この物語はフィクションです。
実在するものとは一切関係ありません。
仮面夫婦【8】
直樹は、優美の膝の上に置いた手をスカート
の中へと滑らせていった。
優美が素早く、スカートの上から直樹の手を
強く押さえ、それ以上の侵入を拒んだ。
『先生、こんなところで、どなたかが来られま
す』
「誰も来ないさ、それにドアの向こうはきみの
部屋じゃないか。来訪者は、きみの部屋のドア
をノックする」
直樹は、再び優美を強く抱きしめようとした。
しかし、それを阻止するかのように隣の部屋
の電話の着信音が聞こえた。
優美は、副院長である直樹を押し退ける様に
立ち上がり、直樹の机の上の電話機を使って
着信を受けた。
『はい、副院長室でございます』
・・・・・
『おられますが』
・・・・・
『ちょっと、お待ちください』
優美は受話器を手にしたまま、保留ボタンを
押し、直樹に言った。
『医局秘書の矢田さんからですが、警察の方
が先生に面会を求めているそうですが』
「警察が」
直樹は、とんだ邪魔が入りやがって、と思い
ながら
「通してくれ」と言った。
優美は、電話機の保留を解除して
『会われるそうです。案内してください』と、答
え髪と衣服の乱れを直しながら来訪者を迎えに
出た。
暫らくすると、優美に案内され二人の男が入っ
て来た。
40代と思われる男が、警察手帳を示しながら
「お忙しいところ恐れ入ります。旭警察署の河
村といいます」と名乗った。
後ろにいた男が、河村の横に並び
「西枝です」といいながら警察手帳を示した。
直樹に促され、ソファーに二人が腰を下ろした
あと、直樹は問いかけた。
「警察の方が、何の御用でしょう」
河村と名乗った男が答えた。
「先生は、迫田真緒という女性をご存知ですか」
「迫田真緒、さあ、知りませんが、誰です」
「25才の女性ですが、昨夜、旭区内の淀川河
川敷で殺されましてね。まあ発見されたのは今
朝早朝ジョギングしている人によってですが」
「昨夜殺された女性?何を藪から棒に言い出す
んです、そんな人知りませんな」
「ご存知ない?」 と、言うと河村は身を乗り出
すようにして 直樹の顔を見つめた。