結局。
結局俺たちは会食に20分遅れてしまって
ユジンに大目玉をくらった。
でも。
でもユジンも今までと違う俺たちの雰囲気に多分気が付いてたはずだ。
だってほんの一言でお小言から解放されるなんて
本当だったら考えられなかった。
ヒョクとリョウクの視線を感じて
手を軽く上げて大丈夫だと合図すると
2人が大きな丸を頭上に作っておどけて俺を笑わす。
俺たちはそれぞれ案内された席についた。
ダニエルさんが経営陣サイド。
ヒョンはドクターサイドで
俺はヒョクとリョウクや事務方が
座るサイドへ案内された。
「結果オーライ?」
ヒョクが隣に座った俺を肘でつつく。
「うん…」
俺は一言だけ答えてグローブの入ったリュックを足元に置いた。
「預けてこなかったのか?」
と聞かれたけど、どうしてもこれは手元に
置いて起きたくてそのまま預けずに持ってきた。
向かいの席のリョウクが親指を立てて
”よかったね”と声に出さずに口を動かした。
そんなリョウクの隣の席が空いていた。
遅れてきた俺たち3人の他はみんなそろってるし…
不思議に思ってヒョクに誰が来るのかと尋ねた。
「それが俺達にもわからないんだよ。」
そういいながらヒョクも不思議そうに首をかしげた。
「あっ、あの人…」
マイクを手に乾杯の音頭を取ろうとしてる人を見てリョウクが指差した。
「お。あれ、お前と先生が助けた人だろ?」
俺は体を少し捻るとその人を見た。
すっかり良くなったようで顔色もよく安心した。
乾杯の声があちらこちらで上がり盛大な拍手で会食は幕を開けた。
「さぁ、こちらへ。」
ミーミの声がしてリョウクの隣の席へ誰かを案内してきた。
「すみません。遅れました。」
大好きなスープを貪るように味わっていたが
その声に聞き覚えがあって顔を上げるとそこに思わぬ人物が立っていた。
「え?ミノ?」
俺はそのままポカンとミノを見上げた。
「やぁ、どうもキュヒョンさん!こんにちはみなさん。」
白いシャツに濃紺のスラックス姿のおたく仲間…
いや、警察の白バイ隊のミノが抜群の笑顔で笑いながら
たっていた。
「なんだよ。どーしたんだよ!なんでここに?」
俺は立ち上がり差し出された手を取りがっちりと握手をした。
「あぁ~この前の白バイの警察屋さん?」
リョウクが面白そうに笑う。
「そうです。警察屋さんです。
あっ、最も二日前にやめたんですけどね。」
「え?警察やめたの?」
「はい。やっと退職できました。」
ミノがグラスに注がれたシャンパンを一気に飲み干した。
「どういうこと?」
「え?だから警察やめたんです。」
「いや、ね。ミノくん。みんなそういうことじゃなくて
その警察を辞めた君がなんでここに現れたのか
それが聞きたいってことなんだけど…」
ヒョクがグラスにシャンパンを継ぎ足す。
「え…?あぁ…え?もしかしてみなさん聞いてないとか…」
ミノが面白そうに周りを見回して様子を伺う。
「うん。もちろん知らない。」
「あれ?いやぁ~そうなんですか?
