健康で文化的なインドア生活 -2ページ目

健康で文化的なインドア生活

テレビが友達。たまに外出して観劇。


ミュージカル『オーシャンズ11
2019年宙組公演

2011年星組、2013年花組につづく再々演。
2011年星組新人公演でダニーとラスティーを演じた真風・芹香の2人が、満を持して(?)本役として挑んだ公演。
105期初舞台生のお披露目公演でもあるという、なにかと話題性の多い公演だった(チケットも取りにくかった…)。

星組初演はDVDで、花組再演は一度だけ観劇しているので、特に花組の記憶がほぼありませんが、記憶の網を手繰り寄せて比較しつつ、感想をまとめてみたいと思います(ちょっと時差がありますが(-_-;))。

全体的に。
男役ならば出てみたい作品だろうなあと、あらためて思いました。
オーシャンズのメンバー1人1人に見せ場があり、一幕ラストのメンバー勢ぞろいの場面のカッコよさ。
男役の層が厚く、長身男役が多い、今の宙組にピッタリの作品だったのでは?

キャスト別には、うーん、なかなか全員がベストキャストとはいきませんな(個人的好みにはなりますが)。
ダニー・オーシャン(真風涼帆)
 前評判や、いろんな観劇評では絶賛という感じでしたが、期待値が高かったためか、いまひとつ萌えませんでした。似合うだろうと思っていたスーツがあまり似合っていない。ダニーの衣装は、胸元が開いているせいか、顔が大きく見え…。再々演なため、今までのダニー達の台詞回しを聞いていることもあり(比較対象があったため)、真風節がいつも以上に気になり…。今回観て思ったのは、真風さんの容姿や台詞まわしには、現代劇より時代がかったコスチュームプレイが合っているのではないかと(前2作のビジュアルはとてもよかったですし、真風節も気になりませんでしたから)。あと真風さんの演技は、ご本人の人柄か真面目さが前面に出てくるため、ちょい悪詐欺師という感じがせず、うっかり誰かの罪をかぶって逮捕されてしまったお人好しといった感じに見えました。
 個人的には、やはりダニーは柚希礼音が一番合っていたと思います。柚希さんはやはり持ち味が大きい。踊っているときには周囲まで巻き込む空気感があるというか、そのオーラがオーシャンズのリーダー、ダニーを体現していたと思います。髪型もスーツの着こなしもスタイリッシュだった。
 一度しか観ていないにもかかわらず、その色気がいまだに思い出せるほどすごかったのが、蘭寿ダニーです。花組のダニーとテスが一番夫婦というか恋人同士の関係性は出ていたように思います。

テス・オーシャン(星風まどか)
 某観劇評に、「初演の夢咲ねねに台詞まわしがそっくり」とありましたが、本当にその通りでビックリしました!普通にテスの役づくりをするとそうなるのか、初演DVDを観すぎたのか、小池先生の好みなのか、何故?!
以前のお2人はお歌がいまひとつな方々だったので、今回初めて「歌姫ディーバのテス」を観ることができました。が、ビジュアル的には…うーん…似合ってなかったですね。星風さん素顔もかわいいし、ポスターや写真をみる限りメイクもお上手で、静止画像はいいんですが、生で動いてる舞台を観ると、やはりこういう大人な役は合ってないんですよねえ(前の『異人たちのルネサンス』でも思いましたが)。衣装もいまひとつ、なんかふくよかに見えてしまうというか…。しかし最初の登場のエコプリンセスのグリーンの衣装は、かわいそうだと思いました。スリットのところにひだを入れるなんて、アイドルじゃないんですから。彼女の幼さをより目立たせてしまっていたように思います。これは衣装デザインのセンスが悪い。前作のお2人のように、シンプルなドレスでよかったのに。
 なんでもできる星風さんですが、今までのところなかなか持ち味を活かせる役に巡り合えていないように感じます。『神々の土地』のオリガのように気丈な王女タイプがいいのかなあ(観てないですが『黒い瞳』のマーシャは合っていたのでは)?真風さんの魅力が大人っぽいところだからといって、星風さんに背伸びさせる必要はないと思います。お2人には、ぜひコスチューム・プレイで若いけどしっかり者の王女と、大人の王子(王?)の歳の差カップルを演じてほしいと思います。

ラスティー・ライアン(芹香斗亜)
 今回のベスト・キャストの1人!今まで観たラスティーで一番よかったと思います。今までで一番ダニーの相棒として認識できました。涼さんの華奢さがそうみせるのか、柚希ダニーの存在感がありすぎるのか、涼ラスティーは線が細い、弱そう、ダニー1人で大丈夫なのでは?という印象でした。北翔ラスティーは安定感はあったように思うのですが、専科からの特出だったため仲間というより強力な助っ人感があったように思います。
 そして、また前髪タラリに紫スーツのチャラ男感がよかった!余裕あるラスティーでした。

