
「おい!いったい今度は何が原因であーなったんだよ!」
イラついた声をあげ、ヒチョルが頭を小突きながらウニョクの隣へ腰を下した。
「ヒチョル先生、イッタいなぁ~。俺にあたるのなしですよ~。」
小突かれた頭を撫でながらウニョクが口を尖らせた。
「あん?じゃぁ、なんで俺のドンヘの腰にあいつがしがみついてんだよ・・・」
「知らないってば。俺が来た時からあぁなんだから。」
「なんでリョウクまでいるんだよ。」
「あぁ、リョウク?俺たち一緒に遊んでたから。」
「あいつ、ジョンウンとこの看護師だったよな。で、お前もいるんだ。」
ヒチョルはイェソンを一瞥してグラスの水を一息に流しこんだ。
「あぁ、リョウクとウニョクに呼ばれたんでね。」
イェソンも呆れ顔で頭を左右に振った。
「で?なんなんだよあいつ。何で抜け殻になってんだよ、シウォンのやつ。」
「だから、知らないんだって。それを聞き出そうとドンヘとリョウクが頑張ってるんだよ。」
「わかってるのは、キュヒョンに家を閉め出されて、口聞いてもらえない状況だって事だけ」
「なんだよ、またあいつらの痴話げんかのせいでこれか?どうなってんだよ!」
ヒチョルが尚もウニョクに詰め寄り羽交い絞めにしようと首に手をかけたところで
「ごめんなさい。たぶん僕のせいなんだよ。」
みんなが一斉にその声の方を見るとそこにはヨジャ姿のソンミンが小首を傾げて立っていた。
「え・・・?ダレ?」
「え・・・?も、もしかしてお前・・・」
「ソ、ソンミン?」
「そ、僕だよ~」
ソンミンはグロスで光る艶やかな唇を尖らせみんなに投げキッスをして見せた。
☆
ソンミンはなぜ自分がこんな恰好をしているのかと今日起こった出来事をみんなに話し始めた。
「じゃぁ、なんだ、この状況はシウォンが鼻の下伸ばしてヨジャ姿のお前に
デレデレしてたのがキュヒョンの逆鱗に触れて三行半突きつけられた。って事か?」
ヒチョルが一気にまくしたてた。
「まぁ、平たく言うと、そんな感じかなぁ。」
「あぁ~やっちゃったねぇ~シウォン先生。」
「あぁ、ほんとになぁ。」
みんながシウォンを振り返って頭を振った。
「しっかしお前、いい女だなぁ。それ、いつもやってるのか?キュヒョンのいとこの趣味か?」
ヒチョルがソンミンの胸のふくらみを突きながらニヤケた。
「先生、おさわりはダ・メ!」
ソンミンがその手をさり気なく払った。
「なんだよ、減るもんじゃあるまいし。お前ほんとについてんのか?ホントはついてないんじゃないのか?」
「やだなぁ、先生。僕、正真正銘、男の子だよ。」
「ソンミンはさぁ、昔からこういうの得意だったからなぁ。学祭でもヤバかったから。」
「ふふふ~、楽しかったよね~みんなからかうの。」
「ウニョクは知ってんのに何でキュヒョンが知らないんだよ。」
「え?キュヒョンだよ。こんなの興味ないに決まってるじゃん!」
誰もがウニョクの言葉に納得した。
にしても・・・
「おい!シウォン。お前いつまでドンヘにくっついてんだよ!いい加減にしろよ!」
シウォンに抱きつかれたままちょっと困った顔をしながらも、
なんだかまんざらじゃない様に見えるドンヘに苛立ちながらヒチョルが声をかけた。
「レラ~。俺がこんなに傷ついてるのにそりゃないだろぉ~」
シウォンが哀れっぽい声をだし、ヒチョルを見やった。
「うっせぇよ!痴話げんかにみんな巻き込んでんじゃねぇよ!」
「痴話げんかって・・・ひどいなぁ・・・お前たちが勝手に集まってるんじゃないか」
「はぁ~、お前なぁー。」
ヒチョルがシウォンに向かっておしぼりを投げつけた。
慌てた周りの面々が「まぁまぁまぁ。」と止めに入りながら面白がっている。
いつもこうなんだがシウォンはどんな時でもみんなから擁護される立場にいる。
他の誰でもないシウォンだからみんながこうやって集まる。
シウォンは昔からそんなヤツだった。
だからどんなに理不尽な事してもされてもみんなシウォンが好きだった。
だからヤバい。
「おい。ジョンウン。どうにかしろよ。このままじゃリョウク持ってかれるぞ。」
「え・・・?」
「え?じゃねぇだろ!あれ見てみろよ。かいがいしくしちゃって・・・」
「いやぁ、まぁ今だけだから・・・」
「お前まだ懲りてないのか?シウォンで痛い目にあってるだろ?どうにかしろよ、どうにか!」
「とにかくキュヒョンをここへ・・・キュヒョンしかダメだよあれ。」
イェソンがリョウクを目で追いながら力なく言った。
「あっ、大丈夫。今、トゥギ先生が迎えに行ってるから~」
ウニョクが親指を立てた。
「もたもたせず、早く連れて来いって言っとけ!このままじゃ、みんながヤバい。」
ヒチョルの懸命な声が響き渡った。