えっと…いや、その、困ったなぁ…」
ミノは頭を掻き掻き苦笑いで俺をみた。
『あっ…』
「おい。あいつ。」
俺とヒチョルが同時に声を上げた。
「ほらあいつ。キュヒョン達と話してるやつ。」
ヒチョルがそう言いながら指差す方を見ると
キュヒョンの言うところのおたく仲間が
キュヒョン達と一緒の席に頭を掻きながら座っていた。
「確かあいつ白バイ乗ってるやつじゃなかったか?」
『あぁ、そうだ…』
「え?なんでそんなやつがここにいるんだ?」
トゥギが不思議そうに言う。
そんなの俺が聞きたい。
今までも何度かキュヒョンからも名前が出て
気になってはいた。
だいたいあいつはキュヒョンにかなり懐いていて
ほら…その…いわゆる”あぶない”ヤツな気がしている。
キュヒョンはただのゲーマー仲間のかわいい後輩だというが、
向こうはそうじゃない。
向こうはそうじゃない。
それは同じ匂いがする奴ならすぐわかることだ。
俺の顎にグッと力が入り向こうのテーブルで
ダニエル達と談笑するユジンをジッとにらんだ。
しばらくするとユジンが立ち上がり、マイクを手に取り
遅れてきたミノの紹介を始めた。
「ドクターカーの運転を任せることになりました。」
ユジンはミノの事をサラッとそう紹介した。
そしてミノがそれを受け、みんなにあいさつをした。
警察出身と聞いて、そこにいた誰もが納得の声を上げた。
プライバシーに触れることが多い中、
”警察出身”と言うのはアピール度がグッと増し、
信頼度アップのセールスポイントになる。
ユジンはそこまで考えてたんだな…
ドライバーからして保証できる人材。
そう言った身分の明確さもこれから売りなんだと
そういうことらしい。
「ねぇ、これってあいつを警察から引き抜いたってことか?」
ヒョクが驚きの声を上げた。
「なんか、さすがだね。ユジンさんったら。」
さすがのリョウクもびっくりしてるようだった。
でも一番驚いたのは俺だった。
あいつは警察の仕事に憧れて憧れて
白バイに乗りたくて乗りたくて、
隊での仕事に誇りを持っていて
正義感にあふれてるようなヤツなのに
その警察を辞めてうちの病院に来るなんて…
ユジンの仕業とはわかってるけど
一体ユジンはどんな話しをし、条件を出したんだろう。
フッとヒョンと目が合った。
何とも言えない表情で俺をみる。
”あいつのお前を見る目が気に入らない”
そう言っていたヒョンの言葉を思い出しながら
これからの事を思って目の前で嬉しそうな顔をする
ミノに作り笑いをしながら思わずため息がでた。
「よし。次行くぞ~!」
トゥギ先生の一声でみんながわぁ~っと声を上げた。
このままミーミのホテルの最上階のラウンジに移動するらしい。
正直なところ体がしんどかった。
でも盛り上がってるところ水を差すのも…
俺はしかたなくみんなの後について歩き出した。
『大丈夫か…』
いつの間にかヒョンが側にピタリとくっついてきた。
「うん…大丈夫。」
俺はちょっと顔を上げヒョンにそう言った。
「いつもの部屋、用意してもらったから。
ツラかったら休むといい。」
ヒョンはそういうと優しい笑みを浮かべ俺を見ながら
一瞬肩を抱いた。
一瞬肩を抱いた。
俺はその笑顔に胸がザワついたのを
悟られまいとわざと無視した。
でも、ヒョンが触った肩が熱くなる。
…ヤバい。このままじゃ俺…
「キュヒョンくんちょっと。」
誰かに名前を呼ばれた。
それはダニエルさんだった。
俺は足を止めた。
「はい。なんですか?」
「ちょっといいかな。」
そういってダニエルさんが近づいてきた。
俺の目の前に立ったダニエルさんが手を差し出した。
…携帯?
「これ。持っていてくれ。」
「え?」
「何か困ったことがあったらこれで電話を。」
「はぁ…え?」
「さぁ。持っててくれ。」
そういうとダニエルさんが俺の手を取り
それを手の上にポンと乗せた。
「さぁ。持っててくれ。」
そういうとダニエルさんが俺の手を取り
それを手の上にポンと乗せた。
『ダニエル。なんだそれ。』
俺が手の平に乗せられたそれをどうしたものかと
ジッと見つめていると、ヒョンが俺の肩越しに覗き込んで言った。
「別に。お前には関係ない。」
『はぁ?』
「お前がキュヒョンくんを困らせたらこれで知らせてもらおうと思ってな。」
『なんだよそれ。俺がいつそんなことを。キュヒョンそんなもの突き返せ。』
「俺はキュヒョンくんと話してるんだ。お前には関係ない。」
『はぁ?関係ないだと?関係ないってなんだよ。
キュヒョンの事で俺に関係ない事なんてないぞ。』
「お前はそこら辺の若造か?なんだその安っぽい独占欲は。」
『や、安っぽい?俺のキュヒョンへのこの思いが安っぽだと?』
「あぁ、ぺらっぺらの薄っぺらだ。なんだいちいちキュヒョンくんの尻を
追いまわして…あっ、すまないキュヒョンくん。言葉のチョイスがよくなかったな。」