テリー・ベネディクト(桜木みなと)
 いつ頃からか、抜群の安定感をみせるようになった桜木さん。テリーとしても、及第点だったと思います。欲を言えば、それ以上でもそれ以下でもなかったですが。予想を上回るテリーというわけではありませんでしたが、残念な出来でもなかった。でもそれってスゴイことでは?今後どんな役をあててもそれなりのクオリティに仕上げてくれるだろうという期待感。見た目は大空祐飛に近いけど、属性は陽性で組を明るくしてくれるいいトップスターになりそうです。このままスルスルと宙組初の生え抜きトップになるのかもしれません。
 紅さんは狂気をはらんだストーカー・テリー。ロミジュリのマキューシオもそうですが、イッちゃってる演技はうまい(どれも同じではあるけれど)。
 望海テリーは、正直あまり記憶にありません(花組は本当に1回こっきりしか観てないので)。望海さんは優等生演技というか、型にはまった演技という印象をいつも受けます。決して下手なわけではないのですが、歌がうまいためそちらに意識がいってしまうのと、やはり真面目な人柄によるものかなと。なので、観る側としてはあまり面白くありません。記憶にないのはそのせいか?はっちゃけた役をするといいのかも(観てないだけでやっておられるのかもしれませんが)。ドン・ジュアンはその意味で枠を超えていたのでよかったです。
 
ソール・ブルーム(寿つかさ)
 すみませんが、これはもう未沙のえるさん一択です!あの独特の空気感!飄々として、人を食ったような感じで、絶妙の間で、とにかく面白い!
 寿さんは、うーん…なんか全体的に不機嫌?怒ってる?と思わせる演技で、笑えませんでした。

クイーン・ダイアナ(純矢ちとせ)
 よかったです!!今回のベストキャストの1人!さすが姉さん!ふりきった役づくりですねえ(笑)。ただ、ダイアナってテリーの愛人なんですよね?そうは見えなかった(笑)。今までの白華ダイアナ、桜ダイアナは若いテスにテリーの寵愛を奪われたことにヒステリックな美女で、テリーの愛人とうなずけましたが、純矢ダイアナは…いや、私は好きです(笑)!!

フランク・カットン(澄輝さやと)
 澄輝さんのもつ正統派男役のオーラ、最近の男役に少ないノーブルな雰囲気が好きでした。最後の役はちょっとそういう雰囲気ではありませんでしたが、見せ場がある役でよかったなと。『神々の土地』の純粋な貴族役が、私的にイメージする澄輝さんにピッタリの役でした。個人的には、『王妃の館』の堅物刑事も好きでした。
 
バシャー・ター(蒼羽りく)
 澄輝さんと共に、宙組の層を厚くしてくれていた男役スター。『王妃の館』のクレヨン役で、器用な人なんだなと見ほれたのを覚えています。今回も手堅く演じておられたなと。
 
ライナス・コールドウェル(和希そら)
 今回のベストキャストの1人!一番ライナスのイメージにピッタリでした。もともとの持ち味が少年ぽいですし、元気者。偉大な父親の影から脱け出そうとジャンプするライナスに、最もハマっていたと思います。

その他で目立ったのは、やはり新人公演主演コンビでしょうか。のびのび演じる鷹翔千空、舞台映えする美貌の夢白あや!2人共出てくるとやはり目立ちました。
祝祭喜歌劇『CASANOVA
作・演出 生田大和
作曲 ドーヴ・アチア
2019年花組公演

海外の作曲家を招いて全曲書き下ろしの一本物ミュージカル。
今までに観た中では、一番よかったのではないかと思います(あくまで主観)。
(『眠らない男』は期待値が高かっただけにナポレオンの一代記で終始してドラマがない展開になんだか拍子抜けでしたし(そもそもタイトルの「眠らない男」が全くストーリーにからんでいない(-_-;))、『NEVER SAY GOODBYE』も壮大なテーマの作品でしたが社会派ドラマでひたすら暗かった印象…2作品とも高名な作曲家に書いてもらったわりには「さすが!」とか「よかった!」という感想はさして持ちませんでした。)
基本は1公演1観劇で十分の私ですが、今回は「もう1回観たいな。」と思える作品でした。

