「あっ!来た来た!」
ヒョクのその声に半身起き上がるとヒチョルいわく
”お偉方の一向”というユジンやダニエルたちが到着しリビングに現れた。
これからここで打ち合わせが始まる。
これからが厄介な時間だ。
案の定、部屋に入ってくるなりダニエルはみんなへの挨拶もそこそこに
キュヒョン目がけてまっすぐ歩いてきた。
そしてあの、憎らしいほどのスマイルでキュヒョンに笑いかけた。
それまで俺の横でため息をついていたキュヒョンは
スッと立ち上がりダニエルに笑顔を見せる。
そしてお互いしっかりと抱き合いハグをする。
ムカつく…
俺はすかさず立ち上がりふたりが離れたところで
手を差し出し、ダニエルの意識を俺の方に向ける。
『どうも。』
「やぁ。元気そうで。」
『おかげさんで。あんたもね。』
「あぁ、俺?俺はキュヒョンくんに会えたからね。
そりゃー気分いいからね。」
ダニエルがいけしゃしゃと言ってのける。
皮肉なんて通じやしない。
…どこから来るんだその自信は。
少しは俺の様に謙虚さってやつを見せるべきだろ。
まったく。
握手した手に思わず力が入る。
俺たちはお互いをけん制し合いながら
自分からは決して力を緩めなかった。
「あの…えっと…」
キュヒョンがその様子をみて頭をかく。
「ダニエルさ~ん!!こんにちは!!
こっちこっち、早く早く!!」
絶妙なタイミングでリョウクがダニエルを呼んだ。
小さく体が揺れ、ダニエルの力がフッと緩む。
おや?
なんとなく…
なんとなく表現できないがなんとなく
おや?と思った。
俺も力を緩め手を放した。
ダニエルはキュヒョンをまた軽くハグしてそこから離れた。
キュヒョンの頬がほんのり朱く色づく。
おいおいおい…
俺はキュヒョンのその顔を見つめて”チッ”っと小さく舌打ちをした。
『なぁ、キュヒョ…』
声を掛けようとした瞬間
「キュヒョンさん!!会いたかったです~!!!」
今度は誰だ!
あぁミノか。
そうなんだ。
こいつもいるんだ。
ミノはみんなを乗せてここまで来た疲れも見せず
キュヒョンの手を取り握手をしてぶんぶんとその手を振る。
「やぁ。ミノ。いらっしゃい!」
そう言って今度はキュヒョンからミノをハグした。
…ゆるさん
俺はこれ以上ないって程目を細めてそれを眺めた。
ミノの目尻が下がり切ったデレッデレの顔で
しっぽを振りながらキュヒョンから離れない。
『はいはいはいはい…もういいからわかったから挨拶はそこまで。』
俺はキュヒョンとミノの間に体を滑り込ませ割って入った。
「あっ。先生。いたんですか?」
ミノは初めて俺に気が付いたかの様にふるまう。
『おい。それ本気で言ってるのか?』
「えぇ。ぜんっぜん気が付きませんでした。」
ミノは誰かにほめてもらいたいとでも言うかのように
胸を張りそんなことを言ってのけた。
まったくこいつは…
『お前…よく言うよ。』
そう言って俺よりちょっと背の高いミノをチラッと見上げて
思いっきりその額にデコピンをくらわしてやった。
「いってぇ~!!!うわぁっ!いって~!!」
と額をごしごし擦りながらミノがのた打ち回る。
ヒョン!と俺の腕をたたくキュヒョンをまぁまぁまぁと
手で制しながら大丈夫だからとしたり顔でうなずく。
まったく子供かよ!
とキュヒョンがまた俺の腕をたたく。
俺は満足感にうんうんとうなずきながらキュヒョンを抱き寄せる。
「お前、ほんっと学習しねぇ~なぁ~ほらこっち来いって。」
ヒニムが間に割って入り、額を真っ赤にして心外だと
泣き言をいうミノの腕を引っ張り連れて行った。
よしよし。
一人ずつキュヒョンから遠ざけることに
成功した俺は大きくうなずきキュヒョンに向かって
親指を立てグッ。っと合図した。
ポカーンと口を開けたキュヒョンが
あきれ顔で首を振り振り肩に回した俺の手を払いのける。
が、俺の手はまたキュヒョンの肩を抱く。
払う。
抱く。
払う。
抱く。
払う。
抱く。
しばらくそれを繰り返していたところで背後から声を掛けられた。
今度は誰だよ!
と最大限に眉を寄せ邪魔をするなとばかりに
振り向くと、ユジンが立っていた。
「キュヒョン。元気そうね。シウォン。あなたも元気そうで何より…
って何よこの髭。自分の魅力が増すとでも思ってるの?」
ユジンの辛辣な言葉が俺を全否定した。
そして俺の顎をグッとつかみ右へ左へクイクイッと動かす。
「あなた以外に濃いのね…
キュヒョン。こういうのがいいの?あなたの好みなの?」
いきなりそんなこと言うから
キュヒョンが”な、なに?”と上ずった声を上げながら
真っ赤になってしまった。
さっきの剃る剃らないの話を思い出したに違いない。
「やだ。なに朱くなってるのよ。どうかしたの?」
ユジンが聞くと”なにもない”とキュヒョンが左右に首をブンブンふる。
「まったくおかしな子ね。
シウォン。これ、明日までにはなんとかしてちょうだいよね。」
ユジンが俺の頬をピタピタっと叩き有無を言わせない圧でたたみかけてくる。
『でもな。名だたる著名人たちはな、みな髭をたくわえてるんだぞ。
スティーブジョブズにスピルバーグえっと…ほら…リンカーンも…』
俺は最大限の抵抗をして見せた。
が、ユジンの”シウォン、黙って。”
の一言で脆くも吹き飛んでしまった。
『あぁ…善処する』
俺はため息と一緒にそう一言答えた。
そしてミーティングという名の打ち合わせが始まった。
もう一人誰か来るらしいが遅れているらしい。
その人の紹介はあとでということで明日のパーティーの趣旨と
各々の役割が言い渡された。
そういえば…
招待状が届いてるとうちから連絡が来てたっけ。
ってことはキュヒョンにも届いてるはずなんだが…
打ち合わせも終盤にかかったころ、
遅れていた人物が到着した。
「あっ!ミーミ!!」
手元の資料に目を通していたが
キュヒョンのその声に反応して思わず顔を上げた。
”遅れてすみません”と入ってきたのは
キュヒョンのいとこのチョウミだった。
明日の会場の取り仕切りとケータリングで
チョウミのホテルから人をよこすそうだ。
ミーミの紹介も終わり、こうしてメンツが揃ったところで
取り急ぎの打ち合わせは終わった。
『なぁキュヒョ…』
「ミーミ!」
「キュヒョナ!」
キュヒョンがチョウミに駆け寄りチョウミに飛びついた。
…チッ
声を掛ける間もなかった。
厄介で一番どうしようもない相手。
俺はうれしそうに抱き合う2人をしばらく見つめてから
小さく舌打ちをし、天井を見上げジーザスとつぶやいた。
cont
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なかなかゴールできない…
(>▽<;; アセアセ