健康で文化的なインドア生活

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テレビが友達。たまに外出して観劇。

スペクタクル・ミュージカル

1789 ーバスティーユの恋人たちー

2023年 星組公演

潤色・演出 小池修一郎

 

この作品、2015年月組版、2016年東宝版と観ているのですが、いまいち心をつかまれず…。

その一番の理由としては、主人公のロナンに共感しづらかったから。

時代や社会に問題があるにしても、父や妹を不幸にした直接的原因はきみじゃないのかロナン…(-_-;)

パリに出てきて親切にしてくれたロベスピエールやダントンにいきなり逆ギレしてもなロナン…(-_-;)

今まで観たロナン感はこんなところでした。

ロナンは演じるのが非常に難しいキャラクターなのかもしれません。

農民出身だけど主役としての華は必要だし、怒涛の急展開の中で社会の不条理を感じ成長していくロナン自身の感情の流れを一貫して見せないと単なる逆ギレ反抗期少年に見えてしまう。

これまでロナン役を演じてこられた役者さんたちはいまいち演じ切れてない感じでした。

 

 

しかし!今回の星組版がこの作品の正解型を見せてくれました!

 

礼真琴は、やはり上手いですねえ。初めてロナンというキャラクターが一貫して見えました。

礼さんが貴族キャラではないので、こういう役柄が合うというのもあると思いますが。

田舎の農民の少年が、社会の不条理に気づき、何かを変えようともがき、知ることでさらに悩み…という感情の流れがきちんと見えました。

 

ヒロインのオランプ役舞空瞳もよかった!

月組版ではトップコンビがロナンとオランプを演じず、またオランプはWキャストであったため、恋人同士というには説得力がなかった。恋人役がWキャストというのはやはり微妙ですよね。雪月ロミジュリもしかり。ベルばらは…あれはもう超越した「まつり」なんでアリかな(;^_^A

東宝版もちょっとトウがたちすぎていて…(-_-;)

『赤と黒』の後だけに余計、礼・舞空コンビのしっくり感を感じました。

歌や演技がいまひとつという評もあるようですが、今まで観たオランプの中では一番らしいと感じました。

しかし舞空瞳は、今までの宝塚にいないタイプのトップ娘役ですねえ。

美貌のトップも可憐なトップもいましたが、なんというか圧倒的ヒロイン感。

正統派美人ではないですが、絶対的ヒロインというか、彼女が出てきたら彼女がヒロインだとはっきりわかる華がありますよね。歌や演技もその圧倒的存在感で説得力をもたせてる感じです。

トップになってから、どんどんオーラを増していってるような。どこまでいくのか末恐ろしい…(笑)。

 

シャルル・アルトワ役は瀬央ゆりあ

悪くなかったですが、妖しさでは美弥るりか、迫力では吉野圭吾が上ですかね。

なんか紅ゆずるを思い出すというか、「紅さん、この役合いそうだな。」と思いながら観てました。

瀬央さんが紅さんの影響をうけてるんでしょーか?

当時の星組でも合いそう。

ロナン柚希礼音、オランプ夢咲ねね、アルトワは凰稀かなめか紅ゆずる、デムーランは涼紫央、ロベスピエールは真風涼帆、アントワネットとソレーヌが音花ゆりと白華れみ??ちょっと弱いですかね(;^_^A

 

そして、アントワネット役有沙瞳

『赤と黒』もすごかったですが、最後の輝きと集大成というご本人の覚悟を感じました(つやめいたメイクのせいも?)。

無邪気な序盤から、革命の足音迫る終盤までのつくりこみが見事でした。

 

デムーランの暁さん、ロベスピエールの極美さんも若々しい革命家っぽさがあり、よかったです。

ダントンの天華さん。今、星組でこの役ができるのは天華さんだけでしょうねえ。うまい。

フェルゼンの天飛さんは、まだまだ発展途上ですねえ。演技もメイクもあかぬけない。当時の暁さんの方があかぬけてたような…。フェルゼンは他と差別化を図りたい役柄なので、天飛さんも暁さんもそこは演じ切れてない感じ。

アルトワの手下ラマールは、東宝版の坂元さんがよくて、初演月組の紫門さんの記憶があまりないんですが、碧海さんのラマールは坂元さんに近いおちゃらけラマールでよかったです。

ルイ16世のひろ香さん、ネッケルの輝咲さん、ポリニャックの白妙さん、そしてペイロールの輝月さん、上級生は手堅く。

 

今回のMVPは、ソレーヌ役の小桜ほのかでしょう!