なんといっても、曲がよかった
ミュージカルって、曲がよければそれですべてOKみたいなところありますよね?
(『オペラ座の怪人』にしろ『キャッツ』にしろ、『モーツァルト!』にしろ、ストーリーはよくよく考えればちょっと「…???」なところもありますが、曲の魅力で乗り切ってる気がします。)
今回は、主題歌をはじめ耳に残りやすく覚えやすい曲が多かった。
ドーヴ・アチア氏の今までの作品『太陽王』『アーサー王伝説』よりいいのではないかと思いますし、私的には『1789』より好みです。
衣装もよかったです。現代風にちょっとアレンジされてる衣装が素敵でした。今回の仙名さんは、肩を出された衣装が多くずり落ちないか余計な心配をしてましたが(笑)、デコルテがおキレイでした。(ただ最初のシーンの民衆の衣装は…18世紀??まあ時代考証はしっかりやられてるはずなんで。)

物語は、色々ツッコミどころはあります(素直に楽しめるだけの年齢ではないので笑)。
まず最大の疑問が、百戦錬磨のカサノヴァがなぜベアトリーチェに惚れたのか?ということ。パラリス神のお告げで「運命の女性と出会う」といわれたから?プレイボーイが今までと違う恋に落ちる場合、自分の内面の魅力に相手が気づいてくれるor相手の内面に触れて惹かれるという要素が不可欠だと思いますが(『ドン・ジュアン』のように)、今回そのあたりは薄いように思いました。それなら、なまじ運命の女性という設定にせずにカサノヴァの行きずりの恋のひとつ、だけど忘れられない恋、としてサラッと終わってもよかったような。最後、ヴェネツィア総督の温情でカサノヴァは国外追放の刑で終わり、ベアトリーチェは国に残ることを選びますが、なんとなく2人の恋はこれで終わりそうな感じ。カサノヴァも彼女にこだわる理由はないし、ベアトリーチェも次の恋を見つけそうなバイタリティを持った女性に見えました。
花組はスターも多いので、全員役をつけてそれなりに見せ場をつくるのは大変そうです。苦労のあとは見えましたが、そこまでキャラは立ってなかったアヴァンチュリエの人達(脚本・演出だけではなく、役者の責任もあるとは思う)。城妃美伶さんの男装の麗人ははたして必要だったのか(新思想を表現されてたのでしょうが…それなら男女問わず数名いてもよかったような)?
ミケーレ伯爵、実はお忍びの教皇…たぶん最後『水戸黄門』よろしく異端審問官を大岡裁きしてくれるんだろうという展開は、途中で読めます。だからこそ、せっかく専科から来ていただいてるんだし、もうちょっとカサノヴァとのからみを印象に残る感じにしてほしかった。正体を隠したいあまり、ストーリーの表に出てこないよう描かれているのかもしれませんが、正体はバレてるので!もっと新思想の酒場(?)で見せ場をつくってもいいような気がしました。でないと、最後の見せ場が活きません。

ジャコモ・カサノヴァ(明日海りお)
 出てきた瞬間「お疲れ顔だなあ(-_-;)」と思いましたが、ともすれば女性の敵でもあるプレイボーイを、にじみでる人柄のよさと品の良さで美しく演じておられました。『ポーの一族』を観たとき、目が冷たいまま口だけで笑っている表情がとても怖かったのですが、もちろん今回は顔いっぱいの笑顔で、演技のうまい方なんだなとあらためて感じました。

ベアトリーチェ(仙名彩世)
 修道院を出たばかりという設定のベアトリーチェは、純真無垢で好奇心も強い女性でしょうから、本来はもう少し下級生娘役が演じた方がピッタリなんだと思いますが、仙名さんは円熟した演技力という力業でねじ伏せて、もとい演じ切っているように見えました(見た目がどうしても大人の女性なので、ところどころ違和感はありましたが)。もうちょっと大人な役で描いてあげればよかったのに。ポスターを見て、てっきりヴェネツィアの高級娼婦コルティジャーナとカサノヴァの丁々発止の恋の駆け引きの物語かと思ってました。最後には、2人真実の愛に気づく…と、あれ?こっちの方がいいんじゃないですか(笑)?

