女子箱(女子校という箱庭で)~fly me to you編~。 | 壇蜜オフィシャルブログ「黒髪の白拍子。」Powered by Ameba

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雪乃は、雪国で生まれた。

小学校を卒業するまでを祖母と母親と3人で雪国で過ごした。父親は雪乃が生まれて間もなく亡くなっている。母親は東京に本社のある会社で働いていたが、ちょうど雪乃の中学受験と重なった年度に本社に呼ばれた。母親の希望もあり、雪乃は受験校を東京の学校にした。見事「合格」の通知は雪乃の東京暮らしを意味した。祖母や幼なじみと離れ離れになるのは辛かったが、東京の暮らしにもすぐに慣れ、友人も沢山できた。東京が段々と自分の居場所になり、もうすぐ3年が経とうとしていた。


季節の節目に学校からいただく長いお休みには、母親と必ず祖母に会いに行っている。母親の仕事が終わるまで空港で時間をつぶし、待ち合わせをして最終便の飛行機に乗って雪国へ向かう。


雪乃は最終便の飛行機がお気に入りだった。何も見えない夜空を飛ぶという非日常な風景に、妙な高揚感を覚えていた。1時間あまりの夜間飛行を座席に備え付けのイヤホンで音楽を聴きながら窓の外をぼんやり眺めながら過ごす…、年に数回雪国を行き来する雪乃の定番行事になっていた。


(夜間飛行で味わうようなドキドキは、決して日常では経験できないわ。)


春休みを目前にそんな事を考えていた、中学校の卒業式まであと少し…というある日に、事件は起きた。


神様は雪乃に、地上でのドキドキをプレゼントを用意していたのだった。