東宝版のソニンさんとはる迫力。いや、宝塚でここまでヨゴレ役が演じられるあたり、彼女の方が上かも。

しかし、この役を体当たりで演じられる小桜さんは、やはり宝塚のヒロインではないよなあと思いました。

舞空さんのもつ何を演じても舞空瞳的な圧倒的ヒロイン感はないんですよね。

小桜さん自身がどう思っておられるかはわからないので、外野がとやかく言うことではないんですが、宝塚の枠を超えたうまさをもつ方です!外に出ても活躍できる方!もうしばらくは宝塚で活躍してほしいですが。

 

『赤と黒』にひきつづき可憐さに惹きつけられたリュシル役の詩ちづる

かわいいし、歌はうまいし、今すぐどこかでトップにもなれそうな。

雪組で朝美さん、宙組で桜木さん、どちらも合いそう。

星組が手放さないですかね。

 

有沙・小桜路線を継いでいきそうなシャルロット役の瑠璃花夏

いやあ、星組はうまい娘役がそろってますね!

だからこそ『1789』が出来たともいえる。この作品って実は娘役がそろっているかどうかがキモなんですよね。2015年の月組も娘役は豊富でしたが、ここまで芸達者揃いではなかった。今の星組はすごい!

そして、コーラスの宙組にも劣らない星組生全員の気迫が、この作品のクオリティを爆上げしていたと思います!

役者がそろっていた、星組の全体的歌唱力が上がっていた、これらの要因が再演ながら初演を超える名演をみせてくれた理由かと思います。今後は星組版1789が、宝塚のめざすべき形になるでしょう。

…書いてたら、DVDほしくなってきました(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想歌舞録

眩耀の谷 ~舞い降りた新星~

2020年 星組公演

作・演出・振付 謝珠栄

 

礼真琴・舞空瞳、星組トップコンビ大劇場お披露目公演。

ということで、タイトルも併演のショーも「新星」とか「星の光線」とか「Ray」とか(果ては「令和」まで…(;^_^A)、新トップコンビの誕生感があふれる作り。ここまでベタなのはめずらしいぐらい。オリジナルならではできることなので、やはり劇団に大切に、期待されているコンビということでしょうかね。

サブタイトル(?)の付け方もいつも興味津々なのですが、今回の幻想歌舞録ってのはまた新しい。たしかに謝先生ならではの、踊りで表現されることの多い美しい舞台でした。

今さら感満載ですが、録画していたテレビ中継をやっと観れたので、覚書としておこうかなと。

 

物語は、古代中国が舞台。

周王朝も宣王も実在しますが、異民族討伐に力を注いだ中興の祖である宣王をモデルにしたフィクション?(パンフレットを読めばそのあたりは書いてあるのでしょうか)

主人公、丹礼真は周に仕える大夫。周王に命じられて管武将軍と共に、異民族「汶族」の聖地である「眩耀の谷」を探索する。謎の男に導かれて谷に迷い込んだ礼真は、自分が信じ仕えていた王朝や将軍に疑問を持つようになる。自分は汶族の王族の血をひく子孫であると知った礼真は、汶族を新たな土地に旅立たせて新たな国を築く。

 

第一の感想は、謝先生!脚本も書けるんですね!!