アントーニオ・コンデュルメル・ディ・ピエトロ(柚香光)
 カサノヴァに恋人を盗られた恨みゆえに、カサノヴァを追いつめる異端審問官。なおかつヴェネツィアの国政を牛耳ることも目論んでいる。悪役なんだけど、憎めないちょっとマヌケなコンデュルメルを頑張って演じてたと思います。表情もかなり頑張っていた。もうちょっと客席も笑ってあげればいいのに、なぜ笑いがおこらないんだろう?ご本人が演技に必死なあまり、余裕があまり感じられないからでしょうか?役づくりの方向性は間違っていないし、努力には拍手を送りたい。肩の力が抜ければ、もっとよくなるはず。東京で一皮むけられることを応援しています。

マリノ・バルビ神父(水美舞斗)
 牢でカサノヴァと知り合い、兄貴と仰いで行動を共にすることになる神父(結構俗気がぬけない生臭坊主ですが)。柚香さんとは逆に、肩の力がぬけた演技でよかったです。明日海さんが退団された後も、彼女がいれば安心なのではないかと思わせる手堅い演技力でした。柚香さんと同期なのが惜しいですねぇ。いつか壮さんのように短期でもトップとなって報われてほしい。

ダニエラ(桜咲彩花)
 ベアトリーチェの侍女。美しく、安定した演技力、舞台にいるだけで安心感が生まれる得難い存在の娘役だとあらためて感じました。女に軽いバルビ神父としっかり者のダニエラ。カップルにすれば面白いのに(カップルじゃ…なかったですよね?)。最後のパレード、エトワールは桜咲さんで観たかったなと思いました。

ゾルチ夫人(花野じゅりあ)
 カサノヴァの恋人。コンデュルメルがカサノヴァに嫉妬する原因の美女。雰囲気に流されやすい、男にとっては本当に魔性の美女。うっかり惚れ薬を飲んでしまった大富豪コンスタンティーノ(瀬戸かずや)は、総督令嬢ベアトリーチェと結婚して地位を得るという当初の目的を忘れ、そのとき目にしたゾルチ夫人に恋をしてしまう。惚れ薬は全く飲んでいないにも関わらず、コンスタンティーノに惚れられて自分も憎からず思うゾルチ夫人。ともすれば同性に嫌われそうなこの女性を、花野さんが演じるとかわいらしく憎めない存在に。美しい女役を演じられる上級生娘役は貴重ですよね。この方も今回退団されてしまう。残念です。

コンデュルメル夫人(鳳月杏)
 夫が横恋慕するゾルチ夫人を捕え、かわりにカサノヴァを要求する夫人。それも夫の気をひくためと思われる、実は一途な女性。男役の鳳月さんが黒魔術にはまる屈折した女性を、妖しく(怪しく)演じておられた。たぶん娘役ではこの重厚感はだせなかったであろう適役。

ベネラ(音くり寿)
 黒魔術にはまるコンデュルメル夫人の使い魔的存在の黒猫?次期トップ娘役が確定した華優希や、次期トップとしての組替えなんだろうと目される舞空瞳、トップになれるタイミングは逸したと思われるも人気の高い城妃美伶など、スター娘役の多い花組にあって、今回一番おいしい役だったと思われる。容姿も愛くるしいし、歌はエトワールで証明済みのうまさ、演技もうまい、『ポーの一族』でもちょい役ながら目立っていた。なぜ路線に乗ってこないのか謎ですが、桜一花さんのような存在になってほしいと期待します。花野さんや桜咲さん退団後の花組にとっては、貴重な娘役となるのは間違いないでしょう。
 




ロマンス 『蘭陵王』 -美しすぎる武将ー
木村信司 作・演出 
2018年 梅田シアター・ドラマシティ 専科・花組公演
主演:凪七瑠海 

6世紀の中国、魏晋南北朝時代、北には異民族系の王朝である北斉と北周が、南には漢民族系の王朝である陳が存在し対立していた。蘭陵王は北斉の皇族、高長恭の王号。父は東魏の重臣、高澄。その弟、高洋が東魏を倒し、北斉を建国した。その生涯はあまりわかっておらず、美貌の武将で仮面をつけて戦ったことから雅楽の演目『蘭陵王』ができたこと、最後は皇帝に疎まれて賜死されたことぐらいである。
美貌をもつ悲劇の武将といえばドラマになりそうなもので、少し前にはイケメン俳優ウィリアム=フォン主演の中国ドラマ『蘭陵王』が日本でも放映され、楽しく視た。生涯自体がほぼ不明なので、ドラマもほぼフィクション、最後は賜死を乗り越えてハッピーエンドに終わっていた(ヒロインが天女という設定で周辺の王族が彼女を奪い合い、汚水を清水に変えたりして人心を掌握していくエピソードは漫画『王家の紋章』そっくりで、パクリではないかと思ったけど…)。最近はまた『蘭陵王妃』というドラマも制作されているようなので、こちらもみてみたい。

