POSSESSOR
監督:ブランドン・クローネンバーグ
音楽:ジム・ウィリアムズ
出演:アンドレア・ライズボロー、クリストファー・アボット、ロッシフ・サザーランド、タペンス・ミドルトン、ショーン・ビーン、ジェニファー・ジェイソン・リー
2020年 イギリス/カナダ映画


デヴィッド・クローネンバーグ監督の息子ブランドンが手掛けた長編映画第2作目。
さすが父親の遺伝子を間違いなく受け継いでいると感じる作風で、おっさん好みな作品に仕上がっています。
暗めで色調を抑えた映像と口数の少ない淡々とした語り口に、ノワールな感触を覚えます。
そこへ時折容赦ない殺人描写が入ってくるので、この落差は強烈です。
ストーリーは、近未来を舞台に、特殊な装置を使って他人の脳を乗っとり、
遠隔でターゲットを殺害する遠隔殺人を請け負う会社に所属する女暗殺者が、
あるミッションで他人の脳に入り込んで、いつものようにターゲットを殺害しますが、
問題が生じて他人の体から抜け出せなくなってしまう・・・というお話。
被害者をメッタ刺しにする容赦ない殺害シーンなどがあるため、R18指定になっています。
そのため、お〇ぱいも普通に出てくるし、合体シーンも通常の作品よりも長めになっています。
CGを使わないことにこだわって製作されたそうで、グロシーンも手作りで余計に生々しくなっています。
元夫や息子との関わりと暗殺の日々の間で葛藤する女暗殺者が、
本当に望んでいたものは何かがラスト近くで分かりますが、
これはかなり強烈です。
こんな映画を作るなんて、クローネンバーグ家は親子共々いい意味で病んでるわ 笑。



音楽は、イギリスの作曲家ジム・ウィリアムズ。
本作品はほぼ雰囲気重視のアンダースコアで、モチーフのようなものはありません。
不穏な空気を音で表現したような、どんよりとしてモア~っとした感じのスコアが多く、
映像を観てからでないと、これだけ聴いてもノイズの塊のようで面白くないかもしれません。
全うなポップスを好む人の面前で聴くと嫌な顔をされるかもしれません 笑。
中には、かつて環境音楽と呼ばれたブライアン・イーノの作品群を思わせるスコアもあります。
アクションを想起させるスコアも少しだけありますが、
これも無機質でインダストリアルな響きとノイズのインパクトで構成されています。
メロディらしいものがあるのは、幻想的なミニマル・ミュージックを思わせるスコアのバックで
リサ・ジェラードみたいな女性コーラスが入るところと、

サントラのラストを飾る7分に及ぶタイトルトラックに登場するピアノぐらいでしょうか。
個人的には、都会の夜の街並みのバックにながれるアーバンな雰囲気を持ったスコアが印象に残りました。
サントラは、「デビルズ・ゾーン」みたいな不気味な被り物の人物が写るジャケのダウンロード版が発売されています。