『だけど、日本はまだまだ廃れている。』

酒癖が悪く問題を起こしがちで、かつて(20年以上前っぽい)一曲ヒットを飛ばしたことがある歌手 桜庭龍二と弱小プロダクションの社長だった父の急逝により後を引き継いだ娘ハルコ(マネージャー兼社長)の地方営業の旅のドラマ〈日本ボロ宿紀行〉。

夜中のドラマ枠は心の隙間に入って来る感じのものが多い気がするけど、このドラマも観るとしみじみしつつ来週も見たくなるというか、20〜22時くらいの枠で放送されるドラマとは方向性の違うよさがあった。

全12話の内、劇中で桜庭龍二がいい目にあってるのは1〜2話くらいで、お猿の前座だったり、ギャラを隕石で支払われる(まあ、踏み倒しみたいなもんだな)とか、全体としては圧倒的に売れてない様子が描かれる。

芸能プロダクションというのは、どうやったら設立できるものなんだろう。
ハルコの父が急逝したことで、龍二以外の所属タレントは軒並み事務所を移籍してしまい、龍二だけが残るところからドラマが始まるのだけど、芸能プロダクションの社長職をハルコは相続して社長になったのかな?単に届け出制みたいなもんなのかな。
そのあたり、自分の人生に〈芸能プロダクションの社長になるかもしれない〉という可能性を見出せないので割とフンワリと(ドラマだし、そのスタンスでいいと思うけどさ〉見始めちゃったんだけどな。

なにしろ、売れない。でも桜庭龍二の劇中曲『旅人』は なかなかいい曲でドラマのテーマソングもいい曲で、結局12話全部見逃すことなく観てしまった。

最終話でとうとう味のある〈ボロ宿〉に泊まるにもお金に困りかけ、でも営業の旅を続けることにした2人の掛け合いでドラマは終わったんだけど、あんなに売れてなくて そんなに明るいドラマじゃなかったのに、第2シーズンがあったらいいなぁと思うドラマだった。

芸能人を芸能人として応援する側は、芸能人が芸能人でいることを辞めてしまったら、会いに行けない。
で、芸能人側もファンとしてお馴染みになることはあっても、ハルコのように同じ宿に泊まり同じ食卓を囲んでお酒を飲んだりはしないのが普通だろう。

龍二のコアなファンとしてアケミという女性が出てくるけど、彼女は数年桜庭龍二の応援に来ていなかった時期があり(実は結婚して出産していた)でも、アケミはそうした自分の事情は龍二には秘密にしている様子は、アケミは本当にいいファンなんだなぁと感じた。
例えば好きな歌手や俳優さんが残念ながら伸び悩んだり落ち目になったとして、どんなスタンスで応援していくのか、落ち目になったら興味がなくなってしまうものなのか、龍二さんが落ち目になり始めたときどう思ってたのかその辺アケミさんには どこかセンベロな酒場でお話を伺いたい。(アケミ役がちゃんとした女優さんなのもいい配役だったなぁと思う)

とりあえず、『旅人』は なかなかいい曲なのと、先代との想い出は置いといて〈旅人CD〉の実物から売ることに拘らず、配信もしてみたらいいのになぁ。ハルコと龍二の旅、第2シーズンあるといいな。