男性不妊専門クリニックを開院して早1年が過ぎ、日本各地でmicro TESEで精子回収不可であった方々から問い合わせと受診が増えてきました。それは米国からmicro TESEで精子回収不可だった症例の29%でFNA Mappingで精子確認可能であったとする報告がなされたためです。特に非閉塞性無精子症のうち最も重症とされるセルトリオンリー症候群においては31%で精子確認可能でした。セルトリオンリー症候群においてはmicro TESEの技術が最も要求されるとされ、本邦でmicro TESEを数多く行っている施設でも精子回収率はせいぜい20%台にとどまっていることから、FNA Mappingの有用性がどれだけ高いかが伺えます。その研究では米国20カ所の都市、米国以外の20か国の計40施設の40人の専門医による施術の結果が集計されており、データの信頼性の高さが伺えます。
それではどうしてmicro TESEが本邦で急速に普及し、FNA Mappingは普及しなかったのでしょうか?その理由は以下です。
micro TESEはそもそも米国の有名な高度生殖医療施設で開発されました。そのためmicro TESEは本邦でも顕微授精を数多く手がける高度生殖医療施設を中心に行われてきました。そして顕微授精を多数手がける高度生殖医療施設にとってはmicro TESEは顕微授精に直結するため、無精子症の治療として受け入れられやすかったと言えます。特に世界一人口当たりの高度生殖医療施設数が多い本邦では、自院を他院に対して差別化できる手段になりえたため、小生が仙台市の施設でmicro TESEの精子回収率と妊娠率を本邦で初めて論文報告してから、急速に全国に広まっていきました。
一方でFNA Mappingは米国の著名な男性不妊専門施設で基本的には顕微受精を実施する高度生殖医療施設とは独立して開発されました。FNA Mappingは精巣のどの場所で精子が作られているかをあらかじめ確認する検査であり、精子が存在するか否か及び存在する場所を明らかとしてからmicro TESEを行います。従って精子が存在しない方にとっては無駄なmicro TESEを行わなくて済む一方、精子が存在する方にとっては2度手間となると考えられました。本邦ではこのような男性不妊専門施設は小生の施設を含めて全国で数か所に過ぎませんので、FNA Mappingが今日まで取り上げられなかったのは全く無理もありません。
FNA Mappingのメリットは精子存在の有無と存在場所を明らかにできることより、切開ラインを精子存在部位に合わせることができ、その結果micro TESEによる精子発見の感度が格段に上がることで、事実FNA Mappingで精子が確認された96%のケースで精子が回収されています。しかも片方の精巣にしか精子が存在しない場合は、精子の存在しない精巣に対する無駄な切開を避けることができます。本邦で不適切と思われるmicro TESEで両側精巣の切開を受けた後、男性ホルモンの低下が顕著になる方も時折見受けられることから、こうした無用な手術の回避の意義は大きいように思われます。さらに精子の存在しないケースに対するmicro TESEを省けることにより、医療費のトータルのコストを下げられることが米国で証明されました。米国で非閉塞性無精子症に対するmicro TESEは20000ドル(約220万円)で、FNA Mappingは6000ドル(約66万円)で実施されているためそのコスト差は大変大きいと言えるでしょう。これはmicro TESEが概ね30~40万円で行なわれてしかも助成金まで支出されている本邦とは対照的な観点と言えます。
そしてmicro TESEとFNA Mappingの普及の差を決定付けた理由はもう一つあります。micro TESEは技術認定制度がなく、その結果ただ手術用顕微鏡を導入しましたという程度のハード面の整備のみで術者の十分なトレーニング無しのまま始められました。特に先進国の中で人口当たりの高度生殖医療施設数が極端に多い本邦ではその傾向が強く出ています。一方でFNA Mappingは技術認定制度が設けられていました。そのためFNA Mappingを行うにあたっては、登録と契約が義務付けられ、教育プログラムと技術的修練を踏んでから試験を通過してから実施しなければならず、そのために必要な契約費用は66000ドル(約726万円)かかるとされました。
そしてその結果としてmicro TESEで精子が見つけられなかったにもかかわらず、FNA Mappingで精子が確認出来るケースが約3割にもなってしまったと考えられます。こうしたFNA Mappingで救済されたケースのデータ集積から、micro TESEで死角になりやすい場所も明らかとなりました。そのため最近になってそうした死角をできるだけ少なくした工夫をmicro TESEに新たに導入したことにより、かつて30%を切っていたセルトリオンリー症候群からの精子回収率は明らかに上昇してきました。実際先月実施したセルトリオンリー症候群3名から連続して全員で運動精子が回収できました。micro TESE 1200症例あまりを経験していたにもかかわらず、さらに一歩前進できたように思います。FNA Mappingを考案された先生を昨年小生のクリニックにFNA Mappingの実施トレーニングのためお招きして食事をした際伺ったことは、これほど高名な医師でありながら、未だに術者として完成したとは思っていないと言う言葉でした。本邦では自分が一番と世間にアピールされている医師や施設が目立つように思われ、対照的な姿勢と思いました。
