BLACK KILLER
監督:カルロ・クロッコロ
音楽:ダニエル・パトゥッキ
主演:クラウス・キンスキー、アントニオ・カンタフォーラ、フレッド・ロブシャム、マリーナ・ラビッシ、エンツォ・プルクラーノ、アントニオ・ダネシ、ジェラルド・ロッシ
1971年 イタリア映画
70年代初頭の晩期マカロニ・ウエスタンの1本。
当然のことながら本邦劇場未公開に終わっていますが、スコアが素晴らしいので案外面白く観れてしまう作品。
ストーリーは、恐ろしい無法者一味が牛耳る町(これマカロニの定番)に、新任の保安官がやってきます。
保安官は無法者兄弟を町から排除することを誓い、これを謎の弁護士が手助けして、
悪党一味の一掃に乗り出す・・・・という、いつものお話。
なんと、悪党にしか見えないクラウス・キンスキーが弁護士役を演じていて、
いつも分厚い法律の本を何冊も持ち歩いているのですが、この中に実は拳銃が仕込んであって、
ここぞという時にぶっ放します。
監督は、冗談みたいな名前のカルロ・コロッコロかと思ったら、
どうやらカルロ・クロッコロとお読みするようです。
劇中、どさくさに紛れて監督自身も副保安官役で出てしまっています 笑。
音楽は、ダニエル・パトゥッキ。
この人はもともとベーシストだそうで、なんと「カサンドラ・クロス」のサントラではベースを弾いているそうです。
往年のマカロニ・ウエスタンとは一線を画す哀愁を帯びたメロディが素晴らしい。
この頃になると、マカロニもシリアスな復讐劇よりもコメディ路線にシフトしてしてきて、
とぼけた感じのスコアや本作品のような哀愁を帯びたスコアが主流になっていったような気がします。
メイン・タイトルはインストで、マカロニ・ウエスタンにお約束の暑苦しい男の主題歌はありません。
しかも、途中から劇伴に変わるので、しっかりテーマを聴くならエンド・タイトルの方がおすすめ。
ファズがかかったようなエフェクトのエレキ、ピアノ、バンジョー、シンセといった楽器が
活躍する躍動感あるスコアです。
一聴するとブルーノ・ニコライの作品かと錯覚しそうになりますが、スタジオ・ミュージシャンとして
ブルーノ・ニコライのスコアの録音にも参加していたそうなので、
その頃スコアのエッセンスを吸収したんじゃないかと思います。
疾走感のあるスコアでは、生ギターをかき鳴らしたり、緊迫感のあるスコアでは、
往年のマカロニベンベン節も登場します。
「夕陽のギャングたち」を想起させるライトなモチーフもあります。
全体を通じてマカロニの美味しいとこ取りで作られたようなスコアで、この人はほんとセンスがいいと思います。
本邦未公開の作品ですが、スコアは一級品です。
サントラは、本国公開当時には発売されませんでしたが、2013年にイタリアのGDMレーベルから
500枚限定でCDが発売され、今ではダウンロード版も入手可能です。