人本経営実践講座の一部でもあり、壺中100年の会のベンチマークとして7月3日4日に長野県へ行った。その時のことをレポートしてみよう。
3日は東京駅10時集合で、少し早めに着いたので「皇居外苑」の一角にあるの建武中興の忠臣であった楠木正成公(楠公)の銅像を見に行く。
随分、大きく勇壮なものだったが、上野公園の西郷隆盛像、靖國神社の大村益次郎像と共に「東京の三大銅像」の一つとして数えられているそうである。
愛媛県の別子銅山200年記念事業として献納されたものだそうで、愛媛にゆかりがあるそうだ。
田舎者からすると皇居の周りは随分色んなものがあって面白い、退屈しない。
さて、本題に戻すとこのツアー最初の訪問先は、株式会社西軽精機。
軽井沢に近い佐久市の会社。
NC複合自動旋盤による、医療機器、産業用機器部品の製造 を得意としていて、ニッチな分野に強みを持つという。
ネットで事前に会社案内の動画を公開されていたのを見ていて、社長は中々ユニークな方だという印象でお会いするのは楽しみだった。
上原大輔社長は事業継承した2代目社長で、当初は業績を上げることこそ社長の使命と心得ていて、
モーレツに働いていたが社員の離職率は多い時では20パーセントを超えていたという。
そんな折、坂本光司先生の「日本でいちばん大切にしたい会社」に出合いいかに自分の経営が間違っていたのかに気づき、
社員を大切にする経営へと舵を切った。
まずは手始めに2012年には全社員面談を行ったが、さすがにその時はへこみ40度くらい熱を出したという。
毎年どのような取り組みを行ったかスクリーンに映しながら説明したいただいたが、中々分かりやすかった。
2014年には社員の前で「誰も辞めさせない、辞めたいような会社にしない」と社長は宣言し、
2015年には技術検討会を開始し「全員がエンジニアで工場長」を目指している。
21021年には社員全員をがん保険に加入させ、有給消化率を80パーセントを目指した。
その結果、売り上げは2012年に比較して2021年は1.59倍、経常利益は2022年は2.57倍になったという。
私が何点か上原社長のお話で印象に残った点は、
@何かやらないと業績は下がる。現状で満足せず次々と色々な施策を打ち出していった
@これからの経営はありがとうが大事、ドパーミングが出過ぎると怒る、これは悪気はないのだが、ありがとうが足りないのだ
@幸せ経営を目指しているが、究極の幸せとは社員が主体性を存分に発揮できることではないか、
だから有給休暇は社長は理由は一切問わない、いつ休むか決めるのは自己決定権。
定年の60歳から70歳と幅広く設定しているが、いたいから会社にいる、辞めるのは個人の自由と言うのが理想では。
@給料は高いほど社員は幸せになれる。他社に出来ない仕事やっているから値決めもこちらが主導権とれる。
高い仕事はそれだけ面倒くさいが、従業員の待遇がいいと、面倒くさい仕事もやってくれる。
@採用基準は明確にはない、それよりも絶対面倒を見てあげるという覚悟の方が大切なのではないか。
評価制度そのものは生産性ゼロ、他社より10パーセント給料が良ければ評価制度いらないのでは。
@有休消化率95パーセントはお互い様だから急に休んでも対処できる。全員が「工場長」だからみんな共通のスキルを持ち最小限のダメージで済むのでは。効率化を優先するなら分業がいいだろう。しかし他社でそれをやって退職者が続出した。
基準が明確でなくていいの部分ははっとさせられた。昨年の伊那食品訪問時からずっと頭にひっかかっていた点を上原社長も指摘されたのだから。
上原社長は明るく冗談好きなバイタリティー旺盛な方だったが、元々バイク雑誌の編集者だったそうで、
いわゆる職人気質とも違ったものごとを俯瞰して見られるタイプのように見受けられた。
昨年の伊那食品工業での気づきと疑問を解くヒントを得られそうな貴重なベンチマークだった。
それとこちらの会社は工場内の床が木で、柔らかくて疲れにくい、保温性があるとか社員が掃除に気を配るようになるといったメリットがあるそうだが、その特性が注目され何とあのスピッツのアルバム「ひみつスタジオ」のジャケットにも採用されたという。写真の一枚はその時のもの。
会長・社長・社員一同大喜びだったそうで、蛇足にはなるが付け加えておく。