設定も展開もうまく作られてるなーと思いました。自らを中国を治める正統な民族とする漢民族の周王朝と、戎狄と差別される異民族の関わり(汶族)。ヤマト王権と蝦夷の関係を描いた『阿弖流為』も設定は同じですが、古代には建国途上の領土拡大において、どこの国でもあること。設定は同じだけど、対立に主軸を置いた『阿弖流為』と、自分のルーツをたどり新天地をめざす結論に至った『眩耀の谷』では異なる印象を抱いたので、「またか。」的な感想は持ちませんでした。

組子の配置もうまい。その他大勢的描き方にならず、上手に配役をふっておられるなと。テレビということもありますが、より多くの生徒さんを認識することができました。

欲をいえば、

①周王朝側がさほど悪く見えない

 すみれコードならぬヅカコードがあるのかもしれませんし、ライトに表現する時代だから?両方に言い分が…的描き方でもなかったような…。拷問の場面もありますし、語られている内容も結構残酷なわりには、周王朝側がさほど悪く見えない…何故??演者がソフトな方々だから?礼真も周王朝側の非道さに嘆いているというよりは、自分が正しいと信じてきたことが偽りかもしれないことの方に嘆いている(ように見えた)から、まあ、最後まで争わなかったことを考えると、こんなもん???

②ラストが唐突

 序盤を丁寧に描きすぎたからか、ラストがやや唐突な印象。礼真は汶族の王族の末裔であり、行方不明の麻蘭王なき今、汶族を率いる存在とわかる。それを戸惑いつつ受け入れる汶族(早い…)。眩耀の谷にこだわらず、新天地をめざすという礼真の提案に戸惑いつつ乗る汶族(早い…)。今までストーリーテラーの役割を担っていた語り部の春崇は礼真と瞳花の娘でございましたー。(ええっ唐突!いや二人がくっつくのは想像できるけども何の伏線もなかったやん…)

 怒涛のように繰り出されるエピローグにやや面喰いました。

が、全体的には、観てよかったな、面白かったな、と久々に思えるオリジナル作品でした。

 

キャスト別の感想をといきたいところですが、丹礼真の礼真琴、瞳花の舞空瞳にあらためて書くことがない(;^_^A

三拍子そろっているとはよく使う表現ですが、かなり高いレベルで三拍子完成されている礼真琴。こんなスーパーマンの相手役、誰ができるんだと思ってましたが、どんぴしゃりなタイミングで出てきましたね、舞空瞳というすごい娘役が。見た目もお似合い、強いていえば身長差が気になるところですが、舞空瞳の高い身体能力を活かした見事な膝折、かつ超絶小顔なのでさほど大きく見えない。礼さんはいいお嫁さんをもらいましたよねー。柚希さんも相手役に恵まれれば、もっと作品のレベルアップができただろうし、作品にも恵まれたのでは…夢咲さんも可愛らしい方ですが、「柚希礼音の相手役」には役不足。コンビって相性だけでなく、タイミングもあるから難しいですね。それを思うと、礼・舞空コンビは奇跡的に出会えたコンビだと思います。

『ロックオペラ モーツァルト』の一幕最後の舞空瞳のダンス、息をのみました。ダンスがうまいジェンヌはたくさんいますが、劇場の雰囲気を変え、自分一人で空間を支配できるほどのダンサーはなかなかいません。私が今まで観た中では、大浦みずき安寿ミラ風花舞柚希礼音ぐらい。そして舞空瞳。ダンスだけみれば、礼真琴も及ばないのでは?礼さんがいないときには思いっきり踊り狂うガツガツさ。小動物のような愛くるしい笑顔に隠されていますが、かなり負けん気も強そうなんで、やや不得手といわれる歌も今後どんどん上達していくのではないでしょうか。礼真琴と共に星組を、いや宝塚を盛り上げていってくれるに違いない!楽しみな娘役です!(舞空瞳賛歌になってしまった笑)

 

先代、先々代といまいち好みに合わない政権が続いたので、遠ざかっていた星組ですが、久々に観ると、男役も娘役もそろってますね!

