転籍負担金がもたらす「3つの構造的リスク」
新制度では、外国人本人の意向による転籍が条件付きで認められる一方、転籍先の受入機関(企業)が転籍元に対
し、渡航費や初期講習費などの初期費用を在籍期間に応じて補填(転籍負担金)することが義務付けられました。
一見、企業間の費用負担を公平にする合理的なルールに見えますが、実務上は以下のリスクを引き起こします。
① 旧・技能実習への「先祖返り」(事実上の囲い込み)
転籍時に数十万円単位の補填金が発生となれば、受入企業には「投資回収が終わるまで絶対に逃がしたくない」と
いう心理が働きます。一方で転籍先企業も「高額な負担金を払ってまで途中採用するリスクは負えない」と躊躇
し、転籍受け入れを控える動きが生じます。結果として外国人の移動の自由は形骸化し、「費用負担による実質的
な拘束」という旧技能実習制度と変わらない閉塞感が再生産されてしまいます。特に資金力のない中小・零細企業
ほど、採用の選択肢を狭められることになります。
② 給与天引き等による「不正費用回収」の事故リスク
転籍負担金はあくまで「受入企業間」で清算するルールですが、悪質な事業主や現場の認識不足により、「転籍に
伴う損害」などの名目で外国人本人の給与から控除したり、寮費や備品代を不当に水増しして回収しようとする脱
法行為が懸念されます。監理支援機関の監査が甘くこれを見過ごした場合、育成就労計画の認定取り消しや行政処
分はもちろん、労働基準法違反や刑事トラブルへと発展する致命的な事故につながります。
③ SNSブローカーの暗躍と「公的制度の悪用」
現在、TikTokやFacebookなどのSNS上には、母国語で外国人求職者を囲い込む裏ブローカーが多数存在します。
彼らは「ハローワークを通した正規の再就職」を偽装しつつ、本人が受け取る失業給付や再就職手当の3〜5割を
「手数料」として搾取しています。この既存の悪質な手口が転籍負担金制度と結合すると、ブローカーが転籍を唆
して手当からピンハネし、さらに企業間でも裏の紹介料を要求する「二重搾取構造」が定着する恐れがあります。
