女子箱。~Fly me to you編~ | 壇蜜オフィシャルブログ「黒髪の白拍子。」Powered by Ameba

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「雪ちゃん、どしたの?」

辞書を借りに部屋へやって来た弥生は、すぐに雪乃の表情が「いつも通りでない」ということに気がついていたようだ。

「…ん、大丈夫ちょっとうたた寝しちゃって…寝起きなだけ…」
「うそだぁ。その顔絶対何かあった顔だー。」

弥生は部屋にすたすたと入りながら、ベッドから起き上がったばかりの雪乃の前髪を指ですっと整えた。

「どうしたの?言ってみなよ。」

小さい頃から1つ上の姉は鋭く、雪乃のことはかなりの確率で「お見通し」だった。引っ込み思案の妹を、面倒見のよい姉が引っ張る。藤平家の姉妹バランスは、今でも変わっていない。
(弥生ちゃんに話してみようかな…でも…)
「変に思われるかも知れない」という恐れもあった。

「無理には聞かないけど、妹がそんな顔してたら、たとえ年子の姉でも心配だよー、雪ちゃーん?」
どさりとベッドに腰掛け、すぐ側の雪乃の頬をつんつんと指でつつく。小さい頃から弥生がする妹へのスキンシップ方法に、雪乃はちょっと照れ臭くなった。

「大丈夫、家臣弥生の助になら言うだけタダ!秘密は死守するでござるよ雪乃姫」
今度は肩に手を回し、キリっとした顔を作りながら言い寄る。姫と家臣にしてはやけに馴れ馴れしいのが妙に可笑しみを誘い、それまでされるがままだった雪乃は、とうとう口を開いた。

「学校でね…クラスの子にね…」
「…意地悪された?」
横槍が入る。
「もぅ、違うよ、…クラスの子に、…好きだと言われて…」

「好きだって…女の子に?」きょとんとしながら聞く弥生に核心を聞かれ、雪乃は真っ赤になりながらこくりと頷いた。

「そっかー、…ねぇそのコと雪ちゃん、あんまり面識ないでしょ?」
まるで見ていたかのような弥生の質問に、雪乃はますます顔を赤らめた。
「なんで!?分かるの?」

弥生はにまっと笑いながら続けた。
「雪ちゃん、『クラスの子』って言ってたし、卒業間近でそんな告白って、やっぱり雪乃と今よりもっと仲良くなりたいからじゃないかなって。節目じゃん、卒業って。」

「私と仲良くなりたい…」
雪乃は自分にないものを持つ憧れの少女、夕を再び思い浮かべた。

「そうそう。きっと告白っていうのもまずは仲良くなりたいって意味だったと思うよ?」
「好きだって、仲良しの好きってこと?」
「まずは友達になって、色々話したり出掛けたりしたかったんじゃないかな、だってさ…」

にやっと雪乃を見つめ、耳打ちをする仕草をした。反射的に雪乃も耳を弥生に傾ける。

「いきなり襲われなかったでしょ??」

「お、襲わ…」
弥生の放つ刺激的な単語に、雪乃は一瞬たじろいだがすぐに首をぶるぶるとふるい、

「ないないないっ!そんなのないよっ!」
と全否定した。

「えー?雪乃姫ほんとー?」と冗談っぽく詰め寄る弥生にクッションを盾に対抗しながら、安堵の表情を浮かべた。

弥生に話してよかった。