11月10日(金)「壺中100年の会in九州・福岡」で、愛と感謝の美容室と言われる
北九州の『バグジー』へベンチマークツアーに参加した。
ご存じない方のために説明しておくと、バグジーの久保社長は若き日に海外で修業して、帰国後は北九州でカリスマ美容師





として活躍、
当時は成果主義・拡大主義・実力主義を標榜し社員にはハッパをかけていたが、だんだん社内の雰囲気は悪化し、多くの社員が退職していった。
だが、あることをきっかけに自分の言動を反省し、「人の辞めないお店」を作ることを決意し、
今や全国で数多くの講演活動やインストラクター指導を手掛ける名経営者となった。
最初はこの会社の研修施設である「バグジーアカデミー」で久保華図八社長の講話で印象に残ったものをランダムに書いておくものとする。
◎当時28歳のダウン症(5-6歳程度の知能しかない)の女の子の髪をカットしてあげたら、その時黒崎店のスタッフ全員が彼女の相手をしてあげたところ、
大層彼女は喜んで毎日遊びに来てくれるようになった。親御さんにも喜んでもらった。
しかし、ある日店が大忙しの時、誰も彼女の相手ができず、それ以来彼女は来店することはなくなった。
黒崎店のスタッフ朋子さんは、彼女宛に手紙をそれもすべて平仮名とカタカナだけで書いて来店を促した。
彼女は届いた手紙を見て狂喜乱舞し、親御さんは嬉し泣きし、紹介者の方にもお礼を伝えた。
この話はビデオ化され、大きな反響を呼び、ローソンの新浪社長から自社の教育をして欲しいとの依頼があったり、
当時は日本中を講演で駆け回った。
そんな最高の仕事をバグジーでは「天使の仕事」と呼んでいるが、
そんな事例はたくさんある。
◎社員は理念で燃えない、伝わらない、体験・事例で燃える、理念よりビジョンの方が刺さる。
マニュアルもないし、ロールプレイングもしない、OJTのみ、
マニュアル化すると皆同じようなサービスになってしまい、個性が無くなる。
優しい子を育てたい、自分がして欲しいことをお客さんにもしてあげたい、と思えるような社員を作りたい。
◎三番目に大切なことは業績、
それは社員の生活の安定のため、未来への投資を行うため。
業績が最高の時こそ、新商品の開発が必要。(青汁のキューサイがオールインワンジェルの例)
二番目に大切なことは人材育成、
宝塚のようにいつでもスターが出てくることが理想、
業績が良いことはマイナス要因、往々にして経営者が業績がいい時は、
別荘や高級外車を買ったりする、それよりは人材の育成こそ大切。
一番大切なことは風土。
社員がやりがいをもって働けているか、
お客さんの方を向いて仕事をしているか、
上司・先輩を尊敬しているか、
そんな社風を育んでいきたい。
◎かつてはやっていたが中途採用はゼロ、美容学校卒業生しか入れない、
みんな素直で教えやすい、
やたらと転職を煽るCMがあるが大嫌いだ、
人様の育てたスタッフをかっさらうような引き抜きなどしたくない。
地元から愛されることが大切、
近隣の地域の占有率を上げるようにしたい、
地元企業・団体からの専属契約などもしている。
◎多くの人は「メンタルブロック」にかかっている。
(象は生まれた時、紐をつけて不自由にしていると、紐から解き放たれても5mの範囲しか動けない)
これを打ち破らないといけない。思考は現実化してしまうので。
5億円売り上げてたら次年度を5億5千万円の売り上げ計画を立てる人が大半、
だから結局5億円で終わってしまう。
最も当社は数値化した目標は持っていない、
日本で一番素晴らしい会社を作りたい、それだけ。
自分の上りたい山をはっきりさせないと誰もついてこれない、動機の純粋性が大事、気持ちよくなれるか、何を大事にしているか。
◎ピラミッド型の組織、軍隊式のゲゼルシャフト、ここで要求されるのは「自主性」
ここでは社員に責任がないので社長任せになる。
逆ピラミッド型の組織は「主体性」が必要になる。
「当事者意識」とも言い換えられるか。英語では「Sense of Ownership」。
自分が考えて失敗し反省しないと成長しない。
責任の縮小から責任の拡大へ。
社員に仕事を任せることに尻込みしている社長は小さなことから任せたらいい。
例えば会社のトイレの飾りつけ、うまくいったら誉めて全社のトイレの飾りつけをさせたらいい。
社員を育てないと社長が死んだらその会社は終わりになる。
◎求人も社長が面接して採用しているようではダメ。
自分が面接して採用した者は皆辞めてしまった。
スタッフが面接して採用すると一緒に仕事をしたい人を採るので定着しやすい。
辞めたら採用した者の責任になるので一生懸命フォローする。
一辺に任せるのが無理なら、面接時に若いスタッフも同席させればいい。
責任がないと一生懸命にならない。
社員旅行でもみんなで決めると盛り上がる。
ただ、社長が会議で「言いたいことを言ってみろ」などというと往々にして「圧」になる。
社員が意見を言わない。
テーマを決めて社員にワークショップさせると意見を言うようになる。
◎いい経営者かどうかは部下に好かれているかどうか、
社員からLINEで相談来たら5行だったら5行は返す。
既読でも返事もしないのは最悪、
大変だけど経営者はそれをしなければいかない。
人は自分が大事にしているものを大事にしてくれる人が好き。
◎自分を磨くためには本を読め。
お勉強だけで実践しないと頭でっかちになって現実とのギャップに苦しむことになるが、
それとこれとは話が違う。
忙しい人は「その日」だけ決めて何も予定は入れない、読書の日を作るようにする。
知識をつけないと変化の激しい今の世の中で何が正しいのかを判断できない。
この後で、「バグジー中間店」へ移動し、昼食(何とレストラン・カフェも併設し、美容室に来たお客様で希望ならお食事して帰ってもらうようにしている)を取り、
久保社長自ら店内を案内してただいた。
朝食はあっさりして胃に優しく美味しかったが、店内を巡っている時も社長自らスタッフに気さくに声をかけ、
スタッフの方々も笑顔で返していて、両者ともにいい関係であることが一目瞭然だった。
見学の最後加者一人一人に、それぞれ色違いに正月の「しめ飾り」をプレゼントしてくれた。
これは予想もしていなかったことで、まさにサプライズ、感動の接客の片りんを垣間見せてもらった。
今回のベンチマークで感じたこと。
美容業界というのは大変で松山のような地方都市でも、
人口の多い地域だとコンビニの数より美容室の数の方が多いくらいで、
まさに過当競争の世界である。
そんな中で生き残っていくには、他社とは違う特色を出していかなくてはいけないということで、
中間店も何年か前に改装したそうだが、床は溶岩石、壁は藁入りの珪藻土、天井は結構いい素材の木材を使っているそうで、
経費も半端ないものだそうだ。
久保社長は誰よりも会社の行く末を見つめて思考を巡らせている、のこれほどの人にしてと、思った。
帰りバスのバスを久保社長は見えなくなるまで見送ってくれたが、
スタッフがお客さんのお帰りをお見送りするときも、同じく見えなくなるまでするという、
「また来てくださいね」ではなく「良いことがありますように、良い日でありますように」心を込めて。
今回のベンチマーク、久保社長は「時間が足りないね」ということで言い足りないことが多いようであったが、
いや、十分に濃密で素晴らしいひと時でした、久保社長とバグジーのスタッフの皆さん、ありがとうございました。