と、話はそれたが、今回宝塚歌劇でも『蘭陵王』を上演するということで、どのようにフィクションを史実と結びつけるか楽しみに観に行った。
蘭陵王(凪七瑠海)の母(京三紗、語り部として舞台のナレーターを務める)が身分が低かったことから、妃に疎まれ、蘭陵王は生まれてすぐに捨てられたという設定。その美貌で村の長者や盗賊に稚児として拾われて育つ。盗賊退治に来た北斉軍の将軍段韶舞月 なぎさ)によって、生まれたときから首にかけていた首飾り、背中の入れ墨(皇族にしかない「尽忠報国」の文字、宋の武将 岳飛?)によって皇族と判明し皇宮に戻る。その後武術の鍛錬に励み、初陣で勝利を飾る。褒美に皇帝(武成帝でしょう。蘭陵王の叔父にあたる。中国ドラマ『後宮の涙』ではヒロイン陸貞の相手役、高湛で有名。)から蘭陵の領地と20人の美女を賜るが、洛妃音くり寿)のみを選ぶ。洛妃が周のスパイだと気づいたからだが、生きるために稚児として間者として過ごすしかなかった2人の境遇には共通点があり、やがて2人はひかれあっていく。
洛陽が北周軍に包囲されると、軍を3つに分け、蘭陵王は精鋭500騎を従えて包囲を突破し、城門を開く。この際、その美貌で敵兵をたじろがせないため洛妃に渡された面をつけた。(このシーンはなかなか圧巻で、蘭陵王の兄、広寧王妃役の花野じゅりあさんが手に汗握る迫力で戦況を語り、中央には雅楽で使われる装置?が。装置の額縁だけを残して真ん中が開くとそこに騎馬の蘭陵王という演出。ただ騎馬姿はちゃちかったので、そこだけが残念でしたが。)
しかし、宮廷では皇太子以上に人気を集める蘭陵王を面白く思わない皇太子一派が、蘭陵王を陥れる権謀術数をはりめぐらすようになった。男色の皇太子、高緯瀬戸 かずや)の寵臣、逍遥君帆純 まひろ)は毒殺を計画するが、洛妃によって計画は暴かれ、逆に命を落とす。逍遥君の暗殺犯として蘭陵王は捕えられ、皇帝となった高緯は自分の愛を受け入れれば罪を許そうと迫るが、洛妃の真実の愛を知った蘭陵王は生きるために体を与えた過去と決別、拒否、毒によって賜死されることになる。処刑を拒否し、洛妃と二人で逃げて生きる道を選ぶ。

2時間半、退屈せずに観ました。木村先生の作品にしては、面白かったです(←失礼、しかし『王家に捧ぐ歌』以外、木村先生の作品を面白いと思ったことがない。『鳳凰伝』や『炎に口づけを』『ゼンダ城の虜』はちょっとお直ししてほしいけど、まあ観れるかなというレベル。いやまあ、全作品を観てるわけではないのですが。ときに自分の思想を押し付けてくる作風がとても苦手で。そういうのは両面描いて観客に判断を委ねるものですヨ)。今回も、「生きる」というもののけ姫のようなメッセージはよくわかるんですが、高緯の最後の台詞「助けてあげたかったのに。悪気はなかったのよ。」あれは不要です。観ていればわかります。口に出して言うと、一気にベタな台詞になってしまってます。最悪なのが、その後のナレーターの台詞「人のいやがることはしない。」小学生のしつけじゃないんですから。今回の作品のテーマは、「生きる」これだけでいいじゃないですか!
場面運びがトロいんですよね。ネタがないのかもしれませんが、妃選びの場面で一人一人自己紹介を始めたときは、全部で何人聴かされるのかとウンザリしました。高緯の歌も長い。「海ってどんなのかしら」って知らんがな、一番(?)で十分です。それよりは、蘭陵王と洛妃の心が近づいていく様をもう少し描いてほしい。木村先生は過去の作品を観ても、恋愛を描くのは苦手な気がします。高校生男子じゃないんですから、もう少しグッと心に迫るものを表現していただきたい。そして、歌詞(台詞も?)のセンスがなさすぎます。チョイスしている単語のひとつひとつがシンプルで、聞き取りやすいのはいいんですが陳腐です。宝塚歌劇はお子様ミュージカルじゃないんですから、もっと大人の鑑賞に堪えうる表現でお願いします(正塚先生はそのあたりお上手です)。

