不思議体験 ~最後のあいさつ~
幼い頃のいまだ忘れえない光景がある。
それはまだ僕が幼稚園児のころだった。
その頃、僕の家はとても貧しかった・・。
すぐ近所には、
みや子おばちゃんという人がいて、
僕のことをとてもよく可愛がってくれた。
朝、僕に会うといつものように
「こっちにおいで」と50円とか
よく、おこずかいをくれた。
でもそれがすぐ母の目にとまり、
「もう、そんなこと、やめてくださ~~い」
「いいじゃないの、このくらい・・」
などとそんなやりとりがあったのも
おぼろげに記憶がある・・
とても優しいおばさんだった・・・
でも僕が小学校に入る前には
おばさんは病気で亡くなってしまった・・。
葬式やお通夜のことはまったく覚えていないのだが
火葬場でのことは、何故かはっきりと
記憶に残っている。
ひつぎに入ったおばさん・・周りには
最後のお別れにたくさんの大人がとり囲んでいた・・。
まだ幼なかった僕は、
他の子供と、その近くでじゃれあっていた・・。
そして母が僕を呼んだ・・
「きよし、こっちにきなさい、
おばちゃんに最後のお別れしなさい」
ひつぎのところへ行くと、
顔の部分の小さな扉がひらいていて、
そこにある、おばさんの顔を覗き込んだ。
その時だった・・。その瞬間、まさに一瞬だったが
おばさんは目をあけ、僕ににっこりとほほえんでいた・・。
明らかにおばさんは、にっこり笑っていた。
ほんとにそう見えてしまったのだから仕方がない。
おばさんと、覗き込んだ僕のその小さな空間は
まるで光に包まれてるようだった。
おばさんが死んだことぐらい、
子供の僕にもわかっている・・。
その時の僕は無心で、
その瞬間なぜか驚きもせず、
怖いと思うこともなかった。
そして「おばちゃん、さよなら・・」
って最後の挨拶をした・・。
お別れの挨拶は僕が最後だった。
その直後には、ひつぎの顔窓は閉じられ
おばちゃんの入ったひつぎは
火葬室へと入り扉が閉まった・・。
この時に光景が、
何十年たった今も、
ずうっと脳裡に焼き付いている。
きっと、あの時、おばさんの魂も
最後の挨拶に舞い降りてくれたんだと
僕はそう信じている・・。
大人には見えないのかもしれないが・・
