来たら問い詰めてやろうと思っていた。妻にもそれを伝えていた。やり過ぎないようにと、くぎを刺されてもいた。彼の来訪は30年前と15年前に次いでこれで3度目。日本では帰省の度に逢って食事を一緒にしたり、彼が経営しているRice-Cafeを訪れたりして談笑している。今回はその店を共同経営している妻に任せ、四人兄妹の一番下の男子、小学6年生を同道していた。
日本では6月、9月はまだ授業がある。なのに校長の許可も得て、6月から9月までの長期世界一周の旅に出た。沖縄、台湾、ベトナム、ネパール、タイ、カンボジア、トルコ、アフリカなど50日程の旅で真っ黒な顔をしてやってきた。ネットにアップされた旅の報告ビデオでは各国の街中の食事の様子や名所旧跡、海辺で遊ぶさまが映っていて旅を満喫している事が分かった。
しかし発表している旅の目的は、息子のこれからの人生の生き方を見つけさせることと書いてあった。彼は15年ほど前にも、小学生だった息子二人を連れ、スペインのCamino de SanTiago 850㎞を1カ月かけ徒歩巡礼、その後も南欧を一カ月旅を続け小学生だった二人に様々な出来事を体験させ人生の糧を得させ様としたこともある。そして地元一宮では“旅をする心”というグループも主宰していて、時々仲間と会合を持ち情報の交換をしてBlogにもそれをアップしている。
日本の学校教育は大きな問題を解決しえないまま、方向、内容が不安定で混乱したままになっているという。少子化で学童の数もどんどん減っていて、学校の統廃合も進んでいるという。今回は息子の義務教育を親が支えると言う責任を、義務教育を施行させる責任者の校長の許可を得ての旅、どうしようもない落ちこぼれと放置されたのか、それとも教育に一言ある親と一緒の海外での課外授業がどんな成果を生むか、そんな実験にもなっているようで、帰国すると旅の体験の発表会も予定されていると言う。
しかし我が家での小学生の一週間の滞在行動からは、旅の目標は親が決めたもので僕は従兄弟との交流と、旅の新しい出会いを満喫するだけと行動しているように見える。英語塾にも通っていると言うけれど、英語で会話ができる自信も準備もなく、何事もパパが話し相手。外国語がうまくなるのは間違ってもいいから話す事、とけしかけているけれど性格からかむつかしいようだ。
今回の旅の目的を改めて聞いてみると、10年続けてきたRice-Caféを今後どのように発展させるか、また、子供の教育環境をどのように求め人生に役立てるかを見つけること。旅のスケジュールは父親が大筋を決め、息子に細部を時々きめさせる。そして旅を通して子供に日本の教育に不足している自主性、独自性を身に着けさせようと、小さな努力をしていることは分かった。
スウェーデンでも9年間の義務教育がある。ある芸能人が当局の許可を得ず勝手に子供を連れ長期休暇を取り、児童の義務教育を受ける権利を侵害したとして、罰金刑を受けるという教育忌避事件があった事から、日本の教育の基本はそこまで無責任に揺らいでいるのかと思った。
結局、人生の迷路でさまようのは、人生の基本を十分に習得しえないまま世の中に出ている人が多いように感じる。何をするにもその道の基本の習得は最小限必要なことで、その上にのみ新しいものを正しく積み上げることが可能なのだ。義務教育はそれを確立させる基本中の基本だ。 彼らは私の本棚から松本健一と赤川次郎の文庫本を見つけ、これから40日かけアイスランド、英国、カナダ、豪州、バリ島など巡る予定で、新学期の始まったスウェーデンを旅立って行った。