キャストについて思ったこと。
凪七瑠海(蘭陵王)、きちんと観劇したのは初めてかもしれません。十分真ん中に立つ実力の持ち主だと思いま             す。ベビーフェイスが損な顔立ちだと思っていましたが、声も低いし、専科に行って鍛えられた大器晩成型だったのでしょうか?音くり寿との並びも似合ってましたし、花組あたりで2、3作主演してもいいのでは?2人で明日海りおの後任とかアリではないでしょうか。
音くり寿(洛妃)、歌はうまいし、演技も上手。可憐で中国的ヒロインがよく似合っていました。花組は、娘役の激戦地となっているようですが、『ポーの一族』でも舞台に立つ姿がひときわ目立っていました。幼い顔立ちですが、演技では十分大人の女性に見えましたし、見た目も宙組の星風まどかよりは大人っぽく見えたような。相手役とタイミングが合えば、十分トップ娘役をはれる人だと思います。
帆純 まひろ(逍遥君)、逍遥君はフィクション?遠目に舞台姿が、星条海斗さんと重なりました。歌をはじめ全体的にまだまだと いう感じではありましたが、これからの伸びしろを感じたりもしました。
斛律光役の悠真 倫さんの朴訥な武将ぶりがたのしく、久々に京三紗さんの舞台姿が拝見できたのも嬉しかったです。       
『愛聖女(サントダムール)-Saint♡d'Amourー』
キューティーステージ(…すごいサブタイトル…。)
作・演出 齊藤吉正
2018年 月組バウホール公演

月影瞳以来の娘役単独バウ主演作品(月影瞳さんが主演してるのも知りませんでした。ちょうど宝塚から遠ざかっていたときではありますが、そんなに厚遇されていたとは。お花様すら単独主演はされていないのでは?)。
月組トップ娘役、愛希れいかのプレさよなら公演である。

ストーリー自体は、荒唐無稽。中世フランスのジャンヌ=ダルクが、21世紀のフランスの大学(大学名も忘れた)の物理実験で現代へタイムスリップし、周囲の人々とドタバタかつハートフルな経験をし、また元の時代へ帰っていくという、新鮮みも面白みもない、歴史ファンには怒りと共に猛ツッコミされそうなストーリーである。
2時間半、愛希れいかのキュートさをただただ堪能するだけ、という作品で、それを企画した齊藤先生(歌劇団?)も思い切ったなと思ったが、何といってもおのれの魅力ひとつで2時間半舞台をひっぱった愛希れいかさんがすごいなと思う公演だった。

①愛希れいかの愛され力
 同時代のトップ娘役を見ると、演技力という点では雪組の咲妃みゆが群を抜いている(彼女の役によって演技が変わる神がかった演技力は、宝塚史の中でも5本の指に入るのでは)。歌という点では、咲妃や後任の真彩希帆、星組の妃南風の方がうまいと思われる。美貌かつ三拍子そろったトップ娘役といえるのは、ここ数年の中では実咲凛音ぐらいではないだろうか。
 演技では、愛希れいかは、何を演じても愛希れいかである。否定しているわけではない。役によって変わるタイプの役者ではなく、役を自分に近づけるタイプなのだと思う。違和感のない、説得力あるところまでもっていく役づくりはさすがであるが、決して演技派ではない。歌もお披露目のロミジュリでは高音の危なっかしさにハラハラしたが、今は安心して聴けるところまでうまくなっている。しかし歴代の歌姫といわれる娘役ほどではない。長い手足を生かしたダンスは抜きんでていると思う。平均点は高いが、決して総合点で他の娘役を圧倒しているわけではない。しかし、まぎれもなく、愛希れいかはお花様と並ぶ宝塚史に残るトップ娘役となった。それは、彼女の愛され力にあるのではないかと思う。舞台を見ていても、どの姿も非常にのびのびしていて目が離せない。思わず目がいくというのか、天性のスター性があるというのか。女性ファンが多い宝塚における娘役の立ち位置は非常に難しいと思うが、彼女ほどファンに愛された(おそらくアンチは少ないのでは?)娘役はめずらしいのでは。もしかすると、80~90年代では受け入れられなかったかもしれないコケティッシュな魅力、2000年代の宝塚だからこそピッタリ合った娘役ではないかと思う。

②月娘がゴツイ(非常に失礼かもしれませんが、主観的な感想ですm(_ _)m)
 今回は、愛希組、珠城組、月城組と月組は3分割しているため、たまたまかもしれませんが…月娘、ゴツすぎます。うがった見方をすれば、愛希れいかの引き立て役だけ選抜されたんですか?愛希れいかのキュートさ、スタイルのよさが際立っていて、他の娘役に目がいきません。というか、他の娘役がゴツく見えて仕方ありませんでした。以前、『All for One』を観たときも思ったのですが、早乙女わかばの美貌が突出していて、他の娘役が目立たなさすぎるなと。
 今回、一番役の大きかった(今後期待されているのであろう)天紫 珠李、美脚でスタイルはいいけれど華がない…。結愛かれんも、歌がうまい設定なのに下手すぎますし、顔が大きい(舞台向きともいえる(-_-;)?)。次代を担っていく娘役がこんなことでは月組を観る楽しみが半減します。頑張っていただきたい!

