「もういいって言ってるじゃないですかっ!」
『キュヒョ~ン。何怒ってるんだよ!本当の事言っただけじゃないかぁ・・・』
「本当の・・・こと・・・って・・・だからそういうこと言わないでいただけますか?!」
『え?何が悪いんだ??そんな風に言われる覚えないぞ?』
「あぁ~もーこれだからヤダ!!」
『ヤダって・・・おい。ひどいじゃないかそれ。これでも俺傷つきやすいだぞ。』
「はぁ?何言ってるんですか。」
『まぁ、とにかく落ち着いて・・・さぁさぁさぁ、ベッドへ戻ろう』
「だから、どうしてそうなるんですか?!」
『キュヒョナ・・・照れちゃって・・・かわいい・・・
でも、その敬語はいただけないな・・・』
「触らないでください。」
『どこ行くんだよ』
「実家に帰る!!!」
『えっ?実家?!って・・・おい、そこは俺のしょ(バタン!)さいじゃないか・・・』
#シウォンside
「実家に帰る!!」って、新婚の嫁さんかよ・・・(ニヤリ)
『おい、そこは俺の書斎じゃないか。』そう言おうとしたら、目の前でドアが閉まった。
『参ったな・・・』とつぶやきながらノックしようとしたところで不意にドアが開き、
キュヒョンが中から手だけだし、一片の紙をドアに張り付け、またドアを閉め
ガチャリと鍵をかけられた。
張り付けられた紙を見ると
”규(ギュ)の実家。不審者入るべからず”
となっていた。
(おいおい、不審者って俺の事かよ。っていうか、규の実家って・・・)
あまりの可愛さにシウォンはクスクス笑ってしまった。
キュヒョンは前からこのシウォンの書斎が気に入ってるようで
姿が見えないと思うとこの部屋に入り込んでくつろいでいる事が多い。
シウォンが書斎で仕事をしている時などは、タブレットを持ち込んで
ソファーの上で何時間一緒に過ごすことがある。
”そんなところでやってないで、リビングに大きなTVもあるんだからあちらでやったらどうか”
と聞いたら、迷惑なのかと聞いてきたのでそれきり好きにさせている。
心落ち着くクラシックが流れるその空間は静かに時間が過ぎていく。
ふっと視線を感じて顔を上げるとキュヒョンがじっとこちらを見ていることが多々ある。
ん?と目線を送ると頬をピンクに染めながら、慌てて目をそらす。
反対に目の前でゲームに夢中になり、ころころ変わる表情がかわいくて
自然と笑みがこぼれ、しばらく見つめてしまうこともある。
するとそんな視線に気がついたキュヒョンがこちらを見るので
コホン・・・とわざとらしく咳払いして目線を外す。
そうするとキュヒョンは何も言わずまたタブレットに目線を落とす。
それを見計らってもう一度キュヒョンを見ると、耳まで赤くなってる姿が
何とも微笑ましく年甲斐もなく心が浮足立ってしまう。
そんな視線での戯れも二人にとっては大事な時間となっていた。
前に一度何でそんなに自分の書斎が好きなのか聞いたことがあったのだが、
「シウォナのすべてを感じることが出来るから・・・」と言っていた。
そんな書斎を”実家”と称するキュヒョンを今すぐこの手で抱きしめたいと
思うのは極々当たりまえなことだと思った。
#キュヒョンside
はぁ・・・またやっちゃった・・・
でもシウォナがあんまりにも・・・恥ずかしいこと言うから・・・
どうしていいかわかんなくなっちゃってここに逃げ込んじゃったのだ。
このシウォンの書斎は置いてある家具はもちろん書棚に飾ってある
マントルピースひとつひとつにまでシウォンのこだわりが現れていて
この空間全体がシウォンを感じる空間で、その優しさに包まれいるかのように
居心地がいい書斎だ。
だから思わず「実家に帰る!!」と言って、まだそのままにしている尞の自室ではなく
この部屋に駆け込んでしまった。
シウォンがデスクで仕事をしている間、このソファーに座って過ごす時間は
何物にも変えがたく、永遠に続けばいいのに・・・って心から思っている。
デスクに座って仕事をしているシウォンをこっそり盗み見するのが
ひそかな楽しみだった。
ただあんまり見つめてるとシウォンがこっちを見るから焦ってしまう。
そんな自分のおたおた感を知ってか知らずかいつもやさしく微笑を返してくれる。
そんな時、(あぁ、俺ってホントにこの人の事好きなんだなぁ)って実感する。
キュヒョンはいつも座りなれたソファーに腰掛け、ふぅ~と息を一つ吐いた。
☆
『・・・ヒョン、キュヒョン・・・』
「ううん・・・」
『キュヒョン・・・ここじゃだめだ・・・風邪ひいちゃうぞ』
「ん・・・な、なぁに・・・」
『ほら、掴まって・・・』
子どものように目をこするキュヒョンを抱き上げた。
「眠いよ・・・」
『そうだな・・・さぁ、ベットへ行こうな・・・』
「ぃや・・・シウォナ・・・変なことするからヤダ・・・」
『変なこと?』
「そう、変なこと・・・でも・・・」
『でも?』
「・・・好き」
腕の中のキュヒョンがのどの奥で笑った。
『キュヒョナ・・・愛してるよ』
「パボ・・・」
『あぁ、確かにそうだな・・・』
シウォンはニッコリ微笑みエクボを見せながら
そっとキュヒョンをベットへ降ろし、優しくくちづけた。