FNA Mappingを本邦で開始するのは大変ハードルが高いのですが、その真髄を明日の医療に応用することは工夫と創意でできます。精子がいないのはあなたの問題であとは提供精子を使うか諦めるか決めてくださいと放心状態のカップルを突き放すのではなく、医師、看護師、胚培養士、患者とその配偶者が各々の治療の長所短所そして可能性と限界をラウンドテーブルで情報を共有しながら、手術に至るまでのプロセスと手術が終わってからのプロセスをもっと大切にしないといけないと、昨今難民と化したカップルに接してつくづく思います。
それではどうしてmicro TESEが本邦で急速に普及し、FNA Mappingは普及しなかったのでしょうか?その理由は以下です。
micro TESEはそもそも米国の有名な高度生殖医療施設で開発されました。そのためmicro TESEは本邦でも顕微授精を数多く手がける高度生殖医療施設を中心に行われてきました。そして顕微授精を多数手がける高度生殖医療施設にとってはmicro TESEは顕微授精に直結するため、無精子症の治療として受け入れられやすかったと言えます。特に世界一人口当たりの高度生殖医療施設数が多い本邦では、自院を他院に対して差別化できる手段になりえたため、小生が仙台市の施設でmicro TESEの精子回収率と妊娠率を本邦で初めて論文報告してから、急速に全国に広まっていきました。
一方でFNA Mappingは米国の著名な男性不妊専門施設で基本的には顕微受精を実施する高度生殖医療施設とは独立して開発されました。FNA Mappingは精巣のどの場所で精子が作られているかをあらかじめ確認する検査であり、精子が存在するか否か及び存在する場所を明らかとしてからmicro TESEを行います。従って精子が存在しない方にとっては無駄なmicro TESEを行わなくて済む一方、精子が存在する方にとっては2度手間となると考えられました。本邦ではこのような男性不妊専門施設は小生の施設を含めて全国で数か所に過ぎませんので、FNA Mappingが今日まで取り上げられなかったのは全く無理もありません。
FNA Mappingのメリットは精子存在の有無と存在場所を明らかにできることより、切開ラインを精子存在部位に合わせることができ、その結果micro TESEによる精子発見の感度が格段に上がることで、事実FNA Mappingで精子が確認された96%のケースで精子が回収されています。しかも片方の精巣にしか精子が存在しない場合は、精子の存在しない精巣に対する無駄な切開を避けることができます。本邦で不適切と思われるmicro TESEで両側精巣の切開を受けた後、男性ホルモンの低下が顕著になる方も時折見受けられることから、こうした無用な手術の回避の意義は大きいように思われます。さらに精子の存在しないケースに対するmicro TESEを省けることにより、医療費のトータルのコストを下げられることが米国で証明されました。米国で非閉塞性無精子症に対するmicro TESEは20000ドル(約220万円)で、FNA Mappingは6000ドル(約66万円)で実施されているためそのコスト差は大変大きいと言えるでしょう。これはmicro TESEが概ね30~40万円で行なわれてしかも助成金まで支出されている本邦とは対照的な観点と言えます。
そしてmicro TESEとFNA Mappingの普及の差を決定付けた理由はもう一つあります。micro TESEは技術認定制度がなく、その結果ただ手術用顕微鏡を導入しましたという程度のハード面の整備のみで術者の十分なトレーニング無しのまま始められました。特に先進国の中で人口当たりの高度生殖医療施設数が極端に多い本邦ではその傾向が強く出ています。一方でFNA Mappingは技術認定制度が設けられていました。そのためFNA Mappingを行うにあたっては、登録と契約が義務付けられ、教育プログラムと技術的修練を踏んでから試験を通過してから実施しなければならず、そのために必要な契約費用は66000ドル(約726万円)かかるとされました。
そしてその結果としてmicro TESEで精子が見つけられなかったにもかかわらず、FNA Mappingで精子が確認出来るケースが約3割にもなってしまったと考えられます。こうしたFNA Mappingで救済されたケースのデータ集積から、micro TESEで死角になりやすい場所も明らかとなりました。そのため最近になってそうした死角をできるだけ少なくした工夫をmicro TESEに新たに導入したことにより、かつて30%を切っていたセルトリオンリー症候群からの精子回収率は明らかに上昇してきました。実際先月実施したセルトリオンリー症候群3名から連続して全員で運動精子が回収できました。micro TESE 1200症例あまりを経験していたにもかかわらず、さらに一歩前進できたように思います。FNA Mappingを考案された先生を昨年小生のクリニックにFNA Mappingの実施トレーニングのためお招きして食事をした際伺ったことは、これほど高名な医師でありながら、未だに術者として完成したとは思っていないと言う言葉でした。本邦では自分が一番と世間にアピールされている医師や施設が目立つように思われ、対照的な姿勢と思いました。
FNA Mappingを本邦で開始するのは大変ハードルが高いのですが、その真髄を明日の医療に応用することは工夫と創意でできます。精子がいないのはあなたの問題であとは提供精子を使うか諦めるか決めてくださいと放心状態のカップルを突き放すのではなく、医師、看護師、胚培養士、患者とその配偶者が各々の治療の長所短所そして可能性と限界をラウンドテーブルで情報を共有しながら、手術に至るまでのプロセスと手術が終わってからのプロセスをもっと大切にしないといけないと、昨今難民と化したカップルに接してつくづく思います。