③その他の感想
 ジャンヌと入れ替わりに中世にタイムスリップしてしまうドクター・ジャンヌ役の白雪さち花さん、自意識過剰(いい人キャラなのか、お笑いキャラなのか、もう少しうまく脚本を書いてあげてほしかった)のクララ・ブロン役の晴音アキさん、何を考えているかよくわからない(もっとキャラをちゃんと書いてあげてほしい、本来面白い人物なので)ジル・ド・レ役の紫門ゆりやさんは、間違いない役づくりで舞台をしめておられたと思います。よかったです。夢奈 瑠音&結愛かれんの兄妹コンビは、ミスキャストなのか、脚本が問題なのか、イギリス人には見えませんでしたし、苦労して育った風にも見えませんでした。顔が大きいからでしょうか?アメリカのカントリー調の人みたい。イモくささは出ていましたが…月組期待の2人でしょうに、こんな感じでいいのでしょうか?役づくりでなければ、あかぬけてなさすぎます!

辛口な感想も出てしまいましたが、最後に生き生きと舞台の真ん中に立つ愛希さんが観れてよかったです!
 

馮太后
中国史マニアの人ならば、ご存知なのだろうか?ちょっと歴史が好き、ぐらいではおそらくなじみがない名前。
中国が魏晋南北朝といわれた時代、鮮卑族が建国した北魏で活躍した女性。
文成帝の皇后で、文成帝亡き後、義子の献文帝と孫の孝文帝の政治を補佐した。
孝文帝は、世界史の教科書にも出てくる有名人で、均田制や洛陽への遷都などの漢化政策を行った人。その孝文帝に大きな影響を及ぼしたといわれている。

そんな馮太后をモデルにした中国ドラマを2つみたので、比較しつつ感想を。

①『北魏馮太后』
 2006年 全42話
 おススメ度:★★
この方のお名前が初耳で、北魏は知ってるし、ドラマになったほどの人なら有名人だろうからみておくかー、ということで視聴。北魏のあまりよく知らない文化やエピソードが出てきて面白かった。
おそらく馮太后の生涯に、ほぼ忠実に描いた作品。なので、オーソドックスに知りたい人におススメ。

北燕(五胡十六国のひとつ。位置的には、中国の東北地方。高句麗系の傀儡王を抱いたりもしてるが、建国者の馮氏は漢民族系と思われる。北魏の太武帝によって滅ぼされた。)の皇族の子孫として生まれた馮淑儀(フォン=シューイー、演じるのは呉 倩蓮(ウー=チェンリン)、中国の女優さんにはめずらしく面長な女優さん。面長なせいかとても長身で細身に見えた)。朝廷内の漢民族勢力を一掃しようとする鮮卑人将軍・乙渾(イー=フン)の企みにより馮氏一族が皆殺しにされるが、太武帝の左昭儀である叔母によってシューイーは助かり、幼なじみであった(?)のちの文成帝の後宮に入る(ドラマではこの2人は幼なじみカップルらしく、しょっちゅう痴話げんかをしては仲直りをしていた)。
文成帝が若くして亡くなった後は、次代の献文帝の補佐を。北魏には「子貴母死」という風習があり、皇太子の生母は外戚が力をもたないように殺される。賛否は分かれそうだが、外戚の専横が目立つ歴史の教訓から解決法を考えていた北魏のこの風習は興味深い。ということで、献文帝の生母も殺されていたため、馮太后が義理の母として皇太后として実権を握る。献文帝が成長してくると、うざったい義理の母と対立するようになり(あるあるですね)馮太后は献文帝を毒殺。孫の孝文帝が即位する。
孝文帝は祖母の馮太后の影響か、漢化政策に熱心で(ドラマで描かれている鮮卑族は、政治に未熟な遊牧民族)文明化しようと努力していた(均田制も鮮卑の豪族の特権を奪うのかと大反対にあい、遷都も南征と偽って決行するなど苦労していた…)。孝文帝は、馮太后の兄 馮熙(フォン=シー)将軍の娘2人と結婚する。寵愛した1人(ミャオユアン)に子供ができるが、例の風習のために殺されてしまい、もう1人(ミャオリエン)はふりむかれない腹いせで医者と密通し殺されている(史実では、姉妹で反目した結果、一方は廃され一方は乱行して孝文帝が亡くなるときに殉死させられているようである。ドラマはフィクション?)。
5代(?)の北魏皇帝の時代を生きているので長い生涯のように思えたが、49歳で馮太后は亡くなる。