まず脇を固める上級生のラインナップがすばらしい美稀千種さんは一樹千尋さんの流れを継承できる貴重な役者、美形枠では天寿光希さん、可愛い役も美しい役もこなせる音波みのりさんもいる。輝咲玲央さんの髭の渋さ!ひろ香祐さんのクセの強さ!今回、ほどよく配役されていたので、星組の皆さんの粒ぞろいさを存分に堪能できました。

 

そして円熟味を増してきた瀬央ゆりあさん、ショーでは歌がややムムムな感じでしたが、雰囲気は抜群!95期は飽和状態ではありますが、どこかでトップになってほしい!同じくますます可愛さに磨きがかかっている有沙瞳さん、ロミジュリの乳母が評判よいようですが、このまま二番手娘役でいくのか?謎の男、実は行方不明の麻蘭王(まさか幽霊だったとは!)の瀬央さんがオイシイ役なのに対して、雰囲気が似ているからか宣王の華形みつるさんと、管武将軍の愛月ひかるさんの差別化がもっとあってもよかったような。二人共髭を付けてるし…いやかっこよかったですけども。愛月さんは下級生トップの下とはいえ、二番手に昇格!これからに期待してます!

上級生に比べ、下級生が少しさみしいような…(特に娘役)。礼・舞空政権が長期ならば、これから育成、もしくは出てくるのを待つ、ということなんでしょうかね?

 

ロミジュリは間違いなく、歴代で最もバランスのいい、役柄に合ったロミオとジュリエットが観られることと思います。(それでも私はジュリエット以外初演版星組が好きであるため、また再演しすぎてロミジュリにやや食傷気味なため、またテレビ中継でもあるのを待とうと思います(;^_^A)

 

 

三井住友カード ミュージカル

アナスタシア

2020年 宙組公演

潤色・演出 稲葉太地

 

ディズニーの『アナスタシア』に着想を得てブロードウェイでミュージカル化された作品。

宝塚でお試し上演してから一般上演(?)されるのがパターンなのに、めずらしく先に一般上演された作品。

 

ディズニー版も観たことないし、アナスタシア伝説自体マユツバものだと思っているので、今回何の予備知識もなく観ました。

ライブ配信を観たのですが、最初接続が悪くて開演アナウンスから幕開け数分を見逃してしまい…(T_T)なので、ところどころ話がいまひとつよくわからない箇所もありましたが、ストーリーの説明不足を音楽がカバーしているミュージカルらしいミュージカルですね!(アーニャを皇女に仕立てようと決めるところや、よくある偽物を本物に教育する場面など、あっさり進みすぎて少し説明不足かなと思います。)

観終わった後思ったのは、「よかったけど、別に宝塚でやらなくてもいいのでは?」と。

タイトルロールだけあってやはり主人公はアナスタシアの印象が強い。『エリザベート』ほど男役トップ中心の物語に潤色はできていない。娘役トップが主人公に見える作品は、やはり宝塚には不向きだと思います。

あとは、役が少なすぎる。宙組は一番路線男役もそろっていて、しかも粒ぞろいだと思うんですが、その若手男役が役として全く出てこないのはもったいない。

そして映像で見る限り、背景映像や、大道具、舞台装置の使い方も、梅芸制作版の方がよさげな感じ。

星風さんがこの作品で退団で、その後外部で演るというなら花むけ的・お試し的意味合いで理解できますが(そういうやり方は好きではないけれど。専科異動という意味での花むけだったのか?)、何故今これを宝塚で上演しようと企画されたのかはわからんなー。

 

ディミトリ(真風涼帆)

 ヒロインが主人公の作品なので、宝塚の男役にしてはサラッとした役柄だと思いましたが、真風さんの持ち味には合ってました。『オーシャンズ』のダニーがちょい悪詐欺師なら、ディミトリは生活のためにやってる根は真面目な詐欺師?だからこそ、アーニャに徐々に惹かれていったとき(そのあたりは脚本も演出も説明不足だとは思いましたが。真風さんのせいじゃない。)報奨金を受け取ることができなかった、という役づくりですんなり共感することができました。ダニーよりは、ディミトリの方が真風さんらしい感じがしてよかったです

