組織のトップと上層部とうまくいけば自分だけ、
周囲の人間関係は滅茶苦茶になり、当然家族も崩壊する。
だが、ライトライズさんは「関わる人の全ての幸せ」を企業理念している。
来店してくれるお客様は元より、いやそれ以上に働いてくれる従業員、
仕入れ先などの協力業者さんも幸せになって欲しいと願っている。
接客で鍛えられているせいか、すれ違う従業員は皆、言葉遣い、挨拶が気持ちいい、
おそらくマニュアル通りの接客教育はしてないのだろうなと思った。
幹部の方たちはおそらく20代か30代前半だと思うが、
変に擦れずにかつて青臭かった思いは、経験と自信でより成熟された人格を形成されている、
そんな印象を持った。
若いアルバイト生が憧れる素敵な大人というものだな、これが。
翌日始発の飛行機で帰らなければならなかったため、中座したのが残念だったが、楽しい時間を過ごさせてもらった。
寺本社長はじめ、(有)ライト・ライズの従業員の皆さん、本当にありがとうございました。

この会社は先駆者としての苦悩をしょっているのかもしれない。
せっかく育てた若い子たちが、世間で理不尽な目にあっても、
アジール(避難所)として一時的にでも受け入れてあげればいい。
ここで働く子供たちは親孝行で世間で言う有名企業に入社して、
親御さんを喜ばせたいと思っているかもしれないが、
就職の基準は知名度や待遇だけでなく、社風が自分に合っているかどうかだということを就職の第1のポイントにした方がいい。
そして以前ネットの記事で見たのだが、若い社員は飲食業だけでなく、
人材教育や農業などの事業を立ち上げたいという希望を持っている人もいるということで、
どんどん新分野にも進出して働き手の受け皿を増やしてほしい、
そんな風に思った。
最も寺本社長は今さらなことで、釈迦に説法だろうが。