7月4日はヒグチ鋼管の見学が終わった後、懇親会・宿泊場所であった道頓堀ホテル(株式会社 王宮)へ。
私は不勉強にもこの会社のことはよく知らず、今回のベンチマーク間近に経営者の知人に、
「え、道頓堀ホテル!」といった反応が返ってきました。
理念経営的には結構有名な会社なのですね。
 
コロナ前の会社の取り組み、経営者の橋本明元専務の横顔など簡単にまとめてみますと、
祖父が中国から日本に渡ってきて苦労して、大阪の地にホテルを興した。
しかし、混血であるせいで小さい時は嫌な思い出が多かったが、
社会人2年目に祖父の故郷である揚州を家族で訪れるとあまりに貧しい風景がそこにあり、
祖父の苦労が忍ばれ、「祖父の作ったこの会社を潰してはいけない」と心底思うようになり、
自分は「世界と日本の架け橋になるために生まれてきたんだ」と気付いたということです。
当時は大手チェーンのビジネスホテルが進出してきた頃で、価格競争に道頓堀ホテルも苦しんできました。
そこで「誰に対してどのような価値を提供するのか」
そこからインバウンドに特化した「日本の文化とおもてなしを体現できるホテル」という
ブランドアイデンティティーを掲げたわけですが、当時は社員が辞めていくことが常態化していて、
いくら戦略を立てても人がついてこなかった。
そこで良い社風があってこそ、戦略も生きてくるとの認識が橋本さんの中に芽生えてきたわけです。
社風を良くするにはどうしたらいいのか?社員が仕事にやりがいを感じるようでなければいけない。
ではやりがいとはどうゆうものなのか?橋本さん曰く
1.自分の意見を聞いてくれる土壌が会社にあるかどうか?
2.自分の成長を実感できるかどうか?
3.会社が自分のことを大切にしてくれているという実感があるかどうか?
4.自分のしている仕事が社会の役に立っているという実感(会社の使命が明確にあるかどうか)
それぞれの細かい実例(社員への権限移譲、勉強会・研修制度・福利厚生)につては省略します。
 
私が興味を引かれたのは橋本さんが2020年に沖縄にホテルを開業した際、
最初は規模拡大をするつもりはなかったので、ホテルオーナーが運営会社を探していたので、
話を持ってこられた時は断ったのですが、現地に行ってみると非常に魅力的な立地だった、
しかし、「何とためにやるのか」という意味を考え、悩み続けていたところ、現地で戦闘機が轟音で飛んでいる。
自分たちが作ったホテルで海外の方に来ていただいて沖縄を好きになって帰ってもらえたら、
世界平和のお役に立てるかもしれない、これなら命を賭けてできると思い、
その考えを何名かの社員に伝えたところ、社員の賛同を得たので、開業を決断したということです。
「経営理念の重要さ」「戦略より先に社風を良くすることが大切」
「業界の固定概念を覆す戦略」などを今回のベンチマークで習うのが通例でしょう。
コロナ禍の前ならば。
しかし、道頓堀ホテルはインバウンドに特化したホテル業というまさにコロナで最も大きな被害を受けた業界であって、
苦境下でどのようなことを考えどんな実践をしていったのかを聞けた、
 
これまた得難い体験となりました。
コロナ禍で橋本さんやスタッフが考え行動してきたこと
1.攻めの姿勢を忘れない
2.将来を見据えた行動
3.社内研修の実施
4.地域貢献活動
1.についてはFACEBOOKで通販を始めたところ、3,300名もの人が買ってくれた、
その一人一人に橋本さんは手紙を書いたそうです。
また、ホテル前で弁当販売を始めて、これが収益にどれだけ寄与するかは疑問だけど、
従業員は働きたいという願望を持っており、経営者は働く場所を提供しなければという思い出始めたそうです。
2.については顕微鏡と望遠鏡の視点を持つこと。(ただ、私は詳しい話の中身は忘却しました)下欄コメントで関さんが、私が忘れた部分を補足してくれましたので、書き足しておきます。内定者の家庭訪問でカンボジアに行き、その家族に絶大な歓迎を受けて、親御さんの不安に思い至った話、古くなっていた客室や廊下、階段のリニューアルをこの機会だからこそ、行った話、従来の中華料理だけでなく、和食宴会もやりだしたなどでした。
3.これは普段他社との差別化である天然自然調味料のより深い勉強やトーイックへの挑戦など。
他にも幹部社員とのクレド合宿、行動指針に副文を作成した、これらは先月訪問した居酒屋のライトライズも、
用語や理念のすり合わせと似たところがありますね。
4.ホテル周辺のごみ拾いを社長と専務で毎朝行うようにしたそうです。
当初は誰も協力してくれなかったが、めげずにやり続けているそうです。
 
橋本さんのお話の後、新入社員の現在の仕事の取組みの話を聞いた後で、
懇親会に入ったのですがゲストに天彦産業の樋口社長も参加され、
大いに盛り上がりました。
閉会後もロビーで22時まで無料で出されるビールをいただき(通常ホテルのロビーは臭いを出すものはタブー、
しかし道頓堀ホテルは慣例にとらわれずお客様に喜んでもらえるのなら何でもやる)、楽しく過ごせました。
翌朝は、橋本さんが実践している朝のごみ拾いを我々参加者も体験しましたが、
大坂の繁華街に立地するせいか思ったよりたくさんゴミがあるものですね。
一番多いのがタバコの吸い殻、やってみて分かることがあるものです。
 
私がこちらで感じたことは橋本さんたちの潔さ、清々しさ、
最後に研修で紹介してくれたコロナ禍で橋本さんが感じたことを綴った文章を紹介し、拙文を終えたいと思います。
「コロナの時期に常に気を付けていたいたことがあります。
それは他責にしないことです。
政府の対応が悪いとか、誰が悪いとかをマスコミやFacebookの発信の際にも言わないと決めてました。
インバウンドが絶頂の時、私は天狗でした。
人前では社員さんのお陰でと言いながら
心の中では自分の戦略が当たったと思っていました。
今回、コロナでの日々の葛藤の中で、一番良かったことは少しは謙虚になれたことかもしれません。
明けない夜はありません。
ですが、夜にしかできないこともあります。
今は、夜にしか出来ないことを精一杯頑張ります。
夜に頑張った人ほど、夜が明けた時の喜びは更に大きいと信じ、
これからも前に進んでいきます。」
橋本専務とホテルスタッフの皆さん、素敵な学びをありがとうございました。