「あっ、いえ…別に…あの…」
「こいつの事は気にしないでいいから。とにかく気休めだと思って
ただ持っていてくれればいいから。」
「はぁ…」
『いや、ダメだキュヒョン。そんなものはダニエルに返すんだ。』
「え?あっ、でも…」
「シウォン。お前しつこいぞ。俺はキュヒョンくんと話してるんだ
お前は黙っててくれないかなぁ。」
『な…!』
ヤバい。
このままじゃまためんどくさいことにあるような気がして
ちょっと焦った。
「ヒョン。ちょっと黙ってて。」
思わず口からそう言葉が飛び出した。
『キュヒョン!!それはないだろ!』
ヒョンがオーバーリアクションで両手を広げ天を仰いだ。
「いいから黙って!で、ちょっと外してくれる?5歩下がって。」
俺はちょっと強い口調でヒョンに少し下がってるように言った。
「ダニエルさん。一つ聞いても…ヒョン!来ないで!」
俺がダニエルさんとグッと距離を縮めて小声で話し始めたので
5歩下がったヒョンがまたそっと近づいてきた。
ヒョンが慌ててまた下がる。
それを確認して、さっきよりさらにダニエルさんに身を寄せて
もう一度聞いた。
「ダニエルさん。これ…ヒョンのためにですよね?」
「……」
沈黙が答えだった。
「一つだけいいですか…ヒョンは俺のものですから。
そこは譲れないです。それでもいいですか?」
「……」
ダニエルさん大きく首を縦に振り微笑んだ。
沈黙はどんな言葉より肯定的だった。
「わかりました。預かります。何かあったら必ず連絡します。」
そう言ってその携帯をポケットに入れた。
「ありがとう。本当にありがとう。」
そういうとダニエルさんがいきなり俺をハグをした。
ただ感謝されてるだけなんだけど、
傍から見たらそれはものすごい愛情表現で…
ヒョンの悲鳴に近い声が背後で聞こえた。
その声は1キロ先でも聞こえたに違いないなかった。
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俺が手の平に乗せられたそれをどうしたものかと
ジッと見つめていると、ヒョンが俺の肩越しに覗き込んで言った。
「別に。お前には関係ない。」
『はぁ?』
「お前がキュヒョンくんを困らせたらこれで知らせてもらおうと思ってな。」
『なんだよそれ。俺がいつそんなことを。キュヒョンそんなもの突き返せ。』
「俺はキュヒョンくんと話してるんだ。お前には関係ない。」
『はぁ?関係ないだと?関係ないってなんだよ。
キュヒョンの事で俺に関係ない事なんてないぞ。』
「お前はそこら辺の若造か?なんだその安っぽい独占欲は。」
『や、安っぽい?俺のキュヒョンへのこの思いが安っぽだと?』
「あぁ、ぺらっぺらの薄っぺらだ。なんだいちいちキュヒョンくんの尻を
追いまわして…あっ、すまないキュヒョンくん。言葉のチョイスがよくなかったな。」
「あっ、いえ…別に…あの…」
「こいつの事は気にしないでいいから。とにかく気休めだと思って
ただ持っていてくれればいいから。」
「はぁ…」
『いや、ダメだキュヒョン。そんなものはダニエルに返すんだ。』
「え?あっ、でも…」
「シウォン。お前しつこいぞ。俺はキュヒョンくんと話してるんだ
お前は黙っててくれないかなぁ。」
『な…!』
ヤバい。
このままじゃまためんどくさいことにあるような気がして
ちょっと焦った。
「ヒョン。ちょっと黙ってて。」
思わず口からそう言葉が飛び出した。
『キュヒョン!!それはないだろ!』
ヒョンがオーバーリアクションで両手を広げ天を仰いだ。
「いいから黙って!で、ちょっと外してくれる?5歩下がって。」
俺はちょっと強い口調でヒョンに少し下がってるように言った。
「ダニエルさん。一つ聞いても…ヒョン!来ないで!」
俺がダニエルさんとグッと距離を縮めて小声で話し始めたので
5歩下がったヒョンがまたそっと近づいてきた。
ヒョンが慌ててまた下がる。
それを確認して、さっきよりさらにダニエルさんに身を寄せて
もう一度聞いた。
「ダニエルさん。これ…ヒョンのためにですよね?」
「……」
沈黙が答えだった。
「一つだけいいですか…ヒョンは俺のものですから。
そこは譲れないです。それでもいいですか?」
「……」
ダニエルさん大きく首を縦に振り微笑んだ。
沈黙はどんな言葉より肯定的だった。
「わかりました。預かります。何かあったら必ず連絡します。」
そう言ってその携帯をポケットに入れた。
「ありがとう。本当にありがとう。」
そういうとダニエルさんがいきなり俺をハグをした。
ただ感謝されてるだけなんだけど、
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ヒョンの悲鳴に近い声が背後で聞こえた。
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