今年5月からFNA Mappingを本邦で初めて本格的に開始し、これまでのmicro TESEと異なり、陰嚢を切開することなく精子の存在部位を明らかにできるようになりました。中には他院で両方の精巣に対してmicro TESEを受けられて精子が見つからなかったにもかかわらず、当院でのFNA Mappingで初めて精子の存在が明らかとなった方もおられます。その結果日本中からmicro TESEを受けられて精子が見つからなかった方々が当院を受診されるようになりました。そしてこれまで明らかにされてなかったいろいろな問題が浮かび上がってきました。
その中で最大の問題はmicro TESEを両方の精巣に受けた方々は例外なく血液中の男性ホルモンの濃度が手術前より下がっており、大半の方が手術前の約半分の値となっていたことです。そのため精子がmicro TESEで見つからなかったショックと相まって、易疲労感、鬱状態が顕著となっており、中には骨粗鬆症から骨折をきたした方もおられました。また男性ホルモン低下はメタボリック症候群を惹起することが知られており、micro TESE後に急性疾患を起こして救急車で搬送された方もおられました。このような患者さんたちに共有している事実として、ほぼ例外なくmicro TESE後のフォローを執刀医師から受けておられません。micro TESEを受けるまでは熱心に接してくれるのに、精子が見つからなかった途端に放り出されてしまう方々があまりにも多いように見受けられます。特にこうした手術後のフォロー不足は本邦でmicro TESEを大々的に実施している体外受精施設、中でも婦人科医による執刀が行われている施設で顕著な傾向が見受けられます。
本邦では非閉塞性無精子症からmicro TESEで精子を回収できる確率は平均で30%を切るようになっています。これは米国では50%程度となっているのに対して明らかに低いのです。その原因は人種差にあるという説もありますが、米国と日本の間の医師の技術差もあるように思います。米国は市場原理が医療を支配していますので、自由診療が基本となっています。したがって医師の技量、実績、経歴などはすべて公開されており、患者さんは自由に自分の医師を選べますが、需要と供給のバランスが市場価格を決定する以上、優れた医師に診てもらうには高いお金を払わなくてはいけなくなります。一方日本では社会主義政策の立場から保険診療を基本としており、医療の平等性を維持するため、医師の経歴、専門性、技量のレベルなどの情報公開は法律で規制されています。しかしこれは厳しいトレーニングを経てもそうでなくても同じ手術をしていると扱われるということですから、ここまで専門分化した現代の医療を行うにあたって、医師の技術の進歩にとっては大きな足かせとなります。例えば外国のミシュラン認定レストランで長年私財を投じて厳しい修行を積んでから帰国してレストランを始めても、レシピを見て料理を作る主婦のレベルでレストランを初めても同じとみなされるということと同じです。料理であれば食べて不味かったらもう2度と行かなくて済みますが、micro TESE は高い技術を持って行っても精子が見つからなかったのかどうかは患者さんには決してわからないのです。そして一般に技術が低い術者ほど組織の採取量が多い為、逆に精子は発見しづらくなり、後遺症も大きくなりがちです。
こうした背景からmicro TESEを受けられる方々の多くはインターネットや雑誌を見て有名なところを探して手術を受けているようです。しかし以前のブログ記事でも指摘しましたが、こうした情報は多分にmicro TESEを経営戦略としている体外受精施設によって多額の資金が投じられて操作されており、そうした著名な体外受精施設は自分の施設で精子が見つからなくて、他の施設で見つかったと言われることを極端に嫌う結果、そういう事態にならないよう micro TESEで精巣組織を採取しすぎてしまうきらいがあります。この背景にある心理は白雪姫の物語で継母がナンバ−2となることを決して許せず、白雪姫を抹殺しようとする心理に共通しています。
micro TESEそれ自体はかつて子供を作ることができなかったご夫婦に福音をもたらした素晴らしい治療法です。しかしその手術が体外受精施設の思惑に利用された途端、多くの男性を後遺症で生涯苦しめる結果となってしまいました。現在米国と英国ではmicro TESEを受けて性線機能低下症となった患者団体から集団訴訟が起こっている話を米国で聞いてきました。本邦でもここまで無秩序にmicro TESEが行われていたらいずれ同じ状況になるかもしれません。そうした事態を避けるため、苦労に苦労を重ねてついにFNA Mappingを始めるに至りました。そしてこれ以上本邦で不幸な患者さんを増やさないようにするため、今年9月旭川で開催される日本生殖医学会総会の講習会で当院のスタッフが講師としてmicro TESEを他院で受けられた方々のデータを公表し、以上の問題を公に喚起することになりました。男性不妊治療に携わる多くの医療従事者に聴いていただきたいと願います。
