トレド(タウレド、トーレド)の男を追って | Siyohです

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音楽とスピリチュアルに生きる、冨山詩曜という人間のブログです

異世界ネタを追っていると、必ず出てくる話がいくつかあります。

 

異世界から来たのではないかと思われる人々の中で有名なのは、まずはスペインのレリーナ・ガルシアさん。この人に関しては、少し前にブログに書きました

 

さて、この人と同じくらい有名なのは、1954年に、存在しない国Taured(トレド、タウレド、またはトーレド)から羽田に来た人の話です。この話を紹介したくて、最近ずっと、その大元を調べていました、

ネットの話は引用されるごとに変質して、伝言ゲームになっていくので、何かを紹介したいときは、なるべくそのオリジナルをたどることにしています。しかし、このTauredの男のオリジナルをたどるのは、なかなか難しい作業でした。

 

まずわかったのは、この話を初めて紹介したのは、おそらく1981年、コリン・ウィルソンの「The Directory of Possibilities」だろうということです。幸い邦訳が出ていたので取り寄せたところ、そこには「Tauredから発行されたというパスポートを持った男が日本に来た」と書いてあるだけでした。。。

 

次にこの話を取り上げたのは、1998年の、トーマス・シーメンによる「Strange But True: Mysterious and Bizarre People」という本でした。彼はネットにもこの情報を公開しています。とはいうものの、そこに書いてあるのは「聞いたことのないTauredという国から日本に来た人がいた。税関は徹底的に調べたが、そんな国は地球上のどこにもなかった。その男はTauredという見知らぬ国に対して、その詳細を明らかにすることはせず、すぐに日本を離れた」ということだけです。

 

ところが現在伝わっているストーリーは、こんな感じなのです。

 

1954年7月の蒸し暑い日。日本で不可解なできごとが起こりました。存在しない国のパスポートを持った白人男性が飛行機から降り、羽田空港に現れたのです。

入国管理官が入国を拒否した時、謎の旅行者は怒りをあらわにしました。管理官は記録を注意深く調べたのですが、その男性が持っていたパスポートを発行した「トレド」という名の国は見つかりませんでした。

普通、偽造パスポートを使って入国しようとする人は、存在する国のパスポートをできる限り本物に似せて再現しようとするはずです。存在しない国のパスポートを使ったら捕まることは目に見えているので、愚の骨頂だと言えるでしょう。

その男は自分がよく知られた欧州の国からやってきたビジネスマンだと主張しました。トレドという国は、約千年前に建国された、長く豊かな歴史を持つ国だというのです。

彼はフランス語訛りの流暢な日本語を話しました。トレドの公用語はフランス語とのことでした。彼は日本語のほかにも数ヶ国語に通じていました。身なりはきちんとしており、洗練され、成功を収めた国際的なビジネスマンのような印象を与えました。

彼は国際的な企業に勤めており、その会社は日本と約10年に渡り事業関係を樹立しているとのこと。その年だけでも三度目の訪日だというのです。実際、彼のパスポートには、日本の入管のスタンプが押してありました。つまり、前回来日した時、そのスタンプが押されたということです。彼は自分が働く会社の名前を入国管理官に伝えたのですが、調べてみたらそのような会社は存在しませんでした。

彼はフランスの通貨を中心に、数カ国のヨーロッパの通貨を携帯していました。財布は大きめで、手製の良質なものでした。彼はまた国際免許証を携帯していました。それはどう見ても偽物には見えなかったのですが、にもかかわらずその免許証は無効でした。なぜなら未知の機関によって発行されていたからです。小切手も携帯していましたが、それを発行した国際銀行は世界のどこにも存在しませんでした。

そんななか、入国管理官が名案を思いつきました。世界地図を持ってきて、トレドがどこに位置しているかを地図上で指差すよう、男に頼んだのです。地図を見回した男は、トレドが地図に載っていないことに動揺したように見えました。しかし、最終的に彼はイベリア半島のアンドラ公国を指さしました。アンドラはスペインとフランスに挟まれたミニ国家で、公用語はカタルーニャ語ですが、その他にスペイン語、フランス語、ポルトガル語などが使われています。アンドラは988年に建国されたので、約千年の歴史があります。男はアンドラという国を聞いたことがないと主張しました。

