2023壺中100年の会in愛媛・香川の2社目のベンチマーク企業は、居酒屋「株式会社 夢とありがとう」。
社長の秋川さんとは、昨年度の人本経営実践講座の各講座終了後の懇親会で何度か利用させてもらって、
その際、会話を交わしたこともあり、狭い松山での経営者仲間の会合で会う機会もあったので、面識はあったのだが、
まともに仕事や経営の話などしたことはなかった。
とにかく元気のいい、テンションの高い若者だというイメージだった。
まず、夕方から繁華街にある貸し会議室2番町ホールにて秋川社長の講話。
高校は野球の名門今治西高校で野球漬けの毎日、
卒業後は松山大学で居酒屋でアルバイトをしてお客さんに喜んでもらう体験をして、
以前は将来は教師になる夢を持っていたそうだが、店を持ちたいと方向転換、
東京で居酒屋業の神様と呼ばれる石井誠二氏の会社での修行を手始めに、
様々な経験を積んで2010年に「夢の家本店」をオープンさせ、
現在は松山市内歩いて移動できる距離に、居酒屋・バルを7店舗出店している。
秋川社長の話の中から印象に残った点を幾つか。
☆この会社はスタートした時から、「人を大切にする」ことは当たり前のことだった。
前の世代の人がレールを敷いてくれていたので、すんなり自分でその道に乗ることができた。
その意味では苦労された先輩経営者には感謝している。
☆共有スペースがないため、部下の教育方法の一つとして赤本レポートというものを毎月提出してもらう。
店長が毎月添削して社員に返している。
お互い大変な手間だと思うのだが、最初は一行くらいしか埋めることができなかった社員が、
ぎっしりと文章を書くようになってくると成長が感じられ店長はてやりがいが感じられるし、
店長も社員にびっしりとレポートを添削して返事を書いてくれると、ちゃんと読んでくれているのだなと励みになるだろう。
☆一般的には、①共通の目的(理念・ビジョン)を掲げ、②協働の意思(助け合いの精神・チームワーク)を確認することによって、③コミュニケーション(人間関係)が良くなるとされる。
しかし、秋川社長的には、③ →② →①の方がしっくりきたそうだ。
そもそも嫌いな人同士なら話もしたくないというのが、普通だろう。
「いい会社を作ろう」とは、ルールを作るのではなく、「いい社風を作ろう」だと理解している。
社長講話の後で、社員4人を交えてのクロストークとなったが、
とにかく驚いたのは、赤本と言う名の毎年更新される経営方針書だ。
会社の理念や方針、社員の心構えなど非常に細かく書かれてあるのだが、
平易な言葉で実に分かりやすく、しかしレベルを下げているというのでもない。
「考え抜かれた言語化」とでも言うべきか。
とにかく衝撃的な内容だった。
こののちは、懇親会を系列店舗「夢響」で行ったが、
料理の創作さ、スタッフの接客手法が決してマニュアル道理のものではない、
スタッフの創意工夫のものだとはすぐみてとれた。
懇親会の後は、秋川社長とさらにもう一軒系列店舗に行って、
そこでも楽しく過ごし社長自らお見送りもしていただいたが、
これも「たとえ不満があってもあっても笑顔でありがとうと言って席を立つお客さんも多い、
しかしお見送りをした際の雰囲気や帰り道の背中にその答えが存在している」
からだと経営方針書にお見送りの重要さが書かれている。
この本を見せていただいたことは、私にとってこのベンチマークツアーの最上の収穫の一つだった。