「おい。あいつらいったいなんなんだ?」
ヒチョルが店の奥のブースに集まったメンバーを見ながらうなった。
「なんなんだ?って・・・そう言われても・・・」
ウニョクも思わぬ展開に面食らっていた。
「なんか、きゃっきゃ、きゃっきゃしてるぞ。」
ヒチョルが苦々しく言った。
「えっと・・・女子会?」
「はぁ?女子会?」
「え・・・?女子会?」
イェソンの言葉にヒチョルとウニョクが同時に問い返した。
「どう見たって女子会でしょ。あれ。」
☆
「うるさい!うるさい!うるさい!みんな黙れっ!!!」
ほんの数十分前、キュヒョンの怒鳴り声にみんなが凍りついたとき、
一番最初に声を発したのはリョウクだった。
「キュヒョン・・・大丈夫? さぁさぁさぁ、こっちおいでよこっち。」
リョウクはキュヒョンの手を引き店の奥の方のブースへと誘った。
2人に続いてドンヘ、ソンミン、そしてイトゥクもそちらに移動した。
キュヒョンは一刻も早くここから出て行きたかったが、
みんなに囲まれてしまってそのタイミングを逃してしまった。
「キュヒョン・・・なんかごめん。僕のせいで・・・」
ソンミンがつぶらな瞳でキュヒョンを見上げ謝った。
「え・・・?別にミニのせいじゃないよ。」
「ホントに悪気はなかったんだよ。」
「ホントに・・・ミニのせいじゃ・・・」
キュヒョンは消え入りそうな声でつぶやいた。
しばらくの沈黙の後、リョウクがまた口火を切った。
「ねぇねぇねぇ、シウォン先生さ、ホントにキュヒョンの事大好きなんだなぁって思わなかった?」
リョウクが両手を口に手をあてふふふっと笑った。
「そうそうそう!俺が何言っても”キュヒョンがあぁ言った””キュヒョンがこう言った”
キュヒョンがキュヒョンがって・・・いい加減にしろよ!って言っても止まらないし。」
ドンヘが不服そうに口を尖らせると
「そうそうそう!僕がいくらこの姿で慰めてもぜーんぜんムシ。自信あったのになぁ。」
ソンミンが肩を竦め小首をかしげた。
そこからは堰を切ったようにみんなでシウォンの話で盛り上がった。
その話はすべてシウォンがキュヒョンの事をどれだけ大事に思っているのかがわかるようなことばかりだった。
(シウォナの奴、みんなの前でいったい何はなしてんだよ・・・)
だんだん肩の力が抜けてきたキュヒョンは一人で凹んでいるのがなんだかばからしくなってきた。
そんなキュヒョンの心を知ってか知らないでか
「キュヒョン。お前だって本当はシウォンと仲直りしたいんだろ?」
とイトゥクがズバリ聞た。
キュヒョンは少し躊躇ったが、みんなの視線を浴びながらコクリと小さく頷いた。
「おっとけ~!」とリョウクが小さく声を上げハグした。
「キュヒョンはさ、頭がいいから何でも頭で考えちゃうから、ここが呼びかけてもなかなか気がつかないのかなぁ~って心配してたんだ~。でもよかった。気が付いてくれて。」
リョウクがキュヒョンの胸をツンツンと指で突っついた。
「なぁキュヒョン。シウォンいらないんだったら俺がもらっちゃうよ~。」
ドンヘがキュヒョンの頭をポンポンと撫でながら、これ以上ないってくらいのイケメンの笑顔を向けた。
「え?だ、ダメです。あの人は俺のもんです。あの人を心底へこますことが出来るのは俺だけだから。」
キュヒョンがきっぱりと言ってのけるとみんなが一斉に笑った。
「そうだ。その意気だ。
さぁ、じゃぁ、あそこでカウンターの一部になっちゃうんじゃないかってくらいうなだれてるあいつ、
何とかしてやってくれよな・・・」
イトゥクの優しい言葉にキュヒョンは心が熱くなるのを覚えた。
☆
「なぁ、なんだかあっち、すっげー盛り上がってるけど・・・どうなってんだ?」
「あっちは・・・リョウクがいるから大丈夫だ。イトゥクもいるし。問題はこっちだ。」
ヒチョルの問いにイェソンが横でうなだれてるシウォンを見ながら答えた。
「シウォン先生、ほんっと不器用っすよね。こんな不器用だとは思わなかったなぁ。
医者としてはものすごーく尊敬してますけど。一応。」
カウンターにおでこをくっつけたまま突っ伏してるシウォンの頭を突っつきながらウニョクがクツクツと笑った。
「もうさぁ、お前ら別れろ!!そうだ別れろ!!それが一番いい。そうすりゃーみーんな平和だ。
そうやってウジウジされてんのウザったすぎる!!」
ヒチョルが早口に捲くし立てシウォンにヘッドロックをかけた。
「なぁ。俺がかわいい子紹介してやるよ。もうキュヒョンなんてやめて明るい男女交際。これにしとけ!
それがいいって。なぁ、そうしろそうしろ!」
「無理だ。別れるなんて、無理に決まってるだろ。キュヒョンしかいらない。キュヒョンじゃなきゃいらない。
キュヒョーン・・・。」
「あぁ~、ウザい。ウザったすぎる!!ジョンウン何とかしろよ!」
「だから、キュヒョンしか無理だって言ってるだろ。まぁ、落ち着けって。」
イェソンがヒチョルの肩をポンポンと叩いた。