謎の旅行者は憤慨し、政府の高官と話をさせろと要求しました。彼は自分がとんでもない悪ふざけを仕掛けられたのだと確信していました。彼は予約を入れてある東京のホテルに行く許可を与えろと要求しました。実際、彼は予約証明書を持っていました。ところが、調べてみたら、そのホテルは日本に存在しませんでした。

政府関係者は、空港の狭い警備室で8時間も拘束されている彼に同情し、彼をホテルに泊まらせることにしました。部屋の外にガードマンを配するというのが条件でした。男はその処置に不満を訴えましたが、彼に与えられたもう一つの選択肢は留置所で一晩を過ごすことだったので、その申し出を受けるしかありませんでした。

男は二人の入国管理官に付き添われてホテルに向かい、そこのレストランで食事をとることを許可されました。その後、彼は部屋に向かい、そこで一晩を過ごすよう命令されました。ガードマンが部屋の外に立ち、夜通し見張ることになりました。

翌朝、入国管理官が部屋にやってきてドアをノックしたら、返事がありません。そこで管理官はホテルの合鍵をもらい、部屋に入りました。そこはもぬけの殻(から)でした。彼の荷物も見当たりませんでした。唯一の出口である扉はガードマンが夜通し見張っていたし、部屋はにぎやかな通りの数階上に位置しており、窓の外に足をかけられるような出っ張りはなかったので、男がその部屋から出ていくことは不可能でした。そして窓が開けられた形跡もありませんでした。

政府関係者は大がかりな捜査をおこないましたが、謎の旅行者は一向に見つからず、遂に捜査は打ち切られました。彼は二度と見つかりませんでした。

 

こちらは「存在しない国から来た男」からの引用です。世界的に見ても、これが広く伝わっている内容と考えていいでしょう。

 

ということで、では、いったいどこでこのような詳細ストーリーができあがったのでしょう。

 

それを調べた人が何人か海外にいました。

 

http://anomalyinfo.com/Stories/1954-man-tauredのサイトでは、先に上げた二冊の本のあとで、2012年4月に、「Before It's News」のサイトでTerrence Aymが書いたのが、現在に伝わるロングストーリーの最初だと書いています。その記事を書いたTerrenceは、1950年代にいろいろな本に書かれている事実を寄せ集めたと言っています。一方、これを調べた人は、それらの本の名前が一切出ていないことから、このロングストーリーは彼の捏造である可能性もあるとしています。

 

しかし、この2012年の前に、少しだけ詳しいストーリーを書いている人がいました。

 

Colonization Headquarters」というXファイルのファンサイトがあるのですが、そこにprufrock's loveという人が投稿した「Belphegor's Prime」という話にTauredの男の話が含まれています。

このサイトは2009年10月にそれまでのサーバーを使えなくなり、今までの書き込みを別なサーバーに引っ越ししました。そして2010年8月に228の新規フィクションを掲載し、それには「NEW」のマークが付いていると書かれています。そしてprufrock's loveの投稿はというと、画像のようにNEWマークがついているのです。

つまりこの話は、2010年8月以前に書かれたのだと思われます。Belphegor's Primeには、Tauredがスペインとフランスの間に位置する、1000年の歴史を持つ国であること、彼がTaured発行の運転免許証を持っていたこと、彼を近くのホテルに滞在させたこと、翌朝にはいなくなっていたことが書かれています。

 

さて、この話はやはり本物なのでしょうか。実は引用したページに下記のことが書かれていました。

1954年、英字新聞『週刊ジャパン・タイムズ』の犯罪欄に短い記事が掲載されました。それは「偽のパスポートを持った男が日本に入国しようとしたので、入国管理官がその男を抑留した」という内容でした。

この、「週刊ジャパン・タイムズ」に載ったという話は、英語サイトも含めてどこにも見つけられなく、このページにしかないので、このページを管理している人に、どこからその情報を得ているのかを聞いてみました。しかし、その返事はありません。単に、読者から寄せられた情報をそのまま載せているだけなのでしょうか?

 

このような経緯ではありますが、Tauredの男の話は、今ひとつ、信憑性にかけそうでありながらも、やはり本物なのかもしれないというところです。

 

2020/7/19

Xファイルファンサイトの部分を、より詳しく変更