「花が繁殖器官である」というのは植物理解の基本ですよね。

決して、人間の部屋を飾ったり、心を安らげるために植物が花を咲かせているのではない。しかし、そう錯覚するほど花を愛でるというのが私たちの生活に根付いています。文化になっています。


植物たちには、その命をしっかりと引き継ぐための優れたシステムが備わっていることが、花を詳しく調べてみるとわかります。



つる植物で果樹などに巻き付いて放っておくと果樹自身が枯れてしまうのでこの「ヤブカラシ」とか別名「ビンボウカズラ」などという名前をつけられている植物の花を見てみましょう。




緑色のものは、つぼみです。

色のついているのが開いた花ですが、この花に2種類あるのが解ります。雄しべのついている花とついていない花とがあります。



これは、雄しべはないですね。真ん中に突き出ているのが雌しべです。


ところ、よくよく注意して見ていたら、今、開いたばかりのような花に出会います。その花には、



ほら、4枚の緑色の花弁とともに雄しべもついています。



この時、雌しべは先ほどのとは違ってまだ、背が低いです。

この花が、しばらくしたら4枚の花弁と雄しべを落とし、雌しべだけの花になり、雌しべが伸びて来るのです。




繰り返しになりますが、ヤブカラシは緑色の花びらを開いた時には、雄しべが熟した状態の花になり、その後、花びらと雄しべを落とし、雌しべが充実した花へと移っていくのです。


これはどういうことでしょうか?

こうすることで、その一つの花において、自分の雄しべの花粉が自分の雌しべの柱頭について、受粉することが起きなくなっているのです。♂の時期とメスの時期が別々にあるのです。それぞれの時期がずれるような仕組みになっています。




こういう仕組みは、様々な植物に見られます。こうして、遺伝的にも強い種子を作り出せるようになっているのです。


花を見たら、例えば~こんなことを観察してみたらどうでしょうか~


・雄しべと雌しべを確かめましょう~

⇒雄しべも雌しべも一つの花に見つかる=両性花

⇒雄花と雌花に分かれている場合もあります。

分かりにくい花もありますので、ルーペを使うようにしてください。

・雄しべの花粉がどのようにして雌しべに着くようになっているのか観察してみましょう。

⇒ヤブカラシの場合は、昆虫がやってきます。アゲハなどはこの花が大好きです。夕方、花開くカラスウリの花には、蛾がやってきます。誰も来ない花は、風で運ばれるのかもしれませんね。


・いくつも咲いていたら、どの花も同じかどうか、比べてみましょう。

⇒このヤブカラシのように♂の時期と♀の時期が前後の現れる花が見つかるかも知れません。