「先生、シウォン先生。大丈夫ですか?何かありましたか?」
『いえ、大丈夫です。すみません。続けましょう。』
シウォンはカンファレンスの途中だった。
今日のカンファレンスは名立たる教授たちが勢ぞろいしていて
シウォンからの報告に耳を傾けている。
ウニョクからの電話で一気に頭に血が昇り、、
今すぐウニョクの所に飛んでいきちゃんと話を聞きたいところだが
さすがにこの場を離れる訳にはいかなかった。
なんとか電話を切ってものの、しばし考え込んでしまった。
(キュヒョンがあいつと会うだと?あの救命士野郎・・・)
シウォンは以前駐車場で見かけた2人の姿を思い出して
今すぐこの場から駆け出し、ウニョクを捕まえて
詳しい話を聞きたい衝動と戦っていたが
とにかく、この場をちゃっちゃと収めてしまおうと
頭を切り替えるしかなかった。
☆
『あぁ、ウニョクか?今出かけた。あぁ、わかった。
大丈夫だって。気が付いてないから。じゃ、例のところで・・・』
『え?明け?だからなんなんだ?若いんだから3日ぐらい寝なくても大丈夫だ。
ごちゃごちゃ言ってないで、真っ直ぐきてくれよ!頼んだぞ、ウニョク!』
電話を切ると、メガネをかけ、とりあえず地味めの洋服を身に着け目的のカフェへ向かった。
☆
「やぁ、ここ、ここ!」
「あっ、ジョンファさん。こんにちは。待たせちゃいましたか?」
「いや、僕も今来たところだよ。どうぞ、かけて。」
「あ、すみません。失礼します。」
「何にする?ここのおすすめ、フルーツアイスティー。
すごくおいしいけど。フルーツ大丈夫?」
「あっ、えぇ。大丈夫です。」
「じゃあ、決まりね。それと・・じゃぁ、これで。」
挨拶もそこそこにジョンファがオーダーを頼んでくれた。
キュヒョンは初めて来たカフェのおしゃれなたたずまいに
周りをキョロキョロと見渡した。
女の子もしくはカップルばっかりみたいだけど・・・
ジョンファはなれているようで別に気にしてる風はなかった。
「どうした?キュヒョンくん。」
「あっ、いや、初めてなんで物珍しくて・・・」
「あぁ。今度、彼女でも連れてこようかな・・・とか思っちゃった?」
「え?違いますよ。俺、彼女いないし・・・」
「え?いないの?キュヒョンくんはものすごくモテそうだけど・・・」
「ちょっ、何言ってるんですか。モテませんよ、全然。」
「またまた~」
「ホントですってば!」
「わかった、わかった。そんなムキに否定しなくて大丈夫だよ。」
「いや別にムキになってなんか・・・」
「キュヒョン君はほんと素直でかわいいんだね。」
「え?」
ジョンファさんがあまりにも軽く言うもんだから
ポカーンとしていたら頭を撫でられ、頬を軽くその指が滑った。
あからさまに避けるのもなんだからされるがままにしてたけど・・・
それがどうも誤解されてしまったみたいで・・・
”彼女”はいないけど”彼氏”がいるって言った方がよかったのかなぁ。
いや、ダメだろ。
そんなことを思いながら”ふぅ~”と大きく息をひとつつき
運ばれてきたフルーツティーに入っていたキウイの欠片を口に頬張った。