 

アーニャ(星風まどか)

 真風さんの持ち味に合わせて大人の女性を演じることが多かったせいか、今までは無理してる感、背伸び感がぬぐえなかったのですが、ようやく似合った役に合えてよかったですね!等身大の星風さんが活かせる役だったのではと思います。

 欲をいえば、もう少し高い声で演じてほしい。声が低い!今まで大人な役が多かったので低い声で演じておられるんだと思ってましたが、おそらくこれが星風さんの標準声域なんでしょうね。歌声はわりと高いのに。星風さんはどちらかといえば童顔だし、アーニャは若い役なのでもう少し高い声で演じた方がヒロイン感が出ると思うのですが…。顔と声のミスマッチ感がやや大きかったかなあ。

 

グレブ・ヴァガノフ(芹香斗亜)

 2番手はアクが強いタイプの方がお得だと常々思ってます。2番手はトップの敵役を演じることが多いため、アクが強い方がトップも2番手もお互い際立ちやすい(ただこのタイプはトップになったとき、2番手時代の方が魅力的だったのにと言われがちですが)。

 芹香さんはアクが強くないというか、サラッとしてるというか…この役もっと悪く演じてもいいのでは?いや、芹香さんの持ち味がホワイトだからそういうふうに見えるのか?真ん中向き?『イスパニア』のときも感じたのですが、下手したら桜木さんの方がおいしく見えちゃってます。せっかくのカッコいい役なのに。いや十分カッコいいんですけど、なんか遠慮してる?もっと思いっきり振り切って演じる芹香さんが観たい!一番生き生きされているのがアドリブのときでした(笑)。

 

ヴラド・ポポフ(桜木みなと)

 本来はもっとオジサンな役なんでしょうが、かわいいおとぼけオジサンな役づくりで、うまく宝塚感にとどめておられたと思います。ご本人も肩の力をぬいて楽しそうに演じておられる様子が伝わってきて、観ていて楽しかったです。硬軟演じられるいい役者になられましたよねえ。本当うまい!

 

リリー(和希そら)

 ヅカファンじゃないミュージカルファンからも絶賛されているとは聞いてましたが、本当にうまかった!!今回のMVPでしょう。男役の演じる女感がなく(ちょっと面長な女性でしたが)、高音から低音への変幻自在な発声はもう見事!『壮麗帝』ではシリアスな関係だったずんそらが、ほのぼのカップルになっていたのも楽しかった。真風・芹香のバディ感もいいですが、ずんそらの兄弟感(?)も私は好きです(笑)!

 

マリア皇太后(寿つかさ)

 オイシイ役ですね!今の宙組でこの役ができるのは、すっしいさんしかいない!圧倒的重厚感!

 未沙のえるさんが得意だった『オーシャンズ』や『追憶のバルセロナ』のような飄々とした軽妙な役どころは、すっしいさんには合わないなあと思っていましたが、こういうシリアスな役の方が合いますね!

 

ニコライ2世(瑠風輝)

 最初誰かわからず、配役を確認して「え!!!」となりました。しかし、うまい!渋い!新公主演4回を誇る超路線男役とは思えない謎の配役が続いてますが、将来トップになるとしたら、この演技力、この経験は強みだと思います。

 最近、瑠風さんと姿月あさとさんが非常に重なってみえます。姿月さんが最初に配属された花組は、未来のスター達がひしめきあっていて、ご本人の性格もあってか後ろにひいておられる感じでした。たしかご本人ものちに「自分は欲がなかった」みたいなことを言っておられたような…。月組に組替えになって、少しスポットがあたるようにはなったけど、当時の月組トップは同期の天海祐希さん。路線とは思えないような役を演じられることもあり、たぶん2番手期間もほぼなかったのでは?新生宙組のトップに就任すると決まったときは、ダークホースすぎてビックリしたのを覚えています。姿月さんは新公主演回数も少ないので、そこは瑠風さんとは異なりますが、長身で歌うまなところ、ご本人に欲がなさそうなところ、路線とは思えない配役、姿月さんを彷彿とさせます。瑠風さんは、姿月さんのようにアッと驚く就任をするのか、路線を離れて別格にいくのか、今後を楽しみに見守りたいと思います。