その中で最大の問題はmicro TESEを両方の精巣に受けた方々は例外なく血液中の男性ホルモンの濃度が手術前より下がっており、大半の方が手術前の約半分の値となっていたことです。そのため精子がmicro TESEで見つからなかったショックと相まって、易疲労感、鬱状態が顕著となっており、中には骨粗鬆症から骨折をきたした方もおられました。また男性ホルモン低下はメタボリック症候群を惹起することが知られており、micro TESE後に急性疾患を起こして救急車で搬送された方もおられました。このような患者さんたちに共有している事実として、ほぼ例外なくmicro TESE後のフォローを執刀医師から受けておられません。micro TESEを受けるまでは熱心に接してくれるのに、精子が見つからなかった途端に放り出されてしまう方々があまりにも多いように見受けられます。特にこうした手術後のフォロー不足は本邦でmicro TESEを大々的に実施している体外受精施設、中でも婦人科医による執刀が行われている施設で顕著な傾向が見受けられます。
本邦では非閉塞性無精子症からmicro TESEで精子を回収できる確率は平均で30%を切るようになっています。これは米国では50%程度となっているのに対して明らかに低いのです。その原因は人種差にあるという説もありますが、米国と日本の間の医師の技術差もあるように思います。米国は市場原理が医療を支配していますので、自由診療が基本となっています。したがって医師の技量、実績、経歴などはすべて公開されており、患者さんは自由に自分の医師を選べますが、需要と供給のバランスが市場価格を決定する以上、優れた医師に診てもらうには高いお金を払わなくてはいけなくなります。一方日本では社会主義政策の立場から保険診療を基本としており、医療の平等性を維持するため、医師の経歴、専門性、技量のレベルなどの情報公開は法律で規制されています。しかしこれは厳しいトレーニングを経てもそうでなくても同じ手術をしていると扱われるということですから、ここまで専門分化した現代の医療を行うにあたって、医師の技術の進歩にとっては大きな足かせとなります。例えば外国のミシュラン認定レストランで長年私財を投じて厳しい修行を積んでから帰国してレストランを始めても、レシピを見て料理を作る主婦のレベルでレストランを初めても同じとみなされるということと同じです。料理であれば食べて不味かったらもう2度と行かなくて済みますが、micro TESE は高い技術を持って行っても精子が見つからなかったのかどうかは患者さんには決してわからないのです。そして一般に技術が低い術者ほど組織の採取量が多い為、逆に精子は発見しづらくなり、後遺症も大きくなりがちです。
こうした背景からmicro TESEを受けられる方々の多くはインターネットや雑誌を見て有名なところを探して手術を受けているようです。しかし以前のブログ記事でも指摘しましたが、こうした情報は多分にmicro TESEを経営戦略としている体外受精施設によって多額の資金が投じられて操作されており、そうした著名な体外受精施設は自分の施設で精子が見つからなくて、他の施設で見つかったと言われることを極端に嫌う結果、そういう事態にならないよう micro TESEで精巣組織を採取しすぎてしまうきらいがあります。この背景にある心理は白雪姫の物語で継母がナンバ−2となることを決して許せず、白雪姫を抹殺しようとする心理に共通しています。
micro TESEそれ自体はかつて子供を作ることができなかったご夫婦に福音をもたらした素晴らしい治療法です。しかしその手術が体外受精施設の思惑に利用された途端、多くの男性を後遺症で生涯苦しめる結果となってしまいました。現在米国と英国ではmicro TESEを受けて性線機能低下症となった患者団体から集団訴訟が起こっている話を米国で聞いてきました。本邦でもここまで無秩序にmicro TESEが行われていたらいずれ同じ状況になるかもしれません。そうした事態を避けるため、苦労に苦労を重ねてついにFNA Mappingを始めるに至りました。そしてこれ以上本邦で不幸な患者さんを増やさないようにするため、今年9月旭川で開催される日本生殖医学会総会の講習会で当院のスタッフが講師としてmicro TESEを他院で受けられた方々のデータを公表し、以上の問題を公に喚起することになりました。男性不妊治療に携わる多くの医療従事者に聴いていただきたいと願います。