スペクタクル・ミュージカル
『1789 ーバスティーユの恋人たちー』
2023年 星組公演
潤色・演出 小池修一郎
この作品、2015年月組版、2016年東宝版と観ているのですが、いまいち心をつかまれず…。
その一番の理由としては、主人公のロナンに共感しづらかったから。
時代や社会に問題があるにしても、父や妹を不幸にした直接的原因はきみじゃないのかロナン…(-_-;)
パリに出てきて親切にしてくれたロベスピエールやダントンにいきなり逆ギレしてもなロナン…(-_-;)
今まで観たロナン感はこんなところでした。
ロナンは演じるのが非常に難しいキャラクターなのかもしれません。
農民出身だけど主役としての華は必要だし、怒涛の急展開の中で社会の不条理を感じ成長していくロナン自身の感情の流れを一貫して見せないと単なる逆ギレ反抗期少年に見えてしまう。
これまでロナン役を演じてこられた役者さんたちはいまいち演じ切れてない感じでした。
しかし!今回の星組版がこの作品の正解型を見せてくれました!
礼真琴は、やはり上手いですねえ。初めてロナンというキャラクターが一貫して見えました。
礼さんが貴族キャラではないので、こういう役柄が合うというのもあると思いますが。
田舎の農民の少年が、社会の不条理に気づき、何かを変えようともがき、知ることでさらに悩み…という感情の流れがきちんと見えました。
ヒロインのオランプ役舞空瞳もよかった!
月組版ではトップコンビがロナンとオランプを演じず、またオランプはWキャストであったため、恋人同士というには説得力がなかった。恋人役がWキャストというのはやはり微妙ですよね。雪月ロミジュリもしかり。ベルばらは…あれはもう超越した「まつり」なんでアリかな(;^_^A
東宝版もちょっとトウがたちすぎていて…(-_-;)
『赤と黒』の後だけに余計、礼・舞空コンビのしっくり感を感じました。
歌や演技がいまひとつという評もあるようですが、今まで観たオランプの中では一番らしいと感じました。
しかし舞空瞳は、今までの宝塚にいないタイプのトップ娘役ですねえ。
美貌のトップも可憐なトップもいましたが、なんというか圧倒的ヒロイン感。
正統派美人ではないですが、絶対的ヒロインというか、彼女が出てきたら彼女がヒロインだとはっきりわかる華がありますよね。歌や演技もその圧倒的存在感で説得力をもたせてる感じです。
トップになってから、どんどんオーラを増していってるような。どこまでいくのか末恐ろしい…(笑)。
シャルル・アルトワ役は瀬央ゆりあ。
悪くなかったですが、妖しさでは美弥るりか、迫力では吉野圭吾が上ですかね。
なんか紅ゆずるを思い出すというか、「紅さん、この役合いそうだな。」と思いながら観てました。
瀬央さんが紅さんの影響をうけてるんでしょーか?
当時の星組でも合いそう。
ロナン柚希礼音、オランプ夢咲ねね、アルトワは凰稀かなめか紅ゆずる、デムーランは涼紫央、ロベスピエールは真風涼帆、アントワネットとソレーヌが音花ゆりと白華れみ??ちょっと弱いですかね(;^_^A
そして、アントワネット役有沙瞳!
『赤と黒』もすごかったですが、最後の輝きと集大成というご本人の覚悟を感じました(つやめいたメイクのせいも?)。
無邪気な序盤から、革命の足音迫る終盤までのつくりこみが見事でした。
デムーランの暁さん、ロベスピエールの極美さんも若々しい革命家っぽさがあり、よかったです。
ダントンの天華さん。今、星組でこの役ができるのは天華さんだけでしょうねえ。うまい。
フェルゼンの天飛さんは、まだまだ発展途上ですねえ。演技もメイクもあかぬけない。当時の暁さんの方があかぬけてたような…。フェルゼンは他と差別化を図りたい役柄なので、天飛さんも暁さんもそこは演じ切れてない感じ。
アルトワの手下ラマールは、東宝版の坂元さんがよくて、初演月組の紫門さんの記憶があまりないんですが、碧海さんのラマールは坂元さんに近いおちゃらけラマールでよかったです。
ルイ16世のひろ香さん、ネッケルの輝咲さん、ポリニャックの白妙さん、そしてペイロールの輝月さん、上級生は手堅く。
今回のMVPは、ソレーヌ役の小桜ほのかでしょう!
東宝版のソニンさんとはる迫力。いや、宝塚でここまでヨゴレ役が演じられるあたり、彼女の方が上かも。
しかし、この役を体当たりで演じられる小桜さんは、やはり宝塚のヒロインではないよなあと思いました。
舞空さんのもつ何を演じても舞空瞳的な圧倒的ヒロイン感はないんですよね。
小桜さん自身がどう思っておられるかはわからないので、外野がとやかく言うことではないんですが、宝塚の枠を超えたうまさをもつ方です!外に出ても活躍できる方!もうしばらくは宝塚で活躍してほしいですが。
『赤と黒』にひきつづき可憐さに惹きつけられたリュシル役の詩ちづる。
かわいいし、歌はうまいし、今すぐどこかでトップにもなれそうな。
雪組で朝美さん、宙組で桜木さん、どちらも合いそう。
星組が手放さないですかね。
有沙・小桜路線を継いでいきそうなシャルロット役の瑠璃花夏。
いやあ、星組はうまい娘役がそろってますね!
だからこそ『1789』が出来たともいえる。この作品って実は娘役がそろっているかどうかがキモなんですよね。2015年の月組も娘役は豊富でしたが、ここまで芸達者揃いではなかった。今の星組はすごい!
そして、コーラスの宙組にも劣らない星組生全員の気迫が、この作品のクオリティを爆上げしていたと思います!
役者がそろっていた、星組の全体的歌唱力が上がっていた、これらの要因が再演ながら初演を超える名演をみせてくれた理由かと思います。今後は星組版1789が、宝塚のめざすべき形になるでしょう。
…書いてたら、DVDほしくなってきました(笑)。