今月初めの朝日新聞に以下の記事が掲載されました。
“不妊治療、なぜ保険非適用? 国は「疾病」と認めず“ 詳しくは下記サイトご参照ください。
http://digital.asahi.com/articles/ASJ3J55PKJ3JPTIL02V.html?rm=742
お読みになっておわかりになりますように、諸外国では不妊治療に保険適応となっている例もあります。しかし日本では国のスタンスとして不妊は疾病ではないとする観点から保険適応とはせず、私費診療に対して一定の条件を満たす場合において助成金を支給しています。しかし不妊治療がここまで一般的となり、また有効性も増していることから保険適応とすることを検討する時期に来ているとする有識者の意見が紹介されています。
しかし顕微授精を主とした高度生殖医療を保険適応とするには大きな問題があります。それは日本産婦人科学会が公表した採卵1サイクルあたりの妊娠率が5.6%という厳しい現状があるからです。多くの高度生殖医療施設は胚移植あたりの妊娠率のみ公表しておりますが、きちんとした高度生殖医療施設ではこうした偏った情報のみ公開するようなことはしておりません。この採卵サイクルあたりの平均妊娠率は顕微授精で妊娠に至らないカップルがいろいろな高度生殖医療施設をいかに転々としているかを物語っておりますが、これらを全て保険で賄ったら、ただでさえ悲鳴を上げている健康保険組合は破綻に追いこまれる可能性があります。
したがって人口あたりの高度生殖医療施設が世界一多い日本では、もし高度生殖医療を保険適応とするとしたら、諸外国のように施設基準を厳しくして淘汰する必要性に迫られます。しかしこれには相当な反発をくらうことでしょう。またそれを実施したとすれば資金力や政治力の強い施設が生き残ることとなり、質実剛健に診療を実践している施設の方が影響を受けてしまいかねません。また高度生殖医療が保険適応となると医療費削減の観点から治療費の設定は抑えられますから、それまで自由に治療費を設定できていた高度生殖医療施設は減益を余儀なくされます。これも相当な反発をくらうことでしょう。
この記事では高度生殖医療を繰り返して妊娠できず、精索静脈瘤手術で妊娠に至った方が紹介されています。精索静脈瘤手術を日常的に実施している立場からすれば、それは別に珍しいことではありません。
しかし精索静脈瘤手術は保険適応で2480点(24800円)に設定されており、人件費も材料費も賄えず、極めて運営が厳しい現状です。小児の手術や痛みに対して手術をたまにする分にはいいのですが、不妊症例まで全て保険適応とするのは国の方針に反しておりやはり問題があります。この手術を保険適応としているのは教育的観点からたまに実施する大学病院か、入院日数が長い入院患者を多く抱えている病院が平均病床日数を抑えるために手術実施を受け入れているかのどちらかです。小生は保険診療で低位結紮術を年間180例ほど実施しておりますが、手術件数は年々増加しており、症例数が増えすぎると病院に負担をかけてしまいます。特に最も優れた術式である顕微鏡手術の低位結紮術に至っては自費診療でなく保険診療で実施するのはそもそも経営的に無理があると言っていいでしょう。
マスコミはやっとわかってきているようですが、まだまだ精索静脈瘤の手術意義が一般に浸透しているとは言い難い現状です。精索静脈瘤手術は適応が重要で、グレードや精液検査所見などで簡単には決められません。ちなみに小生が手術適応と勧めた方は72%の方が妊娠に至っており、しかもそのうち61%の方は高度生殖医療を必要としておりませんでした。さらに高度生殖医療を併用して妊娠された方々の中には本来的に高度生殖医療が不要であった方々も相当含まれていると予測されます。泌尿器科医である生殖医療専門医は高度生殖医療施設の都合に合わせて手術適応を決めることなく、適切な関係に基づいた連携を通して患者の利益を優先していけるようにしなくてはなりません。そのためには治療施設を選択するカップルにおいても高度生殖医療施設の美辞麗句に踊らされず、高度生殖医療の利害関係とは独立して男性不妊診療を実践する医療施設を選択するのが望ましいでしょう。