 

花音舞さん、綾瀬あきなさん、レオポルド伯爵役の松風輝さん、イポリトフ伯爵役の凛城きらさんなど、上級生たちはおいしい役どころだったのでは?さすがの貫禄でどの場面でも目立ってました。

皇女たちは、幼いアナスタシア役の天彩峰里さんと潤花さん以外、見分けがつかず…(-_-;)

綺羅星のようにいる宙組若手男役も誰も目立たず…(T_T)フィナーレの男役群舞はかっこよかったですが、次の作品は目立つように作ってあげてほしいと思います!!

 

宙組生としての最後の挨拶を、涙をこらえて気丈におこなう星風さんが健気でした。

『アイーダ』の貸切公演を観たとき、まだ研一だった星風さんの挨拶に非常に幼さを感じましたが、いまや立派なトップ娘役ですね。

新生宙組と、星風さんの新しい舞台を、楽しみにしたいと思います。

 

 

 

 

ミュージカル・ロマンス

ヴェネチアの紋章

作・演出 柴田侑宏

原作 塩野七生『聖マルコ殺人事件』

 

なんて懐かしい!『ヴェネチアの紋章』が再演されるとは!

1991年の夏に宝塚で上演された、花組トップコンビ大浦みずき・ひびき美都の退団公演である。

そして、その後月組トップとなる真琴つばさが研7にして新人公演初主演をもぎとった公演でもある。

 

ヴェネチア共和国元首の庶子アルヴィーゼ=グリッティが、庶子ゆえに得ることができなかった地位や愛する女性のため、敵国オスマン帝国に仕えることを選び、孤軍奮闘し、最後は祖国にもオスマン帝国にも見捨てられて散るお話(なかなか暗い)。

原作は、塩野七生のルネサンス三部作小説のたしか第一作で、私が持ってる文庫本は『緋色のヴェネチア』というタイトル(聖マルコ殺人事件はサブ・タイトル)。主人公はどちらかというとヤンさんが演じたマルコ・ダンドロ(アルヴィーゼの友人)なんですが、その後の2作に比べてヴェネチアはマルコはストーリーテラーでアルヴィーゼにスポットがあたっている印象。宝塚版はそれをさらにヅカっぽくした感じ。

原作はかなりサスペンス色も強いが、宝塚版は、観たとき「どこが殺人事件やねん」と思ったぐらい、殺人事件はほんのさわり程度でアルヴィーゼの生涯がドラマティックに描かれている。なつめさんの退団公演だったこともあいまって、主人公が散るシーンはボロボロ泣けました。しかし当時はお涙ちょうだいのメロドラマだなあ(泣かされてしまったけれども)ぐらいの感想でしたが、原作とは全く別物と思えば、なかなかの佳作だったのかもしれないなと思います。

色々と思うところがあったので、書いてみようと。

 

①再演するほどの??

たしかに佳作ではあったけど、再演するほどかなあ?

稀代のダンサーだったなつめさんに合わせて(?)、公演紹介では劇中で主人公2人が踊るモレッカという踊りがとても情熱的で、当時の詳細がわからない踊りだから再現が難しかったとかなんとか大風呂敷を広げていた(ように感じた)わりには、観に行くと「えっこれだけ?」みたいな踊りで…彩風さんもダンスが得意だからこの作品を選んだ?でもモレッカって本当期待外れですよ…いや私見ですけど。併演のショー『ジャンクション24』はめちゃくちゃおススメなので、どうせならこちらも上演してくれたらよかったのに!なつめさん振付のシーンもあるし、なつめさんのメモリアルというか宝塚の財産的作品だと思うので、難しいとは思いますがいつかは再演してほしいショー。

他に作品がなかったかなあ…(^_^;)

なつめさんの作品でいえば、再演希望は『秋・冬への前奏曲』!当時の花組はのちにトップになるスターがひしめいてたから、登場人物も多く作ってあったし、いいと思うんですけど。当時の劇評でも絶賛されてたし!谷先生の大劇場デビュー作!

