岡本太郎による「ピカソのゲルニカ」講義 | 画家の雑記帳

岡本太郎による「ピカソのゲルニカ」講義


いろんな名作を解説まじえて
紹介していきたいと思い・・
新しいテーマ「絵画の見方」を
作りました。。
今後、いろんな絵をボチボチと
スローペースで^^;
紹介していきます。。

第1回目は・・
ピカソの歴史的大作「ゲルニカ」について、
昭和28年に出版された
岡本太郎「青春ピカソ」の中に、
とても素晴らしい解釈があるので、、
それをテキストに・・引用・抜粋して
編集した内容を紹介したいと思う。

やはり、美術批評家の評論などよりも、
偉大な画家が同じく偉大な画家の絵を
説明したものは、すごく説得力があり
真に迫ってる文が多いなぁと感じます。。
もちろん、素晴らしい批評家も
なかにはいるのだけど・・。

まず・・「ゲルニカ」とは
こちらの絵。。


$画家の雑記帳

~岡本太郎「青春ピカソ」より抜粋~

「ゲルニカ」はピカソ自身にとっても新しい様式の試みである。
ほとんどモノクロームに近い大作の大胆きわまる描法は、
新立体派(ネオ・キュビズム)とでも名付ければ典型的であろう
と思われる。ここでは画面にひそんでいる象徴的な要素を、
時代的な流れ・その雰囲気と連関させて観察し裏付けてみたい
と思う。
 この大壁画は型破りな構成である。まず、中央を占めている
のは振りかざしたランプを頂点とする三角形のコムポジシオン
である。ところが画面全体を抑えている中心は実は左端の牡牛
の像であり、それに向かってすべての表情が戦慄的に集中されて
いる。
「ゲルニカ」は彼の20年代のネオ・クラシスムの仕事よりも
はるかに古典的な匂いが強い。すべての要素は緊密に組み合わ
されて内部へ集中し、喧噪なモチーフであるにもかかわらず、
全体に不思議なほど厳粛な静寂感をみなぎらせている。建物
や壁はもちろん、人間像をも大胆に貫いて通る垂直・水平線
はさらに冷酷な静止感を強調する古典的効果である。
 しかし同時にそれはまったく逆なロマン的要素が共存して
いる。画面の外へ、そして中心をはずして奔(はし)り出る
動的な構成、特に右端の人物の天を衝(つ)く両手の逆三角刑等、
画面全体が真にうなり声をあげているかと思われるほど激しい
形相を発散する。激情的な内容についてはいうまでもないで
あろう。
 残忍きわまる牡牛ーだかそれは妖しい美しさを湛(たた)えて
すべてを威圧している。唾棄(だき)すべきファシズムの象徴
が、この画面においては崇高なまでに美しく写し出されて
いるのである。読者はこの矛盾をどう解釈されるであろうか?
(中略)
さて、「ゲルニカ」に戻って今一度この絵を観察してみよう。
この画面を異様に引締める心理的なポイントがある。それは
画面をいったいに照らし出す極めて平凡な笠つきの電燈である。
この電燈ゆえに、これは室内の惨劇である印象を与える。
血みどろな被害者たちは妖怪の冷厳な眼光に凝結させられて、
逃れるすべもない。これは闇に閉じ込められた迷宮(ラビリンツ)
のただなかである。
(中略)
 反戦的な意図をもとに、残酷な場面を描いた作品として、
ゴヤの一連の版画「戦争の惨劇」がある。だがゲルニカには
ゴヤの版画の暗さと重さはない。「ゲルニカ」の中にある画面
全体の均衡は整然として割り切れている。18、9世紀の
人間相互の流血ではなく、機械による非常な肉体の破壊である。
きわめて残酷であるにもかかわらずこの作品がゴヤのイメージ
よりはるかに明晰な格調を示しているゆえんである。
(中略)
私は混乱を避けるために、18、9世紀的なものと区別して
「ゲルニカ」の20世紀的純粋性を強調し、また芸術のイロニー
の問題でこの作品を釈明した。だがしかし、彼の内奥(ないおう)
に19世紀の宿命の影が潜んでいることは見逃せないのである。
「青の時代」の世紀末的絶望はその後高度に飛躍した作品の中
にもまた「ゲルニカ」の中にさえも認められるのである。
この画面のトーロー(牡牛)のみが厳然と構え、あくまでも
斃(たお)れない気配であるのに、他のすべてがあまりに非力
として表現されているのは、何と言ってもファッショ的暴力に
対する小市民インテリゲンツィアの無力感の象徴だと見るべきで
ある。そこには神秘的な気配が漂い、ドラマ的要素が大時代な
舞台でも見るような感じを与えていることは否定しがたい。
とことんまで非情なメカニズムで割り切っていないところに
19世紀的絶望感が漂う。それは彼の作品が新しい形式をとり、
きわめて難解とされているにかかわらず、20世紀前半の
インテリ層に大いに喜び迎えられた理由である。
と同時にこの歴史的な天才の限界を示しているのである。
 だがこれらの宿命的な限界にかかわらず、「ゲルニカ」の
偉大さは正に圧倒的である。
「傑作は天才のアリバイである。」とブルトンは言う。
「ゲルニカ」のような傑作を見ると、作品こそは芸術家の
すべての証しであることを肝銘し、恐ろしさと嬉しさに戦慄する
のである。
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いかがでしたでしょうか・・
岡本太郎によるピカソ「ゲルニカ」講義^^。
ちょっと難しかったでしょうか。。

素晴らしい名著なので、
このへん読むと、絵の見方とか
とても参考になります。。

ご興味ある方は、、
いま太郎さんの本はどんどん復刊されてますので
読んでみてください。。

ではまた~♪

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