“不妊治療、なぜ保険非適用? 国は「疾病」と認めず“ 詳しくは下記サイトご参照ください。
http://digital.asahi.com/articles/ASJ3J55PKJ3JPTIL02V.html?rm=742
お読みになっておわかりになりますように、諸外国では不妊治療に保険適応となっている例もあります。しかし日本では国のスタンスとして不妊は疾病ではないとする観点から保険適応とはせず、私費診療に対して一定の条件を満たす場合において助成金を支給しています。しかし不妊治療がここまで一般的となり、また有効性も増していることから保険適応とすることを検討する時期に来ているとする有識者の意見が紹介されています。
しかし顕微授精を主とした高度生殖医療を保険適応とするには大きな問題があります。それは日本産婦人科学会が公表した採卵1サイクルあたりの妊娠率が5.6%という厳しい現状があるからです。多くの高度生殖医療施設は胚移植あたりの妊娠率のみ公表しておりますが、きちんとした高度生殖医療施設ではこうした偏った情報のみ公開するようなことはしておりません。この採卵サイクルあたりの平均妊娠率は顕微授精で妊娠に至らないカップルがいろいろな高度生殖医療施設をいかに転々としているかを物語っておりますが、これらを全て保険で賄ったら、ただでさえ悲鳴を上げている健康保険組合は破綻に追いこまれる可能性があります。
したがって人口あたりの高度生殖医療施設が世界一多い日本では、もし高度生殖医療を保険適応とするとしたら、諸外国のように施設基準を厳しくして淘汰する必要性に迫られます。しかしこれには相当な反発をくらうことでしょう。またそれを実施したとすれば資金力や政治力の強い施設が生き残ることとなり、質実剛健に診療を実践している施設の方が影響を受けてしまいかねません。また高度生殖医療が保険適応となると医療費削減の観点から治療費の設定は抑えられますから、それまで自由に治療費を設定できていた高度生殖医療施設は減益を余儀なくされます。これも相当な反発をくらうことでしょう。
この記事では高度生殖医療を繰り返して妊娠できず、精索静脈瘤手術で妊娠に至った方が紹介されています。精索静脈瘤手術を日常的に実施している立場からすれば、それは別に珍しいことではありません。
しかし精索静脈瘤手術は保険適応で2480点(24800円)に設定されており、人件費も材料費も賄えず、極めて運営が厳しい現状です。小児の手術や痛みに対して手術をたまにする分にはいいのですが、不妊症例まで全て保険適応とするのは国の方針に反しておりやはり問題があります。この手術を保険適応としているのは教育的観点からたまに実施する大学病院か、入院日数が長い入院患者を多く抱えている病院が平均病床日数を抑えるために手術実施を受け入れているかのどちらかです。小生は保険診療で低位結紮術を年間180例ほど実施しておりますが、手術件数は年々増加しており、症例数が増えすぎると病院に負担をかけてしまいます。特に最も優れた術式である顕微鏡手術の低位結紮術に至っては自費診療でなく保険診療で実施するのはそもそも経営的に無理があると言っていいでしょう。
マスコミはやっとわかってきているようですが、まだまだ精索静脈瘤の手術意義が一般に浸透しているとは言い難い現状です。精索静脈瘤手術は適応が重要で、グレードや精液検査所見などで簡単には決められません。ちなみに小生が手術適応と勧めた方は72%の方が妊娠に至っており、しかもそのうち61%の方は高度生殖医療を必要としておりませんでした。さらに高度生殖医療を併用して妊娠された方々の中には本来的に高度生殖医療が不要であった方々も相当含まれていると予測されます。泌尿器科医である生殖医療専門医は高度生殖医療施設の都合に合わせて手術適応を決めることなく、適切な関係に基づいた連携を通して患者の利益を優先していけるようにしなくてはなりません。そのためには治療施設を選択するカップルにおいても高度生殖医療施設の美辞麗句に踊らされず、高度生殖医療の利害関係とは独立して男性不妊診療を実践する医療施設を選択するのが望ましいでしょう。