●文成帝亡き後、馮太后は李弈(リー=イー)という武将を寵愛。さすがに人目は忍んでいたが、皇太后がそんなことをしていいのか(歴史には結構いるけど)という思いと、文成帝への幼なじみ愛はどうした?!という思いでビックリした。一線は超えてないが、その後も好きな人はできていたので、馮太后はわりと男性がいないとダメなタイプなのかも。
●北魏を建国した拓跋氏は、「トバ」と発音されていた。なんかかわいい。
●日本では「北魏」といっているが、彼らは「魏」と称していた。ドラマでも同じく。
●馮太后の兄、馮熙はムーランと相思相愛だったというエピソードも。ドラマでは、馮氏の権力を守るため、兄は政略結婚させられてムーランとは結ばれない。ムーラン(花木蘭)は中国の伝承・物語上の人物なので、実在しないが、魏晋南北朝~隋の時代という設定らしい。
●ドラマでは出てこなかったが、後で本を読み、孝文帝と馮太后の母子説に驚いた(父は献文帝)。馮太后が父を毒殺したわりに、孝文帝が手厚く遇していたり、馮太后亡き後母に対するのと同じ長さで喪に服しているというのが理由であるが、真偽のほどは…。


②『王女未央ーBIOUー』
  2016年 全54話
 おススメ度:★★★
最初の方はやや退屈だったのですが、最後はわりと面白くなり、最近の中国ドラマの中では次回を楽しみに見ることができた作品。復讐&頂点にのぼりつめるのが『若㬢』と『宮廷の諍い女』をブレンドしたような感じ。たぶんこれもラブ史劇のジャンルなので、つくりはライトだし、史実では全くないですが。

北涼(北魏の太武帝により滅亡後、王は河西王に封じられていたが謀反の罪で自害させられる。ドラマではそれを北魏の重臣による陰謀としている。)の王女、馮心児は国を滅ぼされた後、復讐のために北魏の重臣の娘「李未央」になりすまし復讐を図る。
ドラマ内では、ずっと呼び名は未央なのでピンと来なかったのですが、舞台が北魏で恋愛の相手が拓跋濬(文成帝のこと)、本名が馮心児ってことは…馮太后をモデルにしてるのか!!と、かなり経ってから気づきました。『馮太后』のドラマとは全く異なる、国と人物の設定を借りてきただけのフィクションと思ってみるドラマ。
ヒロインの未央は頭がよくポジティブ。中国ドラマの定番で何度も陥れられ、死刑判決をうけたりするが、彼女にぞっこんな高陽王 拓跋濬(ドラマ内では未央はいつも「トバジュン」と呼び捨てに。日本人みたいだなあというのと、皇族を呼び捨てってどうなんだろうというツッコミと共にみてました。)の助けや持ち前の機転ですべて乗り切る。私的には、若㬢の無言で耐える健気さが少し苦手でしたが、未央の前向きさと頭のよさに救われ(?)危機に陥ったときも次回を楽しみに毎日みることができました!
ストーリーは、本当にフィクション。史実と同じなのは、太武帝が宦官に暗殺されるということと、次に南安王拓跋余、その次に高陽王拓跋濬が即位したことぐらい。あとはオールフィクションで、よくも54話も考え付いたなと感心します。
未央の復讐の相手、北魏の重臣 叱雲家はたぶん創作?叱雲家出身の母から生まれた未央の腹違いの姉で恋敵の李長楽は文成帝の貴人(献文帝の実母、「子貴母死」で殺された)がモデルとなっているよう。演じるリー=シンアイさんは、『班淑』の寇蘭芝役(こっちでは最後ヒロインと和解していた)以上の悪役。やせたのはよいとして、明らかに瞳の輪郭をとびこえたつけまつげメイクが気になりました(-_-;)
拓跋余の髪型がミュージシャン的編み込みなのが、最初「…(゚Д゚;)!!」でしたが…慣れました(-_-;)
そんな拓跋余に恋い焦がれ、かわいい顔して権謀術数はりめぐらす従妹の李常茹(りじょうじょ)を演じるのは、マオ=シャオトンさん。『宮廷の諍い女』で瑛貴人(果郡王の宮女で、雍正帝の後宮に入った後、第三皇子に一方的に片想いされただけなのに皇子を惑わした罪で殺されたかわいそうな人)を演じた方ですね!なつかしい!むしろふっくら童顔になられて若返ったような?しかし、この方も目頭の切れ込みが(やっちゃったんですかね?)気になりました(-_-;)

日本人にはなじみの少ない時代、人物ですが、どちらのドラマもなかなか面白かったです。北魏について知ってみたい方は『馮太后』、エンターテインメントとして楽しみたい方には『王女未央』をおススメします(*^^*)