カウンセリング(イェソン×キュヒョン) | ウォンキュ☆ひたすら妄想~

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superjuniorのシウォン(siwon)とキュヒョン(kyuhyun)のふたり
ウォンキュ(wonkyu)がベースな小説展開中。
が、いろんなカプも活躍中!!


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「俺、やっと泣けたんです。人前で・・・その人の前で。泣けたんです。」

ちょっと前屈みにソファーに掛けたキュヒョンが自分の手元に視線を落としながらそう言った。

キュヒョンがこの部屋に通う様になって初めて見せたおだやかな表情だった。

  

キュヒョンが初めてこの部屋を訪れたのは職場復帰プログラムの一環としての
メンタル面でのリハビリの為だった。

『大きな事故で生死をさ迷った。』

と手元の書類に書いてあった。

本人の強い希望で事故前に勤務していた病棟に戻る為の
メンタル面でのケアが自分の仕事だった。

『カウンセリングを受ける。』

ここを訪れる大抵の人はそのことに対して抵 抗を持っているが

これを受けないと自分に不利益が生じるとわかっているので

皆、体裁を取り繕って自分の”安全度”を主張してくる。

が、キュヒョンは最初から違っていた。

もともと人との係りに積極的ではないのかもしれないが

彼のプロフィールを知れば致し方ないんかもしれない。

チョ・キュヒョン。


国内でもTOP5に入るチョナングループの本家長男。

チョナングループは医療界をバックボーンに病院経営や医薬品分野で

目覚ましい発展を遂げ現在に至る。

実はこの病院はチョナングループが創設している。

実質的な運営管理は他の人物が行っているがキュヒョンの父親がCEOである。


ただ、この病院のCEOがキュヒョンの父親だという事は徹底的に秘密裏にされており 、この事実を知っているのが上層部でもほんの数人でしかなかった。

なぜそこまで隠す必要があるのかはイェソンにとっては問題視することではなかったのでカウンセリングを行う上での情報の一つでしかなかった。


カウンセリングを進めるにあたりキュヒョンはとても協力的だった。

こちらから質問されたことにはキチン自分の考えを返してくるし、

わからないことはわからないと正直に答え、復帰したいがために
小手先でこちらをごまかそうとする面々が多い中、

そう言った事もなく、その反面自分の事を自ら語ることもなかったが、

職務への復帰プログラムとしてのカウンセリングとしては順調だった。



そうは言っても身 体的には何も問題がなくてもやはりメンタル面では
まだまだ問題を抱えていた。

事故の記憶が彼を苦しめていた。

だが、周りの人間が心配をし、心を痛めることがわかっていたので

その事を誰にも打ち明けることはなかったようだ。

そのことがカウンセリングの最終段階で職場復帰へのGOサインを出す上で

一番判断に苦慮した点だったが、今後も定期的に自分を訪ね、

決してひとりで悩みこまない事を約束させ、職務への復帰を許可することとした。

その後何事もなく月日は流れ・・・



 



そして今日・・・

決して自ら自分の気持ちを口にしないキュヒョンがこちらの問い掛けを待たずに

堰を切ったように自分の思いを口にした。


「キュヒョン?」

いつもと違う展 開に手元のカルテからキュヒョンに視線を移した。

僕の問いかけにもう一度ゆっくりこちらを見てはっきりとした声を発した。

「なんでか、どうしてだかわからないんです。

でも・・・泣けたんです。その人の前で・・・」

そう言って大な息を吐いた。

「そうか・・・それはよかったな。少し楽になったかな?」

「えぇ・・・そうですね・・・それはそうなんですけど・・・」

キュヒョンがまた視線を手元に戻し、口ごもった。

 


キュヒョンが『その人』と称する人物が気になる所ではあるが、
あえてそこには触れず理由を尋ねた。

 


「・・・?なにか、あるの?」

 

僕の問いかけにキュヒョンの肩が揺れた。

 


そして、ソファーの背にもたれかけ、天を仰ぐように上を向き目を閉じ何か考えあぐねていた。

 


その様子をしばらく観察していると、看護師のリョウクがメモを回してきた。

一瞥すると、そのメモに一言書き添え、よろしく。と目線を送り、メモを返した。

リョウクは指で輪をつくり「オーケー」と声を出さず、くちびるだけ動かしニコリと笑った。

 


キュヒョンに視線を戻すと、

真っ直ぐこちらを見据えたキュヒョンと目があった。

彼の実直さを表すかのような眼に、少し気後れしながらも目線をそらす事なく見つめ返した。

 


「イェソン先生。『神様の思し召し。』って本当にあるんでしょうか。」



 

「あっ・・・」

奥に控えたリョウクが思わず小さな声を発したのが聞こえた。
キュヒョンの口から出た予想だにしなかった言葉は、
数時間前にある人から聞いたその言葉と全く同じ言葉だった。