大劇場デビュー作といえば、小池先生の『天使の微笑 悪魔の涙』もめっちゃよかった作品!

このあたりぜひぜひ再演してほしいんですけど…何で再演されないんでしょうか?

 

②彩風咲奈はどこに向かうのか?

彩風咲奈は、日向薫の『炎のボレロ』といい、第2次ベルばらブーム時代のトップ的カラーで売りたいのでしょうかね?

ビジュアル・スタイルは圧倒的に彩風さんの方が上だけど(いやネッシーさんには負けるか)、あの頃のトップさん達がもっていた圧倒的カリスマというかオーラからすると弱い。何を売りにしていくんでしょうね?お披露目の『シティーハンター』といい、迷走しているような気がするのですが。

芝居のセンスはある人だと思います。ただ役柄は把握しているのに、それを表現する力にすごく偏りがあるように思います。演技力がないわけではないけれど、そういう人物に見えないというか…持っている器の問題なんでしょうか?『ひかりふる路』のダントンも、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のマックスも、うーん、表現しようとしてはる人物像はわかるけど弱いなあ…という感想を抱きました。まだ殻を破れていない感じ。どんな役が合うんでしょうね?彩風さんの持ち味がうまく引き出せる作品にめぐりあえるといいですねえ。

 

③配役予想など

主演2人は確定として、まずマルコ・ダンドロ(安寿ミラ)は、綾凰華かな。「優しいマルコ」(台詞にある)は似合いそう。

高級娼婦でマルコの女友達、実はスペインのスパイ、オリンピア(香坂千晶)は、夢白あやでしょう。

おいしい役だったなと思うのは、アルヴィーゼの従者カシム(宝樹芽里)と彼を恋い慕うヴェロニカ(森奈みはる)。そんなに必要かと思うぐらいの勢いで、場面転換時には繰り返される2人のやり取り。当時はもう愛華さんや真琴さんが出てきていたので、宝樹さんは路線ではなかったですが、愛華さんや真琴さんの役よりキャラが立ってるし、主人公の従者なんで出番も多いし、誰が演るのか…今はライトなファンなので下級生が全くわからず予想できない…(-_-;)ヴェロニカは音彩唯さんあたりが取るかもしれませんね。

重鎮的配役が豊富なので、中堅どころの上級生たちにとっては、やりがいある公演でしょう(だから選んだのか?!)。

トップが新しくなると全体的に代替わりするとはいえ、2番手格が綾凰華か…雪組って男役豊富なわりに路線が弱い感じなんですよね。やはり組替えは必要かもしれません。

 

 

オリエンタル・テイル壮麗帝

2020年 宙組ドラマシティ公演

作・演出 樫畑亜依子

 

最近はオスマン帝国ブームなのか?

トルコ発ドラマ『オスマン帝国外伝』は日本でも好評を博し、シーズン4まで製作されている。

篠原千絵さんの漫画『夢の雫 黄金の鳥籠』もまさにこの作品と登場人物は同じ。

そんなオスマン帝国ブームに宝塚も乗ったかどうかはわからないけれど、題材としては非常に面白いところなので、どんな宝塚版オスマン帝国物語ができるのか楽しみにしていた。

時代は16世紀、オスマン帝国全盛期のスルタン、スレイマン1世(壮麗帝)の時代。

スレイマン1世は、君主でありながら親友と愛する女性を得ることができた幸運な人物(塩野七生さんの本によると)。

しかし、親友イブラヒムはやがて処刑される。そしてその黒幕はスレイマン1世が唯一愛した女性ヒュッレムではないかともいわれている。

この3人の関係性をどう描いていくかが作者としては腕の見せどころだと思うが、宝塚版の場合は、イブラヒムもヒュッレムもスレイマンを想う気持ちは同じながら、ヒュッレムの場合はスレイマンと同じ方向を向いて生きていこうとするが、イブラヒムの場合はスレイマンの治世のために時には意見を違えても信じることをやるという設定になっていた。内政重視のスレイマンに対し、ヨーロッパ遠征を重視するイブラヒムは、背後の安全確保のために宿敵サファヴィー朝とひそかに同盟を結ぼうとするが、実はサファヴィー朝は同盟締結の席でスレイマン暗殺を目論んでおり、イブラヒムはその責任をとって処刑されるという筋立て。

 

全体的な感想。

ミュージカルなんだからもっと歌があってもいいような…互いに想いあいながらもすれ違っていく3人の心情を、ぜひ歌で表現してほしかった。単に好みの問題ですが、初演花組『ブラックジャック』の3人で歌う場面が好きなもので(^_^;)

また、イブラヒムが処刑されてからが少し長いなと。その後の話をサクッとやって終わってもよかったのでは?

面白い題材を選んでいるし、役者もそろってるわりに、ストーリーがやや緩慢で盛り上がりに欠けたように思います。

 

キャストの感想。

スレイマン(桜木みなと)

全方位無敵ですねー。押しも押されぬ3番手スター!

別箱公演を任されるだけある安定感でした。

そしてあふれんばかりの色気!ラブシーンもうまい(笑)!!

髭もよく似合ってました。

 

ヒュッレム(遥羽らら

スレイマンを惑わす悪女として語られることが多いヒュッレム。その美悪女のイメージで夢白さんを想像していたが(ほめてます)、このヒュッレムできたかーと。もともとヒュッレムは「朗らかな者」とかなんとかいう意味で、スレイマンがさずけた名前。おそらくいつも笑顔で楽しい女性だったんだろうと思います。そのイメージ通りのヒュッレムで、いつも笑顔でスレイマンを慕う姿がかわいかった。

遥羽さんは写真で見るより、実際に舞台で動いて魅力的に見えるタイプですね。

 

イブラヒム(和希そら

とにかく主演3人の実力が安定していて、トップコンビと2番手がいない公演とは思えない落ち着き感だった。

このままずんそらで、トップと2番手すぐいけるなという感じ。

 

アフメト(鷹翔千空

スレイマンに反乱を起こす裏切り者。そんな悪役を任されるまでになったんだなあと灌漑深く(笑)。

今回一番挑戦だった人ではないでしょうか。

頑張ってるなーとは思いましたが、まだまだ迫力不足。この経験値を今後の糧にしてほしいです。

 

他に主要な役どころとしては、スレイマンの母である皇太后ハフサに凛城きら(この方地味に女役多いですよね)、スレイマンの第一夫人マヒデヴランに秋音光、スレイマンの妹でイブラヒムの妻ハティージェに天彩峰里。

男役が演れる役が少ないのか、押し出しの強い娘役がいないのか…両方?ハフサやマヒデヴランは男役の方が演じてこそ迫力が出る役かなとは思いますが、秋音さんの方はそこまで印象に残らず。

ハティージェはトルコ版ドラマでは、前半はイブラヒムに恋する優しい皇女、後半母ハフサが死んでからはヒュッレムの手強い敵として描かれている。漫画版では、イブラヒムとヒュッレムが想いあっている設定なので、ハティージェはイブラヒムではなくアルヴィーゼ=グリッティ(『ヴェネツィアの紋章』の主人公ですね)と密かに愛し合っていてヒュッレムとは友人。宝塚版は、ドラマの前半に近い設定だったように思う。

 

観劇が難しい状況になってから、久々にライブ配信で観ることができた宝塚。

表情もよく見えるし、自宅で気軽に視聴できるので、これはこれでいいなあと。

しかし舞台はやはり生が一番!早く自由に観劇できる日が来ることを願います。

興奮冷めやらぬ状態で感想を書き始めましたが、途中保存してまた書こうと思っている間に月日は経ち…細部はもう忘れてしまいました(^_^;)観劇感